心が辛く、衝撃的だった映画「ミッシング」。それでも、俳優陣の演技は、素晴らしかった。
5月21日に映画館で観た後の感想に、5月28日にパンフレットに掲載されていた、
本編のシナリオを読んだ後の感想を追記しました。
【2024年5月21日】
本編が始まって、最初の数分。
オープニングを観ただけで、もう、これは駄目なヤツだと直感がして。
その予想通り、自分にはちょっと駄目なヤツでした。
この作品は、良い作品とか、良くない作品とか、そういう所では語れないですね。
そして、それは、自分の立場上、そう感じるのかも知れないです。
自分も。
小学生のまだ幼い娘を3人持って、これまで大切に育ててきたから。
だからこそ、本編を観ている間は、ずっと、
「自分だったら、どうなんだろう?」と、その事ばかりを考えていて、
ずーっと、心がザワザワとしっ放しでした。
それでも、胸に強く迫ってくる場面が沢山あり過ぎて、
正直、何と言っていいかわからないような、
そんな気分のまま、観終えてしまったという、そんな実感。
そんな中。
石原さとみさんの演技。
今まで、彼女の出演作を幾つか見てきたけれど、
今回は初めて、最初から、最後まで一貫して、
この主人公・沙緒里の、例え用のない喪失感の深さに向かい合って、
それを見事に体現されていたと思いました。
精神の危うさが狂気に触れそうな所から、
娘の消息に繋がる、一筋の光に、全身全霊で縋ってく所まで、
演技という枠を超えているかのような、そんな響くものがあったし、
見ていてゾクゾクとさせられるようなシーンもあり、
物凄い精神の振れ幅を見たという、そんな気分になりました。
青木崇高さんも、そんな主人公との温度差に戸惑いながらも、
それを理解し、寄り添いながら、気丈に立ち振る舞う、夫・豊の心情。
凄く難しい立ち位置の役柄だったと思うけれど、
とても見事なバランスで演じられていて、
自分にとっては1番共感させられる部分が多かったです。
中村倫也さんも良かったなぁ。
本当に、芯の通った、作品の中の良心的な部分に、救いを感じつつ。
真実だけでなく、人々の心に届けるべきものを報道しようとする、
その志の真っ直ぐな部分が、演技からも表れていたのが良かったです。
個人的には、カトウシンスケさん。
最近、とても注目している俳優さんで、自分の好きな作品では、
しっかり印象に残る演技をされているのを見てきていて、
今作でも、チョイ役ながら、光る演技を見せて貰えたのが良かったです。
世武裕子さんの音楽も、とても良かったなぁ。
エンドロールで流れた「missing」は、
娘との数々の思い出を胸にしつつ、主人公が少しずつでも前に向かっていくような、
そんな未来を感じさせる、美しいピアノの旋律が印象的で、
作品の余韻に浸りながら、その音楽に想いを馳せつつ、
最後まで物語を見届けることが出来たと思います。
この作品は、心の喪失の物語だったと、そう感じていて。
その上で、自分の心の平穏が、今有るのは、
自分が帰るべき場所があり、
そこに家族が居るからこそなんだなぁと。
そんな、何でもないような事が、幸せなんだと。
そこに、改めて気付かされて。
今日は、習い事に出掛けた、次女と三女が、
自転車で無事に帰ってきた事にホッとして。
家族が元気に揃って、笑って団欒出来る事に、
いつも以上に幸せを感じたという、そんな一日を過ごしました。
【2024年5月23日】
映画「ミッシング」のパンフレット。
シナリオが掲載されているので、買ってきました。
1200円だったけど、もう殆ど、本じゃないかというくらいのページ数で、読み応えありました。
脚本、読んだら、また違った視点で、
その再現度を確認したくなるので、もう一度観に行くかもなぁ。
【2024年5月28日】
先週、5月21日に鑑賞した映画「ミッシング」。
本当に衝撃的な内容で、自分としては観ていて辛くなるような作品だったのですが、
パンフレットに本編のシナリオが掲載されているという事だったので、購入して読んでみました。
シナリオを一通り読んで。
改めて、この作品のキャスト陣の演技が、本当に素晴らしいものだったんだなぁと言う事が、さらに強く印象に残りましたね。
ここからは、脚本を読んだ上での本編の感想を書きたいと思うので、
これから本作を鑑賞される方には、ネタバレになるかも知れないので、お気をつけ下さい。
石原さとみさん。
やっぱり、彼女の演技は素晴らしいものだったと、脚本を読んで、さらに強く思いました。
あるシーンのト書きに、「若干の狂気を放つ沙緒里」と、書かれたシーンがあって。
そこから、確かに演技に狂気のようなものを感じた事を思い出した時、やはり相当な覚悟と、意思を持って、この役柄に取り組まれたのが、ヒシヒシと伝わってきました。
警察署で、失禁するシーンも、シナリオで読むと、わりと淡々と綴ってあるだけなのですが、本編で石原さとみさんが演じたシーンを見ると、彼女の中の色んな物が弾けて、観ていてグッと胸が締め付けられるような、そんな心情が物凄く迫ってくるものになっていたと思うし、主人公の沙緒里に、命と魂を吹き込まれたのは、彼女の演技があってのものだなぁと思う部分が沢山ありました。
作品を観た後、彼女の演技について、派手過ぎるとか、過剰すぎるというような感想も幾つか目にしたけれど、脚本の中から、これだけ交錯する感情を引き出す演技が出来るというのは、本当に凄い事だなぁと思ったし、これは観る価値のある素晴らしいものだという事を、再確認しました。
それを受ける形だった、青木崇高さん。
パンフレットの中でも石原さんが触れられていましたが、その包容力や優しさを感じさせる、そんな関係性が、撮影の中でも築かれていたそうです。
僕がこの作品で、「自分だったら、こうだろうなぁ」という、そんな視点に近いものを、演技の中で見せて貰えたから、自分としては、1番感情が入ってった役柄だったので、幾つかのシーンでは感極まって、泣きそうになったりしていました。
もう、本当に素晴らしい、受け側の助演という感じでしたね。
中村倫也さん。
彼の演技も、仕上がった作品の中で、絶妙な立ち位置になっていたと思います。
抑揚が効いていて、芯がしっかり通っているように見えつつも、自分の立場や心境の動きに葛藤するという役柄は、とても感情移入しやすかったし、物語をリードする視点での演技が、とても見事だったと思いました。
凄く、落ち着いて演じてらっしゃったなぁという印象で、この落ち着きが、作品の波を中和して、少しでも穏やかに見せてくれていたんだなぁと、そんな事に改めて気付かされましたね。
この主要な登場人物以外にも、主人公の弟を演じられた森優作さんや、
砂田の部下を演じられた小野花梨さん。
また、監督のワークショップから選ばれた、脇役、チョイ役のキャスト陣。
主人公・沙緒里の背景で、一般人が言い合いの喧嘩をしているシーンなんかも、とても印象に残ったし、総じてキャスト陣の演技は素晴らしかったなぁと思いました。
そんな俳優陣の演技を見るだけでも、この作品には価値があると。
作品のシナリオを一通り読んで、改めて実感しました。
この映画には、是非、向かい合って欲しい。
そして、その物語を演じる俳優陣の熱量を、体験して欲しいなと思います。
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