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読書難民、SF小説と出会う

2023年のこと

とにかく本が好き!!!
と言う人間の話ではありません。

こんにちは、私は面白い本なら好き、という人間です。

今まで何冊かの面白い本に、当然出会うことがありました。
小学生の時に夢水清志郎、また7冊もある『モンテ・クリスト伯』も。
シャーロック・ホームズは絶対に新潮社の延原謙さんの訳が好きで、
上橋菜穂子さんの小説は必ず買い、村上春樹も結構好きです。
それ以外にも細々と印象深い小説はあります。
しかしながら年々、ストーリーの類型が自分の中に形成されていくのに従ってか、そんな本に出会うことも減ってきています。

振り返ると、私にとって面白い本の定義はとても難しく、
「ストーリーよりも文脈や表現にこだわったものを読みたい」
という気持ちはあるものの、それだけに止まらない驚きを欲してしまいます。
したがって、読んでみないと自分にとって価値があるかどうかの判断ができず、
店頭や書評、受賞作品などで選んでみても、好みではない本を手にとってしまうことが非常に多かったのです。
選書は本当に難しい・・・!
私にとって好みではなかった本が、部屋に山積していくのは気分の良いものではありません。

2022年の暮れのある日、書店の店頭に『インスマンスの影』が平置きされているのを発見しました。
ゲーム『女神転生』や『ペルソナ』シリーズによって知ったクトゥルフ神話の原作を、一度は読んでみたいとAmazonカートに入れていたのを思い出しました。
また同時に、「こんな本が平置きされてるなんて・・・!」とワクワクし、すぐさま購入して読み始めます。
そしていざ読み始めると、クトゥルフといえばといったおぞましい奇々怪々な現象よりも、会話文が恐ろしいほど出てこない異常な文体に感動したのです。

それから2023年初頭に、父から『月は無慈悲な夜の女王』(The Moon is α Harsh Mistress)を借りたことをきっかけに、いくつかSF小説を購入しました。
そのうちの1つがハーラン・エリスンの『世界の中心で愛を叫んだけもの』(The Beast that Shouted Love αt the Heart of the World)でした。

今までに読んだことのない本、いや文章でした。
そして、「こんなことを今私たちがすでに獲得してきた言葉で表現することができるのか」という衝撃そのものでした。
私たちは3次元の生き物で、理論上どう考えても5次元や6次元は想像することすらできない、それはいわば私たちの持つあらゆる概念をあてがうことすらできないはずの世界の話を、この小説ではしている・・・そして実際理解できないほどの世界を書いているのです。

この小説に出会ったことで、私の中で小説・本への見方が大きく変わりました。
私たちが身近に日々扱う言葉という、単純そうな道具の組み合わせで、これほどまで果てしない先に行ける、そんな世界を感じました。
人間の想像力そのものであり、その限界の1つを垣間見たと思ったのです。
そしてさらにその向こうがあるのではないか、と。

2023年はそれからいくつかのSF小説を読み、
中でも『ストーカー』(Пикник на обочине)と『第六ポンプ』(Pump Six and Other Stories)、『タイタン』をとても気に入りました。
『ストーカー』もゲームで有名ですし、ご存知の方は多いと思います。
もっと早く読めば良かったと、後悔するほどでした。
アイディアの結晶のような『第六ポンプ』は年中無休で店頭に平置きしたいです。
またディストピア作品が全体的に多い中で、ここまでありそうなユートピアの『タイタン』も印象的でした。
ただしSFの世界では、私たちにとって一見ディストピアなだけで、その世界の登場キャラにはユートピアなのかもしれませんけど・・・。


SF小説だからといって、どれもこれもが良かったわけではありません。
「まあ面白いけど」という本も何冊もありましたが、それでも「合わないな」というほどではありませんでした。
2023年を通して読んでいた結果、SF小説というのは文章表現の凄さを感じさせてくれ、そして想像力の限界に挑戦しているという点で、面白いものを発見しやすいジャンルなのではないかと感じています。
しばらくSF小説を読むことになりそうで、そういう点で2023年はとても嬉しい気づきのある年でした。


(父からハインラインを借りているし、父はこないだ『人間以上』を読んでたし、
2013年にフィリップ・K・ディックの『高い城の男』をあらすじで見て買ったまま積んでいたので、
来るべくしてこのカテゴリーに来たんだなという感じもしないでもない。)

中学生の時、初めての地学の授業で絶望しました。
宇宙の話を聞いたのです。
そんな私にぜひ『世界の中心で愛を叫んだけもの』の序文を送りたいです。


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