カローラとともに
日本車の基準
私が「CAR STADIUM」をはじめたのが2000年9月。その8月に登場したのが9代目120系カローラだった。同じ時期というだけの理由で振り返る時に一番に思い浮かぶ車である。カローラは説明の必要もなく、日本車の基本と言える。登場から50年を超える伝統の車でもある。多種多様の現代ではそんな商品は出て来ないだろうが、当時はたぶん選択肢もなかったはずで、みんながカローラに乗っている時代があったのだろう。いつも販売台数ランキングは1位。日本車を語る時、絶対欠かすことのできない車なのである。
9代目カローラがなぜそこまで高く評価されたのか。それはユーザーの期待を大きく超えるクオリティを持っていたからだと思う。実際、私もこのカローラを見た時にはびっくりしたことを覚えている。とても140万円には見えない内外装の質感。静粛性も高かったし、よく走って燃費も良かった。まさに価値ある商品となったので、少し人気に陰りが出ていたカローラが息を吹き返すきっかけとなったのである。そして、それはトヨタの車だけでなく、他社へも影響を及ぼしていく。「カローラがこんなに変わったんだから」という影響力がまだまだあったのだ。
私はあまりカローラとは縁のない人生だったが、記憶に残っているシーンがある。子どものころに自転車で通りかかったトヨタカローラ店に、発売したばかりの7代目カローラが展示してあった。プライスボードを見ると、160万円くらいの値札がかかっていて驚いた。その車は「SE-G」で運転席パワーシートも付いた豪華仕様だったわけだが、そのころの感覚ではカローラで160万円というイメージはなかったのだろうと思う。
カローラはふっきれた
話は2020年に戻って、すっかりおっさんとなった私が見ている新型カローラはベースモデルで200万円となった。7代目から30年、9代目から20年。私の体重とともに上がり続ける日本車の価格。そして、21世紀になってカローラはナンバー1の座から落ちていく。そういえば20年前ユーザーの平均年齢は60歳と言っていた。
カローラはどんなにいい車でも、絶対乗ることはないと思っていた。今の40~50代の世代にはそういう人多いだろう。子どもころ近所にあった駄菓子屋。母はいつも言っていた。あのおばあさんは自分が子ども頃からすでにおばあさんだったと。それと同じ感覚である。
けれど、新しいカローラに見て乗っている中で私の中にそんな先入観が消えていることに気づいた。乗ってそうな年齢になったからだろうか。いや、そうではない。カローラを愛した世代は80歳代となり、今までありがとう。もうわしらのことは考えないでくれと命をつないでくれたのだ。
今の若い世代にはカローラに変な先入観が少ない。目立たない時代を送ったおかげで、おじさんイメージをプリウスになすりつけて、脱却することに成功。断ち切れずにいたものから解き放たれた新型カローラは、ふっきれている。以前のように日本のスタンダードとして語られることはないのかもしれないが、ロングセラーのものって爆発的に売れているわけでもないものだったりする。カローラがこれからどんな歴史を刻むのか。これからも応援して行きたいし、20年後が楽しみである。