”データサイエンスは、現代の「読み・書き・そろばん」。文科省、2025年・全大学での数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定を目指す"
最近よく目にする「データサイエンス学部」
日本の大学で最初に「データサイエンス学部」を設立したのは国立の「滋賀大学」だと言われています。その後、毎年新しい「データサイエンス学部」が開設されるなど、この分野における教育機関の数は増加傾向にあります。現在、学部、学科、専攻コースを問わず、「データサイエンス」を冠する教育機関は全国にどの程度存在するのでしょうか?また、これらの教育機関では、具体的にどのような知識やスキルを身につけることができるのでしょうか?
【1】データサイエンス学部とは何か? そして、データサイエンスを専門的に学べる学部や学科を持つ大学は全国にいくつ存在するのでしょうか?
~データサイエンス学部では、線形代数、微積分学、プログラミング、数理統計学といった基礎科目から始め、多変量解析、機械学習、計量経済学などの応用科目を学びます。また、生成AIツールやPythonなどのプログラミング言語も扱います。これらの知識と技術を活用して、データを分析できる人材を育成することが主目的です。
「データサイエンス」を前面に出した専門学部は、どれだけあるのでしょう?(※Wikipediaを参考にした定義での狭い意味でのカウントになります)
①「データサイエンス」のワードを学部名称の中に含む大学は13大学。
宇都宮大学データサイエンス経営学部(2024年4月開設予定)
一橋大学ソ―シャルデータサイエンス学部
順天堂大学健康データサイエンス学部
武蔵野大学 データサイエンス学部
立正大学 データサイエンス学部
千葉大学 情報・データサイエンス学部(2024年4月開設予定)
横浜市立大学 データサイエンス学部
名古屋市立大学 データサイエンス学部
滋賀大学 データサイエンス学部
京都女子大学データサイエンス学部
大阪成蹊大学データサイエンス学部
下関市立大学データサイエンス学部(2024年4月開設予定)
明星大学データサイエンス学環(※学部等連係課程実施基本組織として設置。連係協力学部:情報学部、理工学部、経済学部。)
※そのものずばりでわかりやすいです。
※学環(複数学部連携)も含むと2024年4月現在で13大学になります。
②「データサイエンス」のワードを学科名称の中に含む大学は7大学。
東北学院大学情報学部データサイエンス学科
中央大学理工学部ビジネスデータサイエンス学科
日本工業大学先進工学部データサイエンス学科
亜細亜大学経営学部データサイエンス学科
北里大学未来工学部データサイエンス学科
南山大学理工学部データサイエンス学科
大阪工業大学情報科学部データサイエンス学科
③「データサイエンス」のワードを「学部・学科としては使わない」が「データサイエンスを専攻コースとして」学べる大学(18大学)
山形大学理学部理学科データサイエンスコース
東京理科大学工学部情報工学科データサイエンス分野
東洋大学総合情報学部、東洋大学情報連携学部
専修大学ネットワーク情報学部Sコースデータサイエンスプログラム
放送大学 数理・データサイエンス・AI講座
名古屋商科大学経営学部経営情報学科
名古屋商科大学大学院 MBA x データサイエンスプログラム
同志社大学文化情報学部(注:2005年からデータサイエンスに関連する科目を網羅的に取り入れた、いわゆる総合データサイエンス学部である)
関西大学総合情報学部
京都産業大学情報理工学部データサイエンスコース
福知山公立大学情報学部情報学科データサイエンス領域
神戸学院大学経営学部経営学科データサイエンス専攻
兵庫県立大学社会情報科学部社会情報科学科
広島大学情報科学部データ科学プログラム
九州工業大学情報工学部知能情報工学科データ科学コース
佐賀大学理工学部データサイエンスコース
長崎大学情報データ科学部
データサイエンスで使用される手法は多岐にわたり、分野として数学、統計学、計算機科学、情報工学、パターン認識、機械学習、データマイニング、データベース、可視化などと関係する。
文科省目標・2025年
「計793大学、および、短大・高専すべてで、数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定」を目指す(2025年目標)
そして、これらの大学では、大学によって独自のカリキュラムを工夫しているので、詳細は各大学ホームページで調べてほしい。
ところが、これらとは一線を画し「専攻以外でデータサイエンスを学べる仕組み」を文科省が推進していますので、いかに説明します。
【2】文科省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」
「文部科学省は、2019年に打ち出されたAI戦略に基づき、2025年までに全大学卒業生が数理・データサイエンス・AI教育プログラムのリテラシーレベルでの能力を身につけることを目指しています。」
「この政策の目的は、将来の社会で求められるスキルを学生に提供することです。令和5年8月現在で、全793大学中262大学がリテラシーレベルで認定されており(全大学の約33%)、さらに54大学が応用基礎レベルで認定されています(全大学の約7%)。この取り組みは、学生たちがAI時代において成功するための基礎を築くためのものです。」
令和5年8月時点の「大学・短大・高専」における総認定数
リテラシーレベル : 382件 (大学総数793大学のうち、262件)
応用基礎レベル : 147件 (大学総数793大学のうち、54件)
令和3年度「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」認定状況
令和4年度「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」認定状況
令和5年度「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」認定状況
(例)多いので一例のみ表示します。
私立 東京女子大学 データサイエンス副専攻コア科目 https://www.twcu.ac.jp/main/campuslife/aidatascience-center.html
私立 東京電機大学 情報リテラシー(数理・データサイエンス入門) https://www.dendai.ac.jp/about/tdu/activities/data-science_literacy.html
私立 東京理科大学 データサイエンス・AI概論 https://www.tus.ac.jp/academics/education/data_science/
文科省が推進する全大卒者への数理・データサイエンス・AI教育
文科省は、すべての大学卒業者に数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)の取得を目指すことを強調しています。このプログラムは、デジタル時代の基礎教養として、すべての学生に必須の学問領域として位置付けられています。
その実現のため、2021年度から各大学は文科省の指導のもと、カリキュラムの見直しを進め、数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度への申請を行っています。このカリキュラムは新規に作成されるものもあれば、既存の授業を組み合わせて構成されるものもあります。多くの大学では、既存の情報系、統計学、解析学、アルゴリズム、プログラミングなどの授業を活用しています。
この取り組みは、データサイエンス学部がない大学でも、文系から看護学部の学生まで、すべての学生が「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」を教養科目として受講し、単位を修得できるようにすることを目指しています。
教育プログラムの学問領域
このプログラムは、解析、線形代数、確率統計、プログラミング(Pythonを含む)、アルゴリズム、データマイニング、AI、データ可視化、情報メディア、ビジネスデザイン、予測分析を網羅します。学生は、生成AIの概念を理解し、Pythonを使用したプログラミングや、データ分析ツールを用いてデータ分析を行い、実世界の問題解決や研究に応用する能力を身につけることが期待されています。
【3】データサイエンスの進む方向:まとめ
データサイエンスを前面に押し出した大学、例えば一橋大学の「ソーシャルデータサイエンス学部」や武蔵大学の「データサイエンス学部」は、進化し続ける生成AIやプログラミングを駆使し、デジタル社会で実践できるデータサイエンティストの育成を目指しています。この学問は、工学やテクノロジー分野だけでなく、社会学や経済学、医療学など多岐に渡る領域に応用されています。
データサイエンス学部を選ぶ学生は大きく分けて二つのタイプがあります。一つはデータ解析と意思決定の技術を学びたい人、もう一つは将来どんな分野に進んでも役立つと考える人です。「これからの時代、どの職に就いてもデータサイエンスの知識が有利」という考え方が広がっています。
データサイエンスは、統計学、機械学習、情報技術、ビジネスインテリジェンスなどを統合した学問で、データの理解、処理、分析スキルを提供します。これにより、データサイエンティストはビジネス現場での専門性を高め、社会発展に寄与できると言えます。
文系生でもデータサイエンス学部に入学できるか、また数学が必要かという質問もよくあります。実際、多くの大学では文系生でも入学可能で、必要な数学レベルは大学によって異なります。データサイエンスの基本リテラシーは、現代の「読み・書き・そろばん」として、すべての学生に必要とされています。
データサイエンスのスキルは、あらゆる業界で活用されています。生成AIやプログラミングの理解だけでなく、重要なのはデータを通じて社会をどう改善するかを考え、実行に移す能力です。これは、文系の学生にも等しく求められるスキルです。つまり、データサイエンスは文系理系問わず必要とされる学問領域と言えるでしょう。