執着を手放して得たさまざまなこと
執筆者 佐久間りょう
レモンは夜中に、突然に、やってきた。
Turn lemons into lemonade.
英語の格言で「試練もポジティブな転機に変えちゃおう」という意味です。
私にとっての試練ともいえるレモンは、さかのぼること約10年前の離婚です。
長女が3歳、長男が2歳のとき、私は、夜中のパートに出かけていました。待機児童問題があり、保育園に預けることができなかったため、夜に働きに出ていたのです。私がいない間は、元パートナーが子どもを見てくれていました。
寒い冬のある日の午前1時頃、眠い体を起こしながらパートの支度をしているときのことでした。仕事から帰宅した元パートナーが突然「俺、浮気してたんだ」となぜか少し怒りながら私に話しかけてきました。
突然のことで私の頭の中に?マークが浮かび返答できずにいました。すると、「〇月〇日は友達と遊びに行くって言ってたけれど浮気相手と会っていたの」と続けて話してきたのです。
思い返せば、数か月前からの元パートナーからの冷たい態度に悩んでいた私は、頭の中のパズルがはまっていき、寝ぼけていた頭が冴えわたっていくのを感じました。次第に、相手に対して我慢していたことや悩んでいたことなど自分の複雑な感情が、ふつふつと大きな怒りの塊となってきました。
出かける時間となり、仕事に向かいました。外は真っ暗でした。仕事場に到着し、冷静ではない頭を抱えて、単純作業の仕事をこなしました。それから約2か月で離婚となり、その間も色々な出来事がありましたが、それはまた別の機会に。
休息なくがむしゃらに働いた理由
離婚後、私は実家に帰り、シングルマザーとなりました。
「子どもを育てていくにはお金が必要だ」と何かに追われるように切羽詰まっていた私は、仕事をすることで離婚時の記憶を消そうとがむしゃらに働きました。
休息をとれば、余計なことを考えてしまいそうだったからです。
勤務後は疲労から寝てしまう生活。子どもとの関係も良いとは言い難い状況でした。
私を救ってくれた言葉
そんなとき、離婚前から通所していた長女の療育の先生に離婚したことを話しました。すると「長女さん、前より表情が良いし離婚してよかったんじゃない?」との言葉。
先生からしたら何気ない一言だったのかもしれません。しかし「離婚が子どもにマイナスにはたらいてないか」「離婚しなければ良かったのではないか」と悩んでいた私にとって、その言葉は救いとなりました。
余裕がなかった私も、長女や長男の通院や療育を通して、だんだんと子どもに目が向くようになりました。さらに、子どもを通じて知り合った人達との関わりによって、お金よりも子どもへと、私の心が動かされ、生活環境を変えていきました。
他人と関わることで、自分の目が外に向いて視野が広がりました。母子家庭向けの資格取得の機会やシングルマザー支援に触れ、それらは私の可能性や目標の後押しとなっていったのです。
「なんか障害って嫌だな」という言葉
離婚前から長女長男ともに発達障害の疑いがあることを話したときに元パートナーの口から出たのがこの言葉でした。
当時は、この言葉に傷ついていました。
しかし、この言葉が障害への価値観を考え、学ぶキッカケになったともいえます。そう思えば、つらい言葉でも意味づけを変えることで、何かを学ぶチャンスになるのだと今は思っています。
傷ついた自分の気持ちは大切にしつつ、前に進んでいくのです。
離婚という決断がくれたもの
離婚していなかった世界線を見ることができないので、本当にこの決断が正しかったか確かめる術はありません。けれど、離婚していなかったら選べなかったであろう、「療育、通院先、人との出会い、資格取得、子どもの可能性、新しい趣味」など、自分の人生を豊かにするさまざまなことが離婚後に増えました。離婚という決断をして、その後「自由」に動けた結果です。
レモンのように酸っぱい出来事を、レモネードに変えることができたと、今なら胸を張って言えるでしょう。あれから10年を経て、今の私は、離婚して良かったと思えているのです。