あなたで良い、ではなく、あなたが良い
※トップ画像の写真はプロレスリング・ノア旗揚げ前、当時加入していた全日本プロレスのオフィシャルファンクラブから送られてきたものです。
プロレスリング・ノアの小川良成選手が引退を表明した。
暫し、呆然とした。
どれくらいの時間だったろうか。
三沢光晴選手が亡くなり
小橋建太選手が引退し
それでも、三沢さんが立ち上げたノアという団体を私が応援し続けてきたのは、小川良成選手の存在が大きかった。
もっと言えば、ヘビー級にばかり目を向けていた私がジュニアの試合に興味を持つようになったきっかけは、小川良成選手だった。
全日本プロレス時代。
ヘビー級の選手として団体のトップに立った三沢光晴選手がタッグパートナーに指名したのが、ジュニアヘビー級の小川良成選手だった。
本当に自分で良いのか?
そう問いかけた小川選手に、三沢選手は
「お前でいいんじゃなく、お前がいいんだよ」
と、きっぱり言い切ったという。
あれから、もう何年になるだろう。
三沢さんとのタッグはもちろん、三沢さん亡き後も、小川さんは唯一無二の存在だった。
ジュニアって、面白い。
ヘビー級ばかり見ていた私にそう思わせてくれたのは、小川さんだった。
本来ネガティブな意味合いを持つはずの「狡猾」という言葉が、少なくともプロレス観戦においては自分の中で最大級の褒め言葉に変わったのは、小川さんのプロレスのおかげだった。
いつどんな時も、小川さんの試合にガッカリさせられたことは無かった。
体格がどうであれ、小川さんのプロレスは、いつもスリリングでカッコよくて。
楽しかった。
大好きだった。
三沢さん、小川さんの凄さを教えてくれて、ありがとう。
観戦するたび、いつだってそう思った。
小川さんは、記者会見の予定も無く、引退試合もセレモニーも一切無いという。
それは、とても寂しくて悲しいけれど、小川さんらしいな、とも思う。
ふと、今年2月に引退したDDTプロレスリングの坂口征夫さんの引退記者会見が思い出された。
坂口さんも、本当は、こんなふうに引退したかったんだろう。あの引退記者会見での発言を振り返り、そう思う。
それは、ある意味、美学かもしれない。
それでも、自身の思いを貫くことよりも仲間達の想いを汲むことを選び、ごく最小限の引退ロードを駆け抜けた坂口さん。
一方、孤高のまま退くことを選んだ、小川さん。
どちらも、生き方。
どちらも、美しい。
でも
やっぱり、寂しい。
けれど
小川良成という凄いレスラーがいたこと、そのレスラーのおかげでたくさんのジュニアヘビー級のプロレスラーに興味を持つことができて人生の楽しみが増えたことは、書き記しておきたいと思う。
プロレスを好きになって、良かった。
小川良成選手のファンになって、良かった。
小川選手で良い、ではなく
小川選手が良い。
これまでも、これからも。
この喪失感を言葉にするのは、今はまだ、難しい。
それでも、私はこれからも、プロレスファンであり続けたいと思う。
三沢さんや小川さんが守り続けたプロレスを、これからも、楽しんでゆきたいと思う。