北の大地、物語のつながり。
20年近く前、ブラジル音楽に傾倒していた。
「北海道に行くならこれを」と
ブラジル音楽を奏でるバーで、マスターから渡されたCDは
トンコリを奏でる「OKI」さんの音楽だった。
道東で初めて、ヒグマをよく知る人との縁を得て
訪ねた時に教えてくれたのは写真家「伊藤健次」さんの名前だった。
伊藤さんとはやがてフィールドでお会いするようになり、
共通の知人もいることがわかった。
もちろん、彼の本は取り寄せて読んだ。
動物や風景を、単なる素材として捉えることなく
連なった物語のように、その経験を写真と言葉で淡々と語る姿勢に
強い共感と憧れを覚えた。
そして昨年、尾瀬から繋がった縁でアイヌの物語を紡ぐ
結城幸司さんとお話をする機会を得た。
今、壁に貼られた彼の版画を、時折眺めながらこの文章を書いている。
手元にある伊藤健次さんの本には、OKIさんが登場し
伊藤さんの写真と文章を、結城さんの版画が優しく飾っている。
不思議な縁を感じている。
そしてその繋がりは、まだまだもっと広がっていきそうな予感がある。
その隅に、どんなに小さくとも僕の席があるのだとしたら、
これほど嬉しいことはない。
絵か音か写真か。
出口の違いは、きっと僕らが思っているほど大きくはない。
大切なのはそれぞれの生き方の中で、物語を紡ぐことができるかどうかだ。
時代が変わって素材の扱いや重さは変わっても
その芯のところは、きっと変わることはないだろう。
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