ハイイールド債とレバレッジドローンとCLOについて調べてみた
前回の学習会より
他方で、リーマン・ショック以降の金融市場に生じた大きな変化として、ハイイールド債(低格付け・高利回りの債権)やレバレッジドローンと呼ばれる信用力の低い企業への融資、それを原資とした金融商品であるCLO(ローン担保証券)などの高リスク資産が急拡大した。IMF(国際通貨基金)は、これらの高リスク資産が過去10年間で9兆㌦近くに倍増したと発表し、米FRB(連邦準備制度理事会)や日本の金融庁も「金融安定性への脅威だ」と警告を発している。
CLOの原資となるレバレッジドローンは、リーマン・ショックの原因となったサブプライムローン(低所得者向け住宅融資)の企業向けローン版ともいえるが、借り手となる企業は幅広い業種にまたがるためリスクは分散されているといわれる。だが、コロナ下で企業破綻が広範囲に広がれば巨額のデフォルト(債務不履行)が発生する。すでにアメリカでは昨年の連邦破産法の申請件数は7128件と前年比29%増、負債総額5千万㌦以上の大型倒産も相次いでいる。日本の金融機関も大量にCLOを購入しており、今後の展開次第では巨額の損失を出すことになる。
ハイイールド債、レバレッジドローン、CLOといったよくわからない単語があったので調べてみた。
ハイイールド債って何?
2018年の債券市場時価総額は世界全体で約100兆ドルほど。米国が40%、欧州連合(EU)が約20%、日本が約10%程度のシェア。
アメリカのハイイールド債は、1兆ドルくらいの規模らしい。
ハイイールド債は、投資不適格とされた社債のこと。以前はジャンク債と呼ばれていた。
社債を発行する際、企業は格付け機関に格付けを依頼する。すると、AAAとかBとかいったような格付けをくれる。以前は、投資適格とされた社債しか発行されていなかった(当たり前といえば当たり前)。だが、80年代にアメリカでミルケンがジャンク債の市場を作り出し、急成長する。格付け機関の調査は過去ばかり見ている点で間違っている、経営陣の正確や業界全体の将来性などをきちんと分析したなら、もっとましな結果が出るはずだ、という理屈らしい。
ちなみに日本ではまだ市場として育っていない。最近、アイフルがハイイールド債を発行したのが第一号。
投資不適格なので、優良企業よりも利回りが高くなる。だいたい5%~6%程度あるようだ。優良企業になると、利回りが0%、ひどいとマイナス金利になったりする。なので需要が高まっているのだろう。
レバレッジドローンとCLO
企業が資金調達する方法として、市場を利用する方法以外に、銀行から借り入れる方法もある。これがレバレッジドローン。
信用度の低い企業に対して、銀行が融資する。ただ、一行だけで行うと怖いので、銀行団(シンジケート)を組んで共同融資する。
ただ、それでも銀行は貸し倒れが怖いので、さらにリスクを分散する。そこで、ローンの一部を証券化して分散する。これがローン担保証券(Collateralized Loan Obligation)で、略してCLO。複数のローンを束ねたものになっている。これは現在1.2兆ドル分程度出回っているようだ。
サブプライムローンの仕組みおさらい
CLOはサブプライムローンと似た仕組みだと一般に指摘されている。そこで、まずサブプライムローンがどのような仕組みだったかをおさらいしてみよう。
住宅ローンは市場規模としてはかなり大きい。例えば現在の日本だと住宅ローン残高は200兆円くらい、アメリカだと15兆ドルくらいある。
ただ、住宅ローンを投資対象として扱うには、「個別で扱うには額が小さすぎる」「信頼できるかの確認が一々必要」「一括返済の可能性もありしかもそのタイミングが読めない」などの欠点がある。このため、各地域に小さい金融機関が林立し、それぞれが貸し出すという形態になっていた。これを乗り越える手法として、80年代に投資銀行が開発したのが、
・住宅ローンを集めて一つに束ねる
・束ねたものを証券化する
という手法である。
住宅ローンを多数集め、それを一つのプールとして扱う。これにより、個々のリスクが均一化され、安定した一つの対象として扱うことが可能になる。そのうちの一部はいきなり一括返済をするかもしれない。もしかしたら一部はデフォルトするかもしれない。だが、全体が一度にそのようなことを起こすことはないだろう。
こうして均質化したものを、証券として切り分けて販売する。さらに、この切り分けの際にランクわけをする。最上位は優先的に返済されるが、それだけ利率が低い。逆に下位は最後に返済されるが、それだけ利率が高い、というように。こうして高ランクの証券を作り、それを格付け機関にAAAと判定させれば、手堅い金融機関でも手を出しやすくなる。
安定的な投資先を求める金融機関が、利回りを求めてこの最上位に飛びつき、需要が増大する。やがて既存の住宅ローンだけでは足りなくなり、今まで貸さなかった層にも住宅ローンを提供(2級という意味のサブプライムローン)するように。後になると規律が緩んで、審査はザルになり、返すことができないと分かっていて貸すなど詐欺的なものになっていく。
どんどん住宅の値段が上がる状態だとこれでも回るが、やがて住宅バブルが崩壊。ローンを返せない人が続出し、債権を買っていた金融機関も大損してリーマンショックにつながるという流れだった。
CLOとサブプライムローンの比較
対象が個人ではなく、信用度の低い企業という点が違いで、後はよく似ている。プールを作って均質化したあと、それをランク分けして売るというモデルも同じだ。
リーマンショック時のサブプライムローンの市場規模は1.3兆ドルで、CLOの市場規模も1.2兆ドルほど。この点も似ている。
サブプライムローンの場合、モラルハザードが起こったのがまずかった。「プールを作って証券化する」という仕組み自体は別に悪いものではないのだが、金余りという状況によってそれが詐欺的なものに変化してしまった。
それと比較するなら、ここで金を借りている企業が真っ当な目的で借りているうちはまだ大丈夫だが、バブルが崩壊したらその時点で潰れるようなゾンビ企業ばかりだったらまずい、ということになるだろうか。
日本とCLOの関係
CLOの三分の一は日本が買っているらしい。
一番多く購入しているのは農林中央金庫。総資産は105兆5千億円で、そのうち市場運用資産残高は62兆2千億円。CLO(ローン担保証券)残高は2020年9月末時点で7.5兆円。
次に買っているのがゆうちょ。運用資産総額218兆9000億円のうち、国債24.1%、地方債・社債等16.2%、外国証券等32.0%。2020年3月末時点でCLOを1兆7673億円(取得原価ベース)保有とのこと。