【フードエッセイ】三陸でとろける美味さの鮭いくら丼と焼きたてのマドレーヌを食べてきた
日曜日は、仙台から南三陸町を経由して、気仙沼の大谷海岸に出かけていた。
夫と私の共通の友人から、今一人で東北を旅しているのでもし良かったらどこかで会おうと連絡があったからだ。友人は関西在住で、今回の旅はJRで移動しているという。土曜日は岩手をまわってから気仙沼に泊まるというので、ならば大谷海岸の道の駅で合流しようということになった。
大谷海岸は気仙沼市の南、本吉町に位置しており、その道の駅は東日本大震災後に運行されるようになった気仙沼線BRT(バス高速輸送)の駅を兼ねている。
先ほど「夫と私の共通の友人」と書いたが、もともとは夫との付き合いの長い友人であり、私は夫(当時はまだ友人だったのだが)を介して知り合った。
友人は仕事でもプライベートでもこれまでに何度も東北を訪れていたそうだが、ここ数年のコロナ禍もあり、東北への旅は久しぶりだという。夫との再会も5年ぶりである。
「せっかく久しぶりに来てくれるんだから、他じゃあなかなか買えないようなお土産を渡したいね。」
「んだな。仙台駅のお土産物屋さんとかじゃなく、(現地に)行かないと買えないようなお菓子。」
夫とそんな相談の結果、待ち合わせ時間の前にお土産購入のために寄り道したのは南三陸町の「南三陸さんさん商店街」だった。
こちらの商店街には、飲食店やお土産店計28店舗が軒を連ねている。各メディアで話題の和洋菓子店やカフェも多く、甘いもの好きの友人へのプレゼントを探すにはぴったりの商店街である。
第一候補はオーイング菓子工房 Ryoさんの「お山のマドレーヌ」だったのだが、あいにくこちらのお店はまだ準備中だった。
それならばと第二候補の和洋菓子店「雄新堂」さんへ。こちらも各メディアで度々取り上げられている人気店である。
開店から間もない午前中の時間帯だったのだが、ガラスケースの中にはすでに見るからに美味しそうなケーキと和菓子がたくさん並べられていた。友人には日持ちするお菓子が良いだろうと名物の「モアイ最中」を購入し、ついでに自宅用にマドレーヌと桜餅を2個ずつ購入した。
雄新堂さんの向かい側には、ここを訪れた際に必ず立ち寄っている「山内鮮魚店」がある。軒先には様々な地魚の干物がずらりと並べられていた。どれも驚くほど身が厚く大きい。しかもそのほとんどが1枚200円。安い。
「あ!カナガシラの開きがある!」
夫が気付いて教えてくれた。カナガシラは我が家のお気に入りの地魚のひとつではあるが、干物はまだ食べたことが無い。しかも他の魚は1枚ずつ干板に並べられているのだが、こちらは発泡スチロールのトレーに3枚入。その横に300円との値札が置かれている。
「すみませーん!このカナガシラ、3枚で300円でいいんですか?」
店の方に声を掛けると、いかにも海の男といったたたずまいの年配の男性店員さんが笑いながら頷く。マジか。お買い得にもほどがある。
「じゃあこのカナガシラと、そっちのカマス2枚ください!」
「あいよ!」
店員さんはビニール袋をさっと取り出すと手際よく魚を包み、はい、ありがとねと手渡してくれた。あまりの安さに恐縮しつつ代金を渡す私に、
「カナガシラは、けでるようなもんだがら!」
笑いながらそう言われた。
「ありがとうございます!」
いい買い物が出来て良かったと店を後にし車に戻る道すがら、夫が先ほどの店員さんが言っていた「けでる」という言葉の意味を教えてくれた。タダであげるようなものだから、という意味合いのことを言ってくれていたようだ。(くれてやる→けでやる→けでる、らしい。)
私が宮城に移住してきてこの春で丸3年になるが、その間ずっとネイティブ通訳として寄り添ってくれた夫には本当に感謝である。おかげで日常会話でも「んだんだ」「んだがらー」と普通に口に出るようになった。とはいえ「なした?」「したっけ」等々、日常会話はまだ北海道弁の方が圧倒的に多いのだけれど。
道の駅大谷海岸に到着したのはお昼少し前だった。
5年ぶりの再会となる友人の変わらない元気そうな姿と笑顔に嬉しくなる。
挨拶もそこそこに、まずはお昼。飲食スペース「レストランウミココ」にて、互いに好きなものを注文。
友人は好きな海鮮丼を3種類選べるセットメニュー、夫は焼き魚がメインの定食、私は季節限定の鮭いくら丼をチョイス。
最初に出来上がったのは、友人が頼んだ海鮮丼セット。どのお刺身も見るからに新鮮で美味しそう。凄いねぇと3人で話していると、次に番号が呼ばれたのは私だった。
受け取りに行って驚いた。メニューの写真から想像していたものよりはるかに豪華でボリュームたっぷり。
メニュー写真を超えることコメダのごとし。どんぶりの中はつやっつやの鮭とキラッキラのイクラのお花畑である。まず、鮭をひとくち。口に入れるととろける。歯がいらないレベル。しかも美味しい。甘味のある脂で口の中が天国になる。鮭もイクラもごはんもめちゃくちゃ美味しい。中でもこの鮭は絶品。お世辞抜きに、これまで食べた鮭のお刺身の中で一番美味しかった。
お刺身系の品々から遅れること数分。夫が注文した定食が出来上がる。
今回夫が注文したのは「漁師の気まぐれ定食」だった。以前ここを訪問した際にも注文していた夫のお気に入りのメニュー。
デカイ!
お盆からはみ出すサバ。これで一人前である。気まぐれでこのサイズの金華サバなのか。漁師さんありがとう。
大きいだけでなくしっかりと脂がのったサバはもちろん味も絶品だったそうで、夫は中骨以外、頭からしっぽまでほぼ完食。トレーを返す際にお店の方に感激されていた。
お腹いっぱいになった後は、産直市場でお買い物。
友人はともかく我々夫婦はつい先ほど南三陸でおやつや海の幸、そして日本酒等の買い物をすませたばかりだったのだが、大谷海岸でしか買えない品々を見るとつい手が伸びる。結果、ここでさらに日本酒を買い足すことに。
友人にこの後の予定をたずねてみると、夜までに次の目的地に移動出来れば良いのでそれまではノープランだという。ならばと3人で向かったのは、先ほども訪れた南三陸のさんさん商店街だった。
お昼を過ぎたさんさん商店街は、朝訪れた時よりもさらに多くの人で賑わっていた。ちなみにこの日は南三陸名産のタコをモチーフにしたキャラクター・オクトパス君と一緒に第501軍団 日本支部の方々も来場していて大人気だった。
つい先ほど大谷海岸で満腹になったばかりのはずなのだが、こちらでは、先ほど買いそびれた「お山のマドレーヌ」がちょうど焼きたてだった。
迷うことなく購入。
これがまためちゃくちゃ美味しかった!
外はさくさく、中はふわふわしっとり。程よい甘さにバターの香りがたまらない。たまごが良いのかバターが良いのか。
いやもう全部最高。
写真すら撮らず、瞬殺に近い勢いでぺろりと完食してしまった。
その後は、商店街の散策からの、ドライブ。
楽しい時間を過ごした。
帰宅後、楽しかったねーと夫と話しながらのコーヒーのお供は、買ってきたばかりのさくら餅。
これがまた美味しかった。
気仙沼でも南三陸でもお腹いっぱいになった筈なのだが、甘いものは別腹。
夜は、買ってきたばかりの干物を焼いて、同じく買ってきたばかりの日本酒で晩酌。
魚もお酒も美味しくて、幸せな晩酌のひとときを過ごした。
私と夫にとっては、週末の食材買い出しにちょっと足をのばして県北方面や三陸各地に出かけるというのは日常ではある。
けれど、今回は友人のおかげで、いつも以上に楽しく充実した時間を過ごすことが出来た。
遠方から訪ねてきてくれた友人に感謝である。
友人との再会以降、今年は久しぶりに関西方面に旅行に行こうかと夫と話している。
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