スイーツスイートフクダさんの福島県産の桃のケーキと、山元町のこと
日曜日の午後。
週末恒例の買い出しに出かけた帰り、何か甘いものも買って帰ろうと夫が連れて行ってくれたのは、仙台市泉区の「スイーツスイートフクダ」さんだった。
赤と緑を基調にした、落ち着いた、そして可愛らしい外観。
「ここのケーキは、何食っても美味い」
ケーキも和菓子も大好きな夫が、きっぱりと言う。
そういえば、今年の私の誕生日に夫が買ってきてくれたケーキも、こちらのお店のものだった。看板に描かれたトナカイのイラストを見て、誕生日の時のケーキの美味しさを思い出す。
店内に入ると、ガラスケースの中には様々なケーキ。そして窓辺の棚にはたくさんの焼き菓子も。
どれも美味しそうだったが、その日、ガラスケースの中で特に光り輝いて見えたのは、桃をまるごと1個使った、2種類のケーキだった。
種をくりぬいた桃をまるごと一個、桃ゼリーでコーティングして桃クリームのロールケーキの上に乗せたという「桃太郎」と、カスタードクリームを詰めた桃をまるごと一個タルトの上に乗せたという「まるごと桃のタルト」。
どちらもすごいボリューム。そして、どこからどう見ても美味しそう。
「これ凄いね」
「これ凄いね」
「絶対美味しいよね」
「間違いない」
私も夫も、桃が大好物である。
どちらも大きな桃をまるごと一個使っているだけあって、お値段は他のケーキよりも割高。しかし、それでも1個1,000円以下。桃とケーキを両方買うことを思えば、むしろ驚くほど割安とも言える。
「ここは、俺が出す」
日頃はあまり散財しないはずの我が夫、このケーキは即決。
夫の言葉に甘えて、「桃太郎」と「まるごと桃のタルト」をそれぞれ1個ずつ購入してもらう。
夫がお会計をしている間、レジの上に貼られた案内に目が留まり、思わず夫に声をかけた。
「桃、福島のだ!」
こちらで使用されている桃は、福島県須賀川市の安藤農園さんのものだった。
案内を見上げた夫も笑顔になる。そんな我々夫婦を見て、店員さんもまた笑顔に。
福島の桃をケーキで食べられる嬉しさと、信頼できるお店と出会えた嬉しさと安心感。食べる前から幸せな気持ちになりながら、店員さんにお礼を言って家路についた。
帰宅後は、久しぶりにお気に入りのウェッジウッドの器を出してティータイム。
美味しかった。
そりぁあもう美味しかった。
しっかり固くて甘い桃。そこに、たまごそのものの美味しさを感じられるカスタードクリーム。ふわっふわのロールケーキの土台も、さっくさくのタルトも、どちらも美味しい。
美味しいだろうなと思って買ってきたのだが、期待していた数倍いや数十倍の美味しさだった。
辛い時期を乗り越えて生産を続けてくれた農家さんの桃と、その桃を使って丁寧に作られたケーキの美味しさに、お腹だけでなく心も満たされた。
ケーキを食べ終えてから、あらためて「スイーツスイートフクダ」さんのホームページを読んでみた。
すると、こちらのお店では福島県須賀川市の安藤農園さんの桃だけでなく、宮城県亘理郡山元町の燦燦園さんの苺も使用していることが記されていた。
今は宮城県在住で県内各地に足を運んでいる私だが、山元町、という名前を私が初めて知ったのは、まだ北海道に住んでいた頃。
東日本大震災の後、「ほぼ日刊イトイ新聞」の記事でのことだった。
上の連載記事の中でも触れられているとおり、東日本大震災の津波による塩害でもうイチゴは作れないと言われた山元町だが、現在はイチゴの栽培が再開され、山元町産の美味しいイチゴを味わうことが出来る。
スイーツスイートフクダさんのケーキに使われているイチゴを生産している山元町の燦燦園さんも、東日本大震災の時は、津波で全てを失ったという。
福島県須賀川市の安藤農園さんも、宮城県亘理郡山元町の燦燦園さんも、「品質」「美味しさ」で選ばれる桃やイチゴを生産している。
だからこそ、こうして本当に美味しい商品を生み出すお店に、その素材として選ばれている。
すごいな、と思う。
尊敬という言葉では言い表せないくらい、すごいな、と思う。
そして、ありがたいと思う。
困難を乗り越えて、美味しいものを生産し続けてくれる人がいるのは、ありがたくて幸せなことだ。
考えてみれば、ケーキや果物を食べられるというのは、それだけで日常より少しだけ贅沢なことで、幸せなことだ。
美味しいケーキは、心の栄養だと思う。
また今度、スイーツスイートフクダさんに行ったときは、イチゴのケーキを買ってこようと思う。