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makoto_kob
「なあ、この路地裏、昔のままだな」
「……ん? 昔のままって? そんなにしょっちゅう来てたのか?」
「いや、初めてだ」
「え……じゃあ、なんで昔のままって思ったんだ?」
「分からないけど、懐かしい気持ちになったんだよ」
「それは分からんでもないけど……普通『昔のまま』とは言わないだろ?」
「細かいな。いいじゃないか、懐かしい気持ちになる場所を『昔のまま』って言っても」
「まあ、お前の世界観がそうならそれでいいけど……。じゃあ、お前にとっては、この古びた街灯とか、ひび割れた道が『過去からの贈り物』にでも見えているわけ?」
「それが意外とその通りでな。俺がこの道を知らなくても、この道は俺を知ってる気がするんだ」
「……お前、ちょっと詩人ぶるのやめてくれないか?」
「言葉にするのが難しいんだよな、こういうのって」
「ふうん。まあ、俺にはわからんけど……じゃあ、この路地裏に感謝でもするか?『古き良き時代をありがとう』とか?」
「……そうだな、ありがとう路地裏。これからも変わらず、俺に懐かしい気持ちを分けてくれよ」