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「季節は、心の音を変えてくれる」

 季節が移り変わるたびに、心の中で鳴る音が変わる気がする。春にはふんわりした弦楽器が流れ、夏にはリズミカルな打楽器が響く。秋は低い音色のピアノ、冬は静かなチェロ。もちろん、音楽そのものが聞こえるわけじゃない。でも、自分の気持ちに耳を澄ますと、そんなイメージが浮かんでくる。
 季節の音が変わる瞬間って面白い。例えば、夏の終わりにふと気づくセミの声の減少。あれは夏のリズムが終わりを告げる合図だ。そして秋になると、風の音や落ち葉がカサカサと擦れる音が耳に入ってくる。これが心の中のピアノを鳴らし始める。
 音楽家じゃない私でも、心に鳴る音楽があることに気づくと、それが少しだけ特別な気分にさせてくれる。何かうまくいかないとき、心の音を感じると不思議と落ち着くことがある。それが季節とともに変わるのだから、季節の移り変わりは単なる気温や風景の変化以上のものなのだと思う。
 今日の心の音は、秋から冬へ向かうチェロの響きだ。少し冷たいけど、温かい毛布のように包んでくれる。

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