物語『いたずら』
題名
『いたずら』
(裏テーマ・突然の別れ)
【約1113文字】
朝は、目覚まし時計が鳴らなかった。そのせいで仕事に遅刻して恥をかいた。
昼は定食屋の玉子巻きに殻が入ってた。文句は言わず黙って食べたが気分は沈んだ。
仕事の外回りで歩いていたら靴底が破れた。確かに古いのに無理して履いていたが靴底が剥がれるなんて想像していなかった。
その夜、居酒屋に寄って注文したらなかなか品物が来ない。痺れを切らし我慢の限界で店員に聞いたら品切れらしい。だったら早くそう言えって怒りたくなったが、まわりの目も気になり他の串とかを注文した。
家に帰る途中で自動販売機を見つけ、コーヒーを買うためにお金を入れてボタンを押した。出ない。出ない。あきらめる。
なんて日なんだろうと思いながら風呂に入ると今度は排水口が詰まった。裸で少し寒い中、掃除をした。
寝る前に小腹が空いてカップラーメンを食べることにする。フタを開け粉末だしやかやくを麺の上に出して、お湯を入れるために保温ポットの電動給湯ボタンを押す。しかし、押してもお湯が出ない。何度押しても出ない。結局これは壊れていた。買い替え決定。しょうがなく雪平鍋で水を沸かしてカップラーメンに注いだ。
さぁ寝ようと思ったら、テーブルからスマホを落とす。画面が割れる。
それでもまた明日も寝坊するわけにもいかないと布団をかぶって寝ようとしたら、電話が鳴る。
祖母の急死の連絡だった。
まったく関係ないかもしれないが、朝からのいろんな出来事が一本の線で繋がった気がした。
お婆ちゃんはいたずらが大好きだったんだ。
最後のお別れに会いに来てくれていたんだろう。
考えてみれば、お婆ちゃんの家によく泊まっていたけれど最近は正月に顔を見せるくらいになっていた。
突然の別れだったけれど、1日を振り返ると心が熱くなった。
昔お婆ちゃんと一緒に寝た時、寝つけない僕に、面白おかしくお婆ちゃんの失敗談とかを話してくれたんだ。
あっ、そっか~、そうそう今日の出来事はぜんぶ、お婆ちゃんの失敗談だ。
やられたーーー。笑
葬式の時には、少し怒ってやろうと思ったら、視界が歪んで見えなくなった。泣いていた。
これからどうする?
通夜と葬儀のために明日と明後日は仕事を休まないと。
眠れるかどうかは分からないけれど、これから喪服とか用意して、朝イチで実家に帰ろう。
翌朝、ポストに祖母からのハガキが入っていた。
そうか昨夜はポストを見なかった。
「たまには顔を見せろ。じゃないと、いたずらするぞ!」
って書かれていた。
寂しかったのかな。
「ごめんね、お婆ちゃん………」
「大好きだった、お婆ちゃん……」
帰るから、待っててね。
【終わり】