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迷い猫と哲学

「ここに座って何してるの?」
「猫を探してるんだよ」
「猫?」
「そう、迷い猫。さっき、あの角を曲がったところで『ニャー』って声がしたんだけど、見当たらないんだよね」
「それでずっとここに座ってるの?」
「そう。あれは哲学的な猫だった」
「……は? なんでそんなことわかるの?」
「だって、考えてみて。道端で猫が『ニャー』と鳴いたとき、それをただの音として聞き流すか、それとも意味があると考えるか。それが哲学の始まりだろ?」
「いやいや、猫はただ鳴いただけでしょ」
「違う。猫は何かを問いかけているんだ。『ここにいる私は本当に私なのか』とか、『この世界は夢か現か』とか」
「それ、完全に君の妄想だよね」
「じゃあ君に聞くけど、この世に意味なんて本当にあるのか?」
「なんで猫探しからそんな話になるの!?」
「猫がいないからこそ、考えられることなんだよ。もし目の前に猫がいたら、こんな話しないだろ?」
「……まあ、それはそうかもね」
「ほら、哲学的でしょ?」
「いや、哲学的というより面倒くさいだけだよ」
「面倒くさいのは人生そのものだよ」
「それも猫に教わったの?」
「うん、あの『ニャー』がすべてを語ってた」

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