【ショートショート】自分との闘い
スタートラインに沿って両手を付き、一列に並んだ選手たちは、彫刻のように動きを止める。大歓声が渦巻くスタジアムに訪れる一瞬の静寂。
号砲が鳴り響いた刹那、二発目のピストルが音を鳴らした。
フライング。
隣のレーンの男は、すごすごとその場を去った。
8人が7人となり、仕切り直し。
再び会場に静寂が訪れる。
緊張感の中で肉体が爆発するのをじっと待つ。
しかし、またフライング。
その次もまたフライング。
その次も。
ひとり、またひとりと姿を消し、
とうとうぼくがたったひとり、
スタートラインに立っている。
読んでくださりありがとうございました。頂いたサポートは、一円も無駄にせず使わせていただきます。