堪えてなじむぞおまんじゅう
うちには産まれて4ヶ月になる娘がいる。新しいことが出来るようになったり、初めての体験に泣いたり目を輝かせたり手を伸ばしたりする姿は、むちゃくちゃ愛おしい。
純粋な好奇心のままに生きる、小さな瞳のなんとまぶしいことか。あと、フォルムがむちゃくちゃカワイイので、ぼくは彼女の一挙手一投足によって顔面が破壊されっぱなしである。
娘の挙動に「かわいいねぇ」「すごいねぇ」「えらいねぇ」とか言ってるうちは良いほうで、最近のぼくは「えへへへへ」とか言ってにやにやしているだけの存在になっていることが多い。
娘はこの先どんどん聡明になっていくとしたら、引き換えにぼくはどんどんあほみたいになっていくんだろうか。
ぼくももう良い年齢になって自分の新しい可能性のカードもとっくに尽きて、今ある手札でのらりくらりと生きていくんだろうなぁとか思うこともあるけど、どんどんあほみたいになっていくとは思っていなかった。自分のデッキに「いひひひひ」と言いながらにやにやするというカードがあったとは。
子どもが破壊するのは、ぼくの表情やハートだけではなかった。自分の知ってる自分が日々、爆散していく。
そしてもちろん、彼女自身の可能性も日々、切り開かれてゆく。
先日、ベビーカーデビューをしたのだけど、座らせるやいなや、娘の中のなんらかのリミットがブレイクし、最大出力の号泣を街に響かせて終わった。
でも、座面のクッションの具合や角度、日差しのあたり加減とかを試行錯誤して後日リベンジしたら、今度は泣かなかった。終始、真顔! 笑顔では決して無く!
何か落ち着かないのか常にどっか掴んでいた。
とはいえ、初日のマックス拒絶から考えると大きすぎる進歩であり、娘の順応力と慣れるまでぐっと何かを掴んでしのぐいじらしさに、ぼくは「えへへへ」のカードをいっぱい切った。
さらに後日だ。
泣かなかったとはいえ、どうにも薄氷めいて思える娘の感情をそのままにお出掛けしてなるものか。我々夫婦は試行錯誤をやめなかった。主に奥さんがネットサーフィンして、ナイスなアイテムを発見してくれた。
それは、ベビーカーの座面にセットする保冷剤入りのパッドである。
さっそく導入して、おでかけしてみた。
最近つづく夏日。外にいる時間が長引くほど体感温度は上がり、不快指数は増していく。
平時なら、娘の顔はカワイイもちぷよおまんじゅうから始まり、次第に達磨めいた意匠の堅焼きぬれせんべいへ変じてゆくところだが、今回は保冷剤というソリューションが見事にストレスをヒーリングエスカレーションしてくれた。
最初は、変わる景色やベビーカーの幌とかを興味深げに眺め、しだいにまぶたは下がり、いつしか、Good Sleep...
背中の冷えすぎも心配だったけど、途中奥さんが商業施設の授乳スペースでだっこしたところ、ちょうど良いぬくもりだったそうだ。娘は、そのまま帰宅まで快適な旅となった様子で、ときおり笑顔すらみせた。
やったぜ!!
やったぜ、という話でした。