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再生可能エネルギーについて調べてみた

■概観

2012年、日本で再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)がはじまる。
2019年時点で、日本で発電しているエネルギーのうち、再エネは合計で18.5%。水力7.4%、太陽光7.4%、バイオマス2.7%、風力0.76%、地熱0.24%となっている。
再エネの割合は欧州が高く、ドイツ、イタリア、イギリス、スペインは4割程度。デンマーク、オーストリアは8割前後となっている。

・太陽光発電

導入量は約5600万kW。中国、アメリカに次ぐ世界第三位。FITがはじまる前に比べ、10倍になっている。
パネルを置くだけなので、他の再エネに比べれば参入が容易。ただ、風力発電などに効率性では劣るので、再エネ支援がこればかりに注がれても、という感じのようだ。
また、太陽光パネルを作成している企業が海外(特に中国)にしかないため、産業育成という観点でもあまりうまみはない。

・風力発電

導入量は約400万kW。
日本では東北と北海道が風況がよい適地。都市に近い東北に集中して設置されている。
風車製造でシェアを握っているのは海外の企業だが、太陽光よりはまだ入り込む余地があるかな?という印象。洋上風力発電は発展途上なので、日本勢が生き残る可能性はありそうだ。
現在、政府が注力しているのが洋上風力発電だ。2020年12月25日に政府が発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、2030年までに1000万kW、2040年までに3000万~4500万kWの洋上風力発電を設立することが発表された。原発1基で100万kW程度なので、現存するすべての原発に置き換わるくらいの規模。

・地熱発電

日本はアメリカ、インドネシアについで世界第三位の埋蔵量を持つ。さらに、地熱発電用タービンでの世界シェアで日本は7割を握る。日本にとって理想的な電源に見える。
普及していない理由はいくつかある。

・地熱発電の適地が大抵国立公園に指定されていて、勝手に開発できない
・資源の調査コストが高い
・建設コストが高い
・地元の温泉事業者から反対される

開発許可をとって、地元の人を説得して、地質調査をして、というように開発に時間とコストがかかる。国からの支援もあまりなく、結果開発が進んでいないようだ。
長期的視野でみれば理想だが、○○年までに再エネ比率をこれだけ上げるという観点で見た場合、不確実性が大きくて重点を置きにくそうだ。

・バイオマス

FITにおいて、再生可能エネルギーのなかでも比較的高めの買取価格だったため、新規事業者が増大する。ただし、輸入した木材等を燃料にする等、本来の意図とはズレたものになっているようだ。
バイオマスが含む範囲は幅広く、木くずを燃やして発電すると同時に水素も製造するブルータワー、藻によって下水を処理し、さらにはエネルギーも採取する方法等、ロマンがあるものもあったりする。

■電力自由化

再生可能エネルギーの普及においては、技術的な問題よりも、電力の制度上、構造上の問題が大きい。いろいろと改革がなされているが、まだ試行錯誤の段階にある。
従来は、地域ごとに、発電、送配電、小売まで一括で一つの会社で行う、という体制だった。これだと、再エネの普及は実現しにくい。電力会社に新規事業を行おうというモチベーションが生じないからだ。そこで、新規参入をはかるため、この体制が解体される。

新規参入を促すため、以下の対策が行われた。

・固定価格買取制度(FIT):新規事業者は、初期には採算が取れない可能性が高い。そこで、固定価格買取制度を設ける。例えば20年間、市場価格よりも高いこれだけの価格で買い取りますよ、と約束することで新規参入を促す。
・送配電分離:新規事業者は、既存のインフラに接続して電力を販売することになる。このとき、既存事業者の垂直統合体制が残っていると、同じグループ企業に便宜をはかる可能性がある。そこで、既存事業者からの送配電部門分離を行う。
・取引市場の整備:既存事業者と異なり、新規事業者は相対取引をする相手を持っていない。そこで、小売と発電所をつなぐ取引所を整備し、参入を促す。

■取引市場と送電の仕組み

発電所は、基幹となる送電線に接続し、それを通して電気を各地に送るという仕組みになっている。
どの発電所がどれだけ発電するか、その電気をどこに送るかは取引市場で決まる。「うちはこれだけ必要だ」という小売と、「うちはこれだけ発電する」という発電所が取引所に集まる。風力発電や太陽光発電の場合、発電量が天候に左右されるが、それは市場を「前日市場」「当日市場」と分けることで調整できる。「これくらいは最低いけるだろ」と思っただけの電気を前日市場で売っておき、当日になってどれだけ作れるか正確にわかったら、その分を当日市場で売ればいい。
送電は、インフラを握る送配電会社が責任を持って行う。電気を送る段階になって、発電所が「うちはこれだけ発電します!」と言ってそれ以下しか供給できなかった場合は、送電会社が他の発電所に要請して調整する。約束を守れなかった発電所は、後で罰金(インバランス料金)を支払うことになる。発電所はインバランス料金の支払いを避けるため、きちんと発電しようとするわけだ。

■課題

・系統連系問題

自由化が始まったのは最近で、歴史としてはまだかなり浅い。システムとしてはまだ未完成で、度々問題が生じてニュースになっている。

その一つが系統連系問題だ。発電所を作っても、基幹の送電線につながないと意味がない。だが、送電線に空き容量がないと言われ、新規事業者が接続できない事態が生じている。
接続する発電所が最大出力で発電することを想定して、容量は設定されている。この接続枠は先着順になっている。容量オーバーすると、枠に入り込めなかった運の悪い事業者は、数億円の費用を支払って増強しないと接続できない。さらには増強まで数年間待たされることになる。さらに、増強後に申請した事業者は、枠にあまりがあれば増強費用を払わなくても接続できる。
接続する風力発電や太陽光発電がすべて同時に最大出力になる事態は考えにくい、最大出力で計算するのは不合理だといった批判、稼働していない原発の枠を維持して再エネが新規に接続できないのはおかしいといった批判、たまたま容量オーバー時に登録申請した事業者が費用をすべて負担するのは不公平だといった批判が出ているようだ。
この仕組みは、一つの発電所が常に一定の発電をし、かつ発電所を運営する会社が一つしかない場合であれば問題にならない。古い体制においては妥当だった制度が、そのままになっていることで生じている問題ではないかと思う。

・蓄電池・バックアップ電源は必要か?

再エネの出力が一定ではないことから、蓄電池や、バックアップ電源(火力発電)が必要性だという意見がしばしば出る。
実際は、再エネの出力が一定でないことは運用でカバーできる。
取引市場においては、燃料費がゼロの太陽光と風力から売れていく。天候により、太陽光と風力の供給が多ければ、電力の値段はそれだけ下がることになる。再エネ以外の発電所はその様子を見て、燃料代に見合わないなと思ったら出力を抑えるだろう。逆に、天候不順で再エネの供給が少なく、電力の値段が上がれば、その様子を見た再エネ以外の発電所は燃料を使って発電をし、電力を取引市場で売るだろう。
最終的な調整は送電会社が行うことになるが、発電を要請する先が火力発電である必然性はない。デンマークでは、送電会社が各地にあるコジェネレーションに直接指令を送って発電したりしているようだ。

再エネと蓄電池をセットにしたり、火力発電を主、再エネを従とするバックアップ電源の思考は、従来の垂直統合システムに縛られた思考に見える。一つの地域に電力会社が一社のみ存在し、統括部署が個々の発電所に「君たちはこれだけ発電してね」と割り振る中央集権的なやり方なら、このやり方は妥当だろう。だが、発電所が多数存在して自由化しているのなら、調整は市場で行えばいいのであり、一つの事業者が常に均一の電力を供給する合理性はない。

・新電力の淘汰

電力の小売は2016年に全面自由化した。電力市場全体の規模は15兆円。このうち家庭が使う低圧部門は8兆円。コンビニ(市場規模10兆円)と同規模の市場がいきなり開放されたことになる。色々な分野が参入し、現在新電力は700社ほどある。新電力は、販売電力量の2割弱を占めている。
1月の電力逼迫で、電力の調達価格が急騰。経営が悪化した新電力が、3月にバタバタと倒れるのではないかという予測があり、最近話題になっていた。

■参考

植田 和弘 (編集), 山家 公雄 (編集)『再生可能エネルギー政策の国際比較: 日本の変革のために』

大下英治 『自然エネルギー革命 脱原発へのシナリオ』


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