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『ひとり親けんこう白書』第1章シングルマザーの健康課題(中編)

シングルマザーズシスターフッドが研究者の皆さんと協力して調査してきた、シングルマザーの心と体の健康、そしてピアサポートの効果についての結果をまとめた『ひとり親けんこう白書』が完成しました。

前回は、第1章の「シングルマザーの健康課題」の前半、アンケートに答えてくれたみなさんの属性や睡眠についての課題をご紹介しました。

今回は、その続き。ひとり親の生活課題、就労収入について、利用している制度や支援、心身のさまざまな不調、通院中の診療科、不安や悩みを共有できるシングルマザーの友人の有無についての調査結果をご紹介します。

就労収入について

セルフケア講座に参加したシングルマザーの就労収入についてもお尋ねしました。

深刻な経済的困窮

年間就労収入は、「なし」と「100万円未満」を合わせて35.3%、100~200万円未満が16.2%です。全国調査と比べても、100万円未満の層の割合が高くなっています。

就業状況をみると、契約社員・派遣・パートなどの非正規が正規よりも10%多く、非正規と正規の賃金格差が、母子世帯の就労収入の低さに反映していると考えられます。

問題を「貧困」のみに集約しないことの重要性

 一方で、年間就労収入が400万円以上の人も19.1%存在します。年収にかかわらず、セルフケア講座に対するニーズがあると言えます。

 行政のひとり親家庭支援は,就労支援が中心で、その他の給付や事業は多くが所得制限つきです。ひとり親の問題を「貧困」に集約してしまうと、その他のひとり親の困難を見過ごす可能性があります。すべてのひとり親が心身共に健やかな状態でいることは、「貧困」を予防します。また,子どもと良い関係を構築するうえでも重要です。

過去1年間で利用した制度や支援(複数回答)

この1年間で利用した制度・支援のうち、最も多かったのが児童扶養手当(55.1%)です。「離婚予定」の方は児童扶養手当を受給できていません。

次いで、フードパントリー・食糧支援の割合が53.6%と高く、児童扶養手当だけでは生活をカバーできず、日々の食事のやりくりにも窮している家庭が少なくないことが分かります。

心身のさまざまな不調

ひとり親として生活する中で起きるさまざまな不調には、どういったものがあるのか。心と体に起きる症状についてアンケートをとり、自由記入欄で答えてもらいました。

自由記入欄に寄せられた57名(82.6%)の悩みを分析してみると、「疲れやすさ」「体力低下」「肩・首こり」「腰痛」「頭痛」「更年期障害」などの悩みがあることが分かりました。特にメンタル面での不調が目立ちます。

不安

将来が心配で、いつも考え事ばかりしている。
頼れる親族などがいない状況なので、将来への不安が本当に大きい。

疲労

ひとり親の責任と、仕事の忙しさに疲労困憊。
睡眠で体力を回復できず、翌日に疲れを引きずってしまう。
普段の生活で物理的に人手が足りなくて、「もうひとり誰かいたら助かるのに」と思う。

メンタル

・別居から離婚前後にPTSDが原因になり、うつ状態。後遺症として、「疲れやすい」「すぐ身体がかたくなる」「マルチタスクができない」などがある。
・普段いかに笑っていないか気づかされ、はっとする。子どもにあたらないように必死な瞬間がある。
・シングルになったことに後悔はないが、自分は幸せな家庭を築けなかった人間だと劣等感をおぼえる。

更年期

・更年期に入ったようで、イライラをおさえられなくなった。だれにも相談できずつらい。

通院中の診療科

通院治療中の人は52.2%と半数以上。通院中の診療科は精神科・心療内科が31.9%とダントツに多く、整形外科(13.0%)や内科(同)が続きます。さまざまな心身の不調が、日常生活や子どもとの関係に少なからず影響しているものと推測されます。

ひとり親同士のつながりの希薄さ

日常的に不安や悩みを相談できるシングルマザーの友達がいないと答えた人は約半数の42%。75.4%のシングルマザーは今住んでいる地域に同じ立場で不安や悩みを共有できる友達がいません。ひとり親同士のつながりの希薄さが感じられます。

ひとり親の心身の状態を自己責任とせず、社会全体でサポートを

 今回の調査で、多くのシングルマザーが心身の不調を抱えていることが分かりました。しかし現代社会において、ひとり親の心身の状態やケアの必要性は重視されているとはいえません。 

 自由記述では、メンタルヘルスに関する内容が多く見られました。ひとり親になる前からの葛藤や心的苦痛、ひとりで子育てすることへのプレッシャー、仕事と家庭の両立、経済問題、元パートナーとの関係、将来への不安など、肩に山のような荷物をのせ、心身が固くこわばっている様子が伝わってきます。

 睡眠や休息が十分にとれず疲れが蓄積し、「気がつけば笑顔をなくしている」「余裕がなく、いつも自分のことは後回し」といった現実は「自分を犠牲にしても子どもたちを支えるというシングルマザーの決意」といった美談として片付けられていないでしょうか? そしてそれは、実際の生活や人間関係によい結果をもたらしているといえるでしょうか。

 ひとり親の心身の状態を自己責任とせず、社会全体でサポートしていくことは、本人だけでなく子どもにとってもプラスの影響があるのではないでしょうか?

次回は、第1章の「シングルマザーの健康課題」の後編。シングルマザーのセルフケア習慣、社会的孤立についての調査結果をご紹介します。

https://www.singlemomssisterhood.org/singlemoms-health

↑『ひとり親けんこう白書』はこちらで全文ダウンロードできます。
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2023年9月27日(水)12:00-13:00
『ひとり親けんこう白書』完成報告ライブ配信を開催しました。
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