【解説】統計検定 2019年準1級 問12
問題本文
問題本文は公式サイト又は公式問題集を参照してください。
問題解説(1)
【問題要約】
2次の自己回帰モデルAR(2)が存在する。
この時、AR(2)が『a1 = a2 = a』であり『0 < a』とした時、AR(2)が定常であるためのaに関する必要十分条件を求めよ。
尚、AR(2)は以下の式で表される時系列モデルである。また、AR(2)が定常であることの必要十分条件も併せて記述する。
【回答】
a < 0.5
【解説】
本問の解説に入る前に、まずはARの定常性について軽く解説をします。
ARが定常であるとは、時間によらず期待値及び自己共分散が一定であることを指します。
ARの定常性
期待値: E(a1) = E(a2) = E(a3) = E(a4) = E(a5) ...
ラグ1の自己共分散: Cov(a2, a1) = Cov(a3, a2) = Cov(a4, a3) ...
ラグ2の自己共分散: Cov(a3, a1) = Cov(a4, a2) = Cov(a5, a3) ...
(ラグ3以降の自己共分散も同様)
ARが定常であることの必要十分条件は本問でも示されているため、ここでは詳細な解説は行わず、素直に認めることとします。
ここから、必要十分条件の解(zの値)を求めていきます。
2次方程式の解の公式を用いて、以下の通り表現できます。
ここから、aが非負の値である場合、|z1| > |z2| になるため、|z2| > 1になるaの値を求めます。
よって、AR(2)の定常性が成り立つ条件は a < 0.5 になります。
問題解説(2)
【問題要約】
移動平均モデルMAが存在する。
MAが以下の式で表される時、すべてのbiの値を0.5に設定したところ、図1のようなコレログラムが生成された。この時、MAの次数qの値はいくつと推定されるか答えよ。
(図1は公式問題集を参照してください)
【回答】
q = 2
【解説】
図1のコレログラムからは以下の情報が読み取れます。
コレログラムのラグと相関
ラグ0: Cor(Xt, Xt) = 1.0 (時差0の場合は必ず相関が1になります)
ラグ1: Cor(Xt, Xt-1) = 0.5
ラグ2: Cor(Xt, Xt-2) = 0.35
ラグ3: Cor(Xt, Xt-3) = 0 (ラグ4以降も相関は0)
ここから、ラグ3以降が無相関であることが分かります。
また、本問ではbiが全て0.5と指定されています。
定数cは一定のため、Xtを構成する残りの要素はε(誤差)のみとなります。
式に表すと以下の通りとなります。
尚、MA(q)とは、q次の移動平均モデルを表しています。
また、正規分布から発生する値同士は無相関となります。
以上の条件から、ラグ3で同一の誤差項εが使われないMAの次数の中で、最小の値が答えとなります。
先に答えから述べると、MA(2)が正解となります。
MA(2)の自己相関の内、ラグ0からラグ3までの関係は以下の通りです。
(赤字は同じ誤差項を表しています)