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私は生まれつきのアトツギじゃなかった話

今はすっかり「町工場のアトツギです」なんて言うようになりましたが、私は元々アトツギじゃなかったのよ?って話。

学生時代

子どもの頃から体を動かす事は得意だった私は、スポーツ科学なる言葉に惹かれて大学は私立大学の体育学部に進学。
オリンピック選手も輩出する水泳強豪チームにも入れてもらった。・・・・・マネージャーとしてね?
部活に明け暮れて就活の時期になるとようやく「あ、私スポーツ科学してない」と気付き慌てていると大学と同じ県内の国立大学に私のやりたそうな研究してる研究室がある!と情報を得て親に頼み込んで大学院に進学。
部活のない学生生活をエンジョイし、トライしたかった研究分野にトライできて良い経験になる。
ちなみ私は画像による動作解析を主とする「スポーツバイオメカニクス」を専攻してた。最高のパフォーマンスとは?を定義したり最高のパフォーマンスを発揮する為の角度や力を画面上の座標から計算して統計とったりする。楽しい。

ただ、ここで私はなんと病んでしまう。

天候不良により修論の実験失敗。リスケして再実験できたものの、座標を得る為にひたすら画面に映る身体のマーカーをクリックしていく作業(デジタイズ)を寝ずにやらないと間に合わない・・・!!!という時期になってしまったので、とにかく院生室のPCの足元で仮眠したりしながら院生室に籠ってポチポチポチポチ・・・・・座標を取り終わったとして・・・そこからあれやこれやと数字を出して・・・結果は出るんだろうか・・・私は意味のある研究をしているんだろうか・・・・寝れない。仮眠したいのに寝れない。寝れたと思ったら反動で寝すぎたことによって作業ができなかった数時間を悔やんで不安になり・・・
病んだ。結局院生室に行く事もできなくなり、中退した。実験やりっぱなしで。

この時の経験は私の黒歴史だけど、大学院時代の収穫は大きい。

  • エクセルが使えるようになった

  • 私は寝ないと病むことを知った

  • 私は喋ってないとストレスたまる事を知った

販売員時代

大学院の修士課程を中退したが、内定をもらっていた会社は「大卒扱いになっても良いなら良いですよ」と許可を頂けた。
ありがたく入社した会社はスポーツ用品の小売業である上場企業。当時は業界ランキング1位だったかな?
実はスポーツ用品の「販売」ではなく「開発」に行けるように希望していたのだが、新入社員は全員まずは店舗配属される。
店舗ではシューズ・ウェア・フィットネス用品・サプリメント・スポーツ小物等々の担当をして、該当コーナーの商品管理・人員管理が社員の仕事だったが販売に立つのが超楽しかった。
今でもサポーターの選定やサプリメントの知識は役に立っている。

そんな生活のある日に急転直下な出来事が

兄の死

店舗の電話が私に取り次がれ出てみると母から。
「お兄ちゃんが事故で大変なことになっちゃったから帰ってきて欲しい。数日お休み取れる?」
大変な事って何?数日お休みって?休み取るにも上司にお願いしないといけないからちゃんと教えて?と言うと
「・・・亡くなりました。」
これ以上喋らせないでくれという空気を電話の向こうから感じ、分かったと言って電話を切る。
上司に簡単に事情を話してビックリされながらも「分かった。お店の事は良いからとにかく帰りなさい。」と言ってもらえ帰宅。
ロードバイクで一人走っている最中、山中で何かに引っかかって川に転落して死亡したらしい。
通夜葬儀の準備、敢行、義姉や両親のケア、自分のケア。とにかく誰も壊れないように立ち回った。

兄は6歳上で、亡くなる5年前くらいから後継者として父の会社に入社していた。32歳だった。

家業の状況を初めて知る

私は子供の頃から「おじいちゃんはなんかの会社の社長さん」くらいの意識はあったが、それを父が継ぐとか、兄が継ぐとか、ましてや自分が継ぐなんて考えたこともなかった。
ちなみに初代 曾祖父→2代目 祖父→3代目 大叔父→4代目の父 というようにゴリゴリに同族で継がれている。

兄が亡くなって葬儀も終わり、ようやく家族だけの時間が訪れた時に色々話を聞いた。私が県外で一人暮らしをしていた間の8年間で会社の経営にはだいぶ苦戦していたようで、当時細かい話を聞いても良く理解していなかったけど、会社のピンチの際に「後継者がいる」というラベルが剝がれてしまった事だけはよく分かった。
最愛の息子を亡くし、経営難の両親を置いてこのまま私は自分の暮らしをしていてはいけない・・・今の会社での目標もあったし、一人暮らしは楽しいけどここは一旦帰ろう。
そう決断して当時の会社には退職を申し出て実家に戻った。
「私は経営も装置も何もわからないけど、将来誰かに継いでもらえる会社にするお手伝いはする。頑張ろ?」

今から10年前、当時26歳の頃のお話でした。

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