『ひとり親けんこう白書』第3章 ピアサポートの本質
ピアサポート活動における
「仲間」とは?
「ピアサポート」とは、同じような問題や経験をもつ人が仲間と支え合う、当事者主体の活動のこと。仲間と集まって語り合うピアサポート活動が参加者のエンパワメントにつながることはよく知られています。
しかし、そのようなメンバーが集まっておしゃべりするだけで、効果的なエンパワメントがうまれるのでしょうか? 当事者の主体性はどのように発揮されるのでしょうか? また、ここでいう「仲間」とはどのような関係性なのでしょうか?
お互いを刺激しあえる
対等で自立した関係性
自立した関係性の中で支え合うピアサポートが機能すると、仕事や日常生活にもポジティブな影響があるとされています。「グループリフレクション」や「寄付キャンペーン」など、シングルマザーズシスターフッドのアドバンスプログラムの参加者へのインタビューでは、「仲間」についてこのような言葉が語られました。
このように、「仲間」について言及するときに、「ホッとする」「癒される」といった安心感から一歩進んで、「刺激しあえる」のように力強い言葉で語られるのが印象的です。また、関係性が対等で、お互いのことを個として尊重し合っているという特徴も見られます。
バウンダリーの尊重は
自立した関係性の基本
ここで注意したいのが、ピアサポートは「相談」ではないということです。シングルマザー同士が相談相手になり、アドバイスを求めたり、アドバイスを与えたりする関係は、一見、良いことのように見えます。しかし、アドバイスを求める側と与える側という関係性の中に対等性はなく、バウンダリー(境界線)を超えた行為とも言えます。ピアサポートにおいては、それがお互いの課題解決を応援するといった対等な関係であるかどうかを見極める必要があります。
グラウンドルールを共有し
全員が場に貢献する
ピアサポートが有効に機能するためには、参加者同士が対等であること、互いを尊重し合う安全で安心な場づくりに参加者全員が協力する姿勢を共有していることが重要です。それを実現するために、こうしたピアサポートのグループの多くは「グラウンドルール」というものを設け、会のはじめにその内容を確認するといった工夫がなされています。
以上のことから、シングルマザーズシスターフッドでは、ピアサポートの本質とは「対等な関係性のもと、全員が場に貢献する」ことであると定義しています。
ピアサポートが有効な段階を
見極める方法
ピアサポートがすべての人に有効なわけではないということも支援者は把握しておく必要があります。人によっては、上記のようなグラウンドルールをみて心理的負担を感じてしまう場合もあります。自分は、気軽におしゃべりする仲間が欲しいのであって、時間を決めて話すといったことは荷が重い、という感想を持つ人もいます。
その場合は、無理にピアサポートの場への参加をオススメすることはしない方がよいでしょう。まずは、専門家との面談や個別のカウンセリングなど、心身の回復に専念した方がいい場合もあり、医療の力も借りながら回復のプロセスを見守るという姿勢も大事です。
ピアサポートは全ての人に有効というわけではなく、ある程度、心身の回復が進み、心身ともに自律的に行動できるようになった段階において効果を発揮します。
グループリフレクション参加者の声
参加者の声から、自立した関係性のなかでお互いの成長を応援し合う様子が伺えます。
以上、ピアサポートの本質についてご紹介しました。次回は、セルフケアコラム2:仲間とともに歩んでいく(執筆者 かたつむり)をご紹介します。
https://www.singlemomssisterhood.org/singlemoms-health
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