懐古変遷 第1回 ホンダHR-V
最近ふと思い出したのがホンダHR-V。今ではすっかり街で目にすることもなくなった。なんでHR-Vと思ったのだが、実はけっこう好きだった。今でもあるのかなと思い、中古車を調べてみる。もはや1桁くらいしかない。買うなら3ドアのCVTがいいと思ったが、5速MTばかり。確かに当時のホンダCVTは長持ちしなかった。買わないけど。
ホンダHR-Vをなつかしむ。
ホンダHR-Vは1998年に発売し、2006年まで販売。2002年くらいまでかと思ったら、案外最近まで売っていた。と言っても15年前。この車が発売された頃のホンダは、オデッセイのヒットに恵まれ、、いわゆる「RV車」の開発に熱心になっていく。背の低い車をよく作っていたホンダは当時、若さとかスタイリッシュ、あるいはスポーティなどといったイメージが強く、独身時代にシビックやプレリュードに親しんだ世代が子育て世代となり、人々の中に潜んでいた「ホンダにもこういう車があったらいいのに」という気持ちが合致。ステップワゴン、CR-Vなどのヒット車種を作り出していった。こうした車のシリーズを「クリエイティブムーバー」と言っていた。そのひとつが「HR-V」というわけである。
当初、パーソナルな方向に割り切ったようで3ドアのみ発売。ベースはこれまた存在感の薄い「ロゴ」というコンパクトカーである。コンパクトカーの車高を上げ、大径タイヤをはかせるコンセプトは、今のSUVにつながる。先見の明があった。ヴェゼルはHR-Vの子孫と言え、海外仕様ではHR-Vを名乗っている。
だが、販売は苦戦した。今見ればそのスタイルも受け入れられるが、20年以上前にはかなり個性的だったような気もするし、背が低くてキャビンは狭かったので、実際そんなに実用的ではないという当時の記事もある。価格はベーシックグレード「J」で140万円くらいと、2022年に見ると激安な感じがするが、ロゴが100万円くらいの時代だから、少し割高に感じられたのだろう。営業的に5ドア投入の要望も多かったと容易に想像はでき、遅れて5ドアも追加されている。しかし、5ドアで装備のいいタイプになると、170万円を超えてしまったので、そうなるとCR-Vとの価格差が少なくなり、結果的にCR-Vが売れたというところだろう。
HR-Vにはかつて一度だけ乗ったことがある。選べたのは1.6Lエンジンのみで非常にシンブルなSOHC仕様と、少しパワーが欲しいという人のためにSOHC VTECもあった。私が乗ったのは1.6L SOHCで105PSのモデルだったが、非常に低速トルクがあって乗りやすかったという記憶がある。これならVTECはいらないと思ったことは覚えているが、その他は特に印象に残っていない。特別どこが悪いとも思わなかったが、非常に普通の車だった。
HR-Vは結果的に不本意な終わりを迎えたと言えるだろうが、8年後にヴェゼルとして復活。SUV販売のトップにもなったのだから、後世になって評価される車と言っていいのではないだろうか。