見出し画像

エストロゲン(女性ホルモン)注射や抗アンドロゲン(男性ホルモン抑制)薬のはなし。

Q プロギノンデポーは何mgがベストですか?できるだけ高容量を打ちたいです。

Qプロギノンデポーを打てば打つほど、女性化しますか?


この質問が多いのですが、
高容量の注射をガンガン打っても
いきなり急にすべてが変わるわけではありません。

エストロゲン療法を行う際には
少しずつ、自分にあった量(適量)投与がよいとされています。



プロギノン・デポー筋注
(一般名:エストラジオール吉草酸エステル注射液)は
急上昇、急降下するので、国によっては扱われていない国もあります。
禁止の国も!!!

ホルモンバランスが安定しないので、危険を伴うからです。

EPATH(ヨーロッパトランスジェンダー協会)のセミナーの時に
他国の医師とのお話でエストロゲン療法の注射製剤について話しました。👇


エストロゲンのup-downが激しいとは?イメージではこんな感じです。👇

自身のスライドより抜粋

ホルモン療法は安定が一番!

私の国ではエストロゲンの注射は禁止だから、
日本にきて興味があるから打ってみたい!

患者様の声より


海外から日本へ移住し
「女性ホルモンの注射があるなんて信じられない!どんな感じか打ってみたい」と、受診される方もいます。


海外ではTブロッカー(テストステロン<男性ホルモン>遮断薬)も使用しながら、ホルモン療法を調整していきます。

*Tブロッカー(テストステロン<男性ホルモン>遮断薬):抗アンドロゲン薬ともいう。
*Tブロッカーを使用しない人もいます。


Tブロッカーでテストステロン量をおさえながら
適正なエストロゲン(女性ホルモン)を使用することは、重要かと思います。

エストロゲンの過量投与は血栓が心配です…..

自身のスライドより

Tブロッカーとして、下記が知られていますが、
主に日本で扱われているのは①③で、私は①のみ処方しています。
①スピロノラクトン
②酢酸シプロテロン
③GnRHアゴニスト
④ビタルカミド

酢酸シプロテロンは、
プロラクチンの上昇、血栓リスク上昇、心血管系リスク上昇、髄膜腫(頭蓋内腫瘍)と関連するとも言われており、日本では販売中止になりました。
一部他国でも販売中止になっています。

しかし、ヨーロッパなどの国では、
Tブロッカーとして酢酸シプロテロンがよく使われています。

一方でシプロテロンの副作用に懸念を示す国では、
最近、GnRHアゴニストの注射製剤を使用する方も増えてきた印象があります。

【Tブロッカー👇】

WPATHガイドラインより抜粋

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/26895269.2022.2100644


海外から日本へ輸入可能な薬の中に、スーシ―(ダイアン)があります。
スーシ―には酢酸シプロテロンが入っており、輸入して内服されている方も多いかと思います。

スーシーには、強力なテストステロンを抑える薬(シプロテロン)が入っているので、好まれる方もいると思いますが、日本では推奨されていません。

下記理由👇

抗アンドロゲン作用を示す酢酸シプロテロン(Cyproterone acetate;商品名Androcur? 日本では発売中止)はヒドロキシプロゲステロンに属する合成プロゲステロンで、ざ瘡および多毛症に効果が見られ、海外では良く使われているが、日本では以前前立腺癌の治療に使用されたが肝癌などの副作用報告がみられ発売が中止された。
すなわち、日本人には適さない

下記webサイトより抜粋

☝この先生の説明がわかりやすいです。
Tブロッカーのお話はまた今度。



さて、プロギノンのお話へ戻ります。

私は、高容量のプロギノンデポー注射は推奨しません。

★45歳以上の方にプロギノン20mgを打ち続けるのは、
過量投与であり、副作用の懸念もあるため、特に推奨できないなと思っています。

そのため、十分説明を行い、安全性を説明の上、
経皮薬(塗り薬・貼り薬)への変更をお願いしています。


★45歳未満の方でも、高容量のプロギノン注射はあまり推奨していません。

Tブロッカーをうまく使いながら、
プロギノンデポー注射製剤の少量投与 or 注射製剤+ジェル・貼り薬など
適正で安全なエストロゲン療法を行うようにしています。


下記のwebサイトを用いて、患者様に説明しています。
非常にわかりやすいです。
作成者の方に感謝しています。


☝のサイトに注射製剤と用量、投与間隔を入力し
E2(エストラジオール)の値がどのように変化するか見てみましょう。

【2週間に1回 プロギノンデポー20mgの場合】
ピークがE2 1200 pg/mlもあります…..
▶up-downが激しいです…..

Transfeminine Scienceより抜粋


USAの先生とお話すると。
内服薬やパッチもありますが、注射を使用する場合。
アメリカではこのような投与方法👇が多いな、と印象があります。
プロギノンデポー4-6mg/週 自己注射
▶ピーク値がE2 300 pg/ml
▶トラフ値がE2 100pg/ml

Transfeminine Scienceより抜粋

当院では、
★E2のピーク値とトラフ(次の注射の直前)値を確認し
1人1人の注射製剤を調整しています。



最後に
E2の基準値を貼ります。
SRL様のwebサイトから抜粋しました。

SRLのwebサイトより抜粋


参考文献として

▶2024年の循環器診療ガイドラインにトランスジェンダー項目が追加。
循環器診療ガイドライン2024では、
トランスジェンダーのホルモン療法に関する血栓症の記載が追加されました。

https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Tsukada_Tetsuo.pdf


日本循環器学会(のyoutubeに解説がありました。

youtubeより抜粋


youtubeでは、19分頃に解説があります。



安全で適切なホルモン療法を行うことが大切です。

定期的な血液検査、医師診察を行いながら、
エストロゲン療法、Tブロッカー療法を行うことをおすすめしたいと思います。
血栓症は非常に怖いです。。。

長くなりました。
おやすみなさい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?