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「府中」という町 | シンフォニアの挑戦(11)

今回は、シンフォニアの事務所がある「府中市」について書いてみたいと思います。

まだ会社を設立する以前、2013年に調布市から府中市に移住しました。
それまで住んでいた部屋が、子どもを育てるのに手狭になったためです。

まだ子どもが小さく夫婦で分担して子育てを担当していましたので、しばらくは生活のための「利便性」という観点だけで府中を体験することとなりました。

そして得た感想は、
「これほど生活しやすい町はあまり無いのではないか」
「地域のつながりが(適度に)しっかりしている」
というものでした。

・一通りの科目の医院や規模のある病院がすぐ近くに揃っている
・公園が徒歩圏内に大小複数ある(競馬場内にも子供用の公園がある)
・保育所が多い
・地区の体育施設やプールなども多い
・店舗や商業施設も一通りある

こういった利点は、子育ての面で非常に大きかったように記憶しています。
他にも、高尾山など自然豊かな山々が近い事は、家族の手軽なレジャーにはとても便利でした。

一般的に府中でよく知られているものとしては、
・競馬場がある
・刑務所がある
・競艇場がある
などではないでしょうか? 
これだけだとあまり好印象は湧かないかもしれません。

実際には、ここで生まれ育った後にどこかに出て行っても30歳過ぎたあたりでまた戻ってくるという人が大変多い町なのです。私の周りにもそういう人が多く、一様に「暮らしやすいから戻ってきてしまう」とおっしゃいます。

私は移住して一年後に会社を設立、その三年後の2017年、従業員採用を始めたので事務所を借りる事にしました。

ーー さて、どこにしようか?
と考えて真っ先に頭に浮かんだのが、府中駅の南口です。

府中に移ってからずっと、府中駅南口から大國魂神社に至る一帯の、明るく賑わいのある、それでいて騒がしくもなく情緒がある様子がとても好きだったため、是非ともここに事務所を借りたいと思いました。

そこで、暑い夏の時期、この南口界隈を歩き回り、良さげな雰囲気のマンションやビルを見て回りました。いずれも、取り扱っている不動産会社の連絡先がどこかに表示されているので、それを写真に撮り、家に戻ってWebサイトから問い合わせてみました。

しかし、まだ私一人の合同会社というのが不安視されたのでしょう。
ほとんどは返信が来なかったり、来たとしてもオーナーさんから色よい返答が得られない、などの結論で話が進みませんでした。

仕方が無いので調布市にまで視野を広げ、ようやく調布駅近くに物件を見つけました。

実はその府中駅南口付近を探している時、今入っている「第15三ツ木ビル」も目に入ったのですが、まだ規模的にも条件的にも手が届かない段階だったので、(いずれこういうビルに入れると良いなあ)と眺めるにとどまりました。

年数を経て、そのビルに今、入っているわけです。
ありがたい事です。

「大國魂神社」は同じ旧甲州街道の並びですぐ近くです。
毎週月曜日には必ずお参りに行きます。

東京で生まれ育った妻から初めてその名を教えてもらった時には、
「おおくにたま?」
不思議な名前だなと思いました。あまりこの界隈以外では知名度が高くないのではないでしょうか? よくよく調べてみると日本の神話上では重要な神様が祭られているのだとか。

この神社では数か月おきにお祭りがあって参道から境内に屋台が立ち並び、付近住民が楽し気に集まります。大きく美しく親近感の持てる神社です。

元々、ここは武蔵野国の国府のあった場所だそうです。
武蔵国は、今の埼玉、東京、そして神奈川の一部までが含まれる広大な国でした。その国府、つまり国の行政の中心であったのがこの府中であり、国衙(役所)があったのが大國魂神社の付近でした。

武士の時代に入る前の平安時代までの時代、関東の中心であった町と考えると、なんだか威厳というか有難味というか、歴史好きにとっては感慨深いものがあります。

府中駅南口を出るとすぐに「くるる」という、スタバやTOHO CINEMASなどが入った商業施設があります。「くるる」というのは珍しい名前なのですが、この施設が建つ前に、「クルル鉤」とい古代の鍵が発掘された事が由来で命名されたそうです。

そんな、歴史を感じさせる町でもある府中。
この地で事務所を構えて仕事をしてきて思うのはーー。
ここが、「東京」でありながら「地方」でもあるという事。

他の道府県の人からはおそらく、東京の会社、という見られ方をしているでしょう。一方で、東京23区内からはおそらく、
(あまり東京らしからぬ、かと言って他の道府県というわけでもない、微妙な立ち位置)
と感じられているのではないでしょうか。

少なくとも30代までの、23区内で働いていた頃の私はそう感じていました。
「ビジネスをやるなら山手線の中にいなければダメだ」
という当時の諸先輩の言葉に、そうなのだろうな、と納得していましたが、今は不思議なほどそういった必要性を感じません。私が歳を得て変わったというより、世の中が変わったのだと思います。

そういった、場所によるブランドイメージ的な価値がもし未だに存在するならば、「府中で面白いモノを作っている会社」で良いかなと。

この町での仕事上の絆、ご縁というものもまたとてもありがたいものです。製品開発に協力いただける会社、親身にご相談に乗っていただける商工会議所や専門家の先生方。地方都市ならではの気さくで温かいお付き合いをさせていただいているように感じます。

そして、シンフォニアのメンバー7人は、うち6人が多摩エリアに住み、うち5人は京王線沿線に住んでいます。20~50代までいますが、皆、23区にこだわらない人たちです。

私が社会人になったのは平成に入ったばかりの時期、毎朝、社員寮がある「つつじが丘」から、「超」満員状態の京王線で都心に出ていくのが本当に苦痛でしたが、今は京王線を反対方向に各停で一駅乗るだけで事務所に着きます。家から歩いたとしても20分。

シンフォニアのメンバーも皆、満員電車には無縁だと思います。
不毛なストレスを抱えない環境で生活し働く。今の時代、素直にそれを重要視する人たちが増えているのではないでしょうか。そういう意味で多摩エリア、これから選択肢として注目されると良いなと思います。

府中良いとこ、一度はおいで。

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