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Newton力学⑦ 運動方程式を解く

前回の記事はこちら↓

必要な前提知識はこちら↓
・極限と微分,積分
・微分方程式(準備中……)

Newton力学の7回目です。
今回はひたすら運動方程式を解くだけの回です。


重力中の運動

重力$${\boldsymbol{F}=m\boldsymbol{g}}$$を受けているとき,運動方程式は,$${m\ddot{\boldsymbol{r}}(t)=m\boldsymbol{g}}$$です。初め原点にあった物体が重力を受けて運動するとき,重力の方向を$${y}$$軸の負の向きに,物体の初速度の向きを$${xy}$$平面内にとる($${\boldsymbol{v}(t=0)=\left(v_x,\ v_y,\ 0\right)^\mathrm{T}}$$とする)と,

$$
m\begin{pmatrix}\ddot{x}(t)\\\ddot{y}(t)\\\ddot{z}(t)\end{pmatrix}=m\begin{pmatrix}0\\-g\\0\end{pmatrix}
$$

ですから,

$$
\begin{pmatrix}\dot{x}(t)\\\dot{y}(t)\\\dot{z}(t)\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}v_x\\v_y-gt\\0\end{pmatrix}
\\\Leftrightarrow\begin{pmatrix}x(t)\\y(t)\\z(t)\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}v_xt\\v_yt-\dfrac{1}{2}gt^2\\0\end{pmatrix}
$$

$${\left(v_x,\ v_y\right)}$$の値の組によって,以下のように分類されます。

自由落下

$${v_x=v_y=0}$$のとき。一定の加速度で加速しながら真下に落ちていくだけ。

鉛直投射

$${v_x=0,\ v_y\ne0}$$のとき。$${v_y>0}$$のときを特に鉛直上方投射[鉛直投げ上げ],$${v_y<0}$$のときを鉛直下方投射[鉛直投げ下ろし]といいます。
鉛直上方投射は減速しながら上がっていき,一旦静止し,加速しながら落下するという運動で,鉛直下方投射は,最初から下向きに落ちているので,「ズドン」と落ちていく運動です。

水平投射

$${v_x\ne0,\ v_y=0}$$のとき。真横に飛び出した物体が重力を受けて下に落ちていく運動です。横向きには力がかかっていないので,$${x}$$軸方向には等速運動をしています。

斜方投射

$${v_x\ne0,\ v_y\ne0}$$のとき。物体の軌跡は一見複雑そうですが,$${y=\dfrac{v_y}{v_x}x-\dfrac{g}{2{v_x}^2}x^2}$$なので,放物線を描きます(余談ですが,体を斜方投射でり投げたときの軌跡となるなので,”放物線”といいます)。
より一般には,打ち出す速さ$${v}$$と打ち出す方向の水平面からの角度$${\theta}$$を使って,

$$
y=x\tan{\theta}-\dfrac{g}{2v^2\cos^2{\theta}}x^2=-\dfrac{g}{2v^2\cos^2{\theta}}\left(x-\dfrac{v^2\sin{\theta}\cos{\theta}}{g}\right)^2+\dfrac{v^2\sin^2{\theta}}{2g}=-\dfrac{g}{v^2(1+\cos{2\theta})}\left(x-\dfrac{v^2\sin{2\theta}}{2g}\right)+\dfrac{v^2(1-\sin{2\theta})}{4g}
$$

よく,ボール投げで記録を出すには45度で投げるといい,といわれますが,その理由もこの式にあります。この式の$${x}$$切片は$${x=0,\ \dfrac{v^2\sin{2\theta}}{g}}$$なので,着地点が一番遠くなるのは$${\theta=\dfrac{\pi}{4}}$$,すなわち45度のときです。

復元力中の運動

復元力は$${\boldsymbol{F}=-k\boldsymbol{r}}$$と表される力でした。

回転運動と単振動

今回は特に,$${\boldsymbol{F}=-kx\boldsymbol{e}_x-ky\boldsymbol{e}_y}$$のときの運動について見ていきましょう(初期位置,初速度は重力中の運動と同じとします)。

$$
m\begin{pmatrix}\ddot{x}\\\ddot{y}\\\ddot{z}\end{pmatrix}=-k\begin{pmatrix}x\\y\\0\end{pmatrix}\\\Leftrightarrow\begin{pmatrix}\dot{x}\\\dot{y}\\\dot{z}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}v_x\cos{\omega t}+u_x\sin{\omega t}\\v_y\cos{\omega t}+u_y\sin{\omega t}\\0\end{pmatrix}\ \left(\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}},\ u_x,\ u_y\text{は今のところ任意}\right)\\\Leftrightarrow\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\dfrac{v_x}{\omega}\sin{\omega t}\\\\\dfrac{v_y}{\omega}\sin{\omega t}\\\\0\end{pmatrix}\ \left(\text{初期位置が原点なので,}u_x=u_y=0\right)
$$

これは回転運動ですね。

$${\boldsymbol{F}=-kx\boldsymbol{e}_x,\ \dot{y}(t=0)=0}$$に変えると,

$$
m\begin{pmatrix}\ddot{x}\\\ddot{y}\\\ddot{z}\end{pmatrix}=-k\begin{pmatrix}x\\0\\0\end{pmatrix}\\\Leftrightarrow\begin{pmatrix}\dot{x}\\\dot{y}\\\dot{z}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}v_x\cos{\omega t}+u_x\sin{\omega t}\\0\\0\end{pmatrix}\ \left(\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}\right)\\\Leftrightarrow\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\dfrac{v_x}{\omega}\sin{\omega t}\\0\\0\end{pmatrix}
$$

このように$${\sin}$$や$${\cos}$$で書かれていて,$${x}$$軸上を行ったり来たりする運動は,”単振動”とよばれます。

初期条件を変えてみると,どうなるでしょうか。
単振動は1次元の運動なので,$${x}$$座標のみ考えてみます。
初期条件として,$${x(t=0)=x_0,\ \dot{x}(t=0)=v_0}$$が与えられたときの運動の様子を調べてみましょう。

$$
m\ddot{x}=-kx\\\Leftrightarrow \dot{x}=v_0\cos{\omega t}+u_0\sin{\omega t}\ \left(\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}\right)\\\Leftrightarrow x=x_0\cos{\omega t}+\dfrac{v_0}{\omega}\sin{\omega t}\ \left(\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}\right)\\\left(x=A\sin{(\omega t+\varphi)}\ \left(\text{振幅}A=\sqrt{{x_0}^2+\left(\dfrac{v_0}{\omega}\right)^2},\ \text{初期位相}\varphi=\sin^{-1}\left(\dfrac{v_0}{A\omega}\right)=\cos^{-1}\left(\dfrac{x}{A}\right)\right)\right)
$$

これで解ける問題ならいいのですが,変形の途中で$${\sin}$$と$${\cos}$$が入れ替わるので,項の数が増えてくると,計算ミスをしやすくなります。
そこで,”Euler (オイラー)の公式”の登場です。

$$
e^{i\theta}=\cos{\theta}+i\sin{\theta}
$$

見かけは淡白ですが,とても便利な公式です。
$${x}$$を複素数$${z=x+iy}$$に拡張して実部をとることにすれば,

$$
m\ddot{z}=-kz\\\Leftrightarrow x=\text{Re}\,z=\text{Re}\left(\mathcal{A}e^{i\omega t}+\mathcal{B}e^{-i\omega t}\right)\ \left(\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}\right)\\\Leftrightarrow\dot{x}=\text{Re}\left(i\mathcal{A}\omega e^{i\omega t}-i\mathcal{B}\omega e^{-i\omega t}\right)\ \left(\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}\right)
$$

この式に初期条件$${x(t=0)=x_0,\ \dot{x}(t=0)=v_0 }$$を代入して,

$$
\begin{cases}x_0=\text{Re}\left(\mathcal{A}+\mathcal{B}\right)\\v_0=\text{Re}\left(i\mathcal{A}\omega-i\mathcal{B}\omega\right)\end{cases}\\\Leftrightarrow\begin{cases}\mathcal{A}=\dfrac{x_0\omega-iv_0}{2\omega}\\\mathcal{B}=\dfrac{x_0\omega+iv_0}{2\omega}\end{cases}
$$

ゆえに,

$$
x=\text{Re}\left(\dfrac{x_0\omega-iv_0}{2\omega}e^{i\omega t}+\dfrac{x_0\omega+iv_0}{2\omega}e^{-i\omega t}\right)=x_0\cos{\omega t}+\dfrac{v_0}{\omega}\sin{\omega t}
$$

となって一致します。
ちなみに,$${\cos{\theta}=\dfrac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2},\ \sin{\theta}=\dfrac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i}}$$の関係からも,$${\exp}$$型の表記を導くことができます。

単振動は,波動力学のnoteでも出てきますが,今回1物体の場合を取り上げたのと違って,波動力学では複数の物体や連続体(切れ目のない物体)が振動する場合を扱います。

単振り子

重力を受けて揺れる振り子は,振り子の長さに比べて振れ幅が十分小さい場合に,単振動として扱うことができます(楕円積分という数学的な道具を使えば一般に解けますが,かなり大変です………)。これを単振り子といいます。
具体的には,振り子の長さを$${l}$$,重力加速度の大きさを$${g}$$,振り子のひもの質量を無視して,

$$
m\ddot{x}=-mg\sin{\theta}\approx-mg\theta=-\dfrac{mg}{l}x
$$

したがって$${k=\dfrac{mg}{l}}$$,すなわち$${\omega=\sqrt{\dfrac{g}{l}}}$$の振動をすると考えられます。このとき,重力加速度とひもの長さしか関係しないため,振り子はその振幅によらず一定の周期で振動します(単振り子の等時性)。

(発展)振り子の等時性はどこまで正しいか?

振り子が振幅によらず一定の周期で振動することは,Galileiによって発見されました。彼は脈拍を使って周期を測ったらしいですが,今回は実験することなく,理論的に考えてみましょう。
現実の世界では,空気抵抗(空気による摩擦のようなもの)などの非保存力を受けて運動するので,実際には,その分,エネルギーが減少して周期は遅くなりますが,今は非保存力を無視しましょう。
このとき,$${\sin{\theta}\approx\theta}$$の近似がどこまで正しいか,という問題になります。
誤差が5%くらいに収まると,かなり精度が高い(有効数字が2桁にできる)と思われますから,誤差が5%以内となるような$${\theta}$$の値を求めてみたいと思います。

MacLaurin展開より,

$$
\sin{\theta}=\theta-\dfrac{\theta^3}{6}+O(\theta^5)\approx\theta-\dfrac{\theta^3}{6}
$$

したがって,$${\dfrac{\theta^3}{6}\le\dfrac{\theta}{20}}$$となるような$${\theta}$$の範囲なので,$${\theta\le\dfrac{\sqrt{30}}{10}}$$。関数電卓で求めると31°ほどになりました。
十分現実的な数字ですね。

万有引力中の運動

この章は,Kepler(ケプラー)の三法則を証明する方針で書いています。
これは,万有引力,ひいては中心方向を向いた力[中心力]全般に適用できる,とても有用な法則です(Keplerの法則が適用できる運動を”Kepler運動”といいます)。

Keplerの三法則はもともと,Johannes Kepler (ヨハネス・ケプラー; 1571-1630)が唱えた,惑星の運行に関する三つの法則を意味します。
〔Ⅰ〕惑星は,太陽を焦点のひとつとする楕円軌道上を回転運動する(楕円軌道の法則)。
〔Ⅱ〕太陽と,あるひとつの惑星とを結ぶ線分が一定時間に描く図形の面積は,一定である(面積速度一定の法則)。

https://juken-mikata.net/how-to/physics/kepler-laws.htmlより。

式で書くと,$${\left\|\dfrac{1}{2}\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{v}\right\|=\text{const}}$$

〔Ⅲ〕惑星軌道の長半径$${a}$$と惑星の公転周期$${T}$$の間には,$${T^2\propto a^3}$$という関係が成り立つ(調和の法則)。

〔Ⅰ〕と〔Ⅱ〕は物理法則っぽいですが,〔Ⅲ〕だけ異質な気が………。
というのもごもっともで,調和の法則だけは,神秘学者Keplerとして,あとから発表した宗教色の強い法則だったんです。
が,これらは,我らがNewton先生によって証明されてしまいました。
どのような証明なのか,万有引力中での物体の運動,という観点から見ていきましょう。

万有引力は$${\boldsymbol{F}_{2\to1}=-G\dfrac{m_1m_2(\boldsymbol{r}_1-\boldsymbol{r}_2)}{\|\boldsymbol{r}_1-\boldsymbol{r}_2\|^3}=-G\dfrac{mM\boldsymbol{r}}{\|\boldsymbol{r}\|^3}}$$と表されます。
(ただし$${m=m_1,\ M=m_2,\ \boldsymbol{r}=\boldsymbol{r}_1-\boldsymbol{r}_2}$$,つまり物体2の位置を原点にとっています。物体2の質量が物体1の質量に比べて十分大きいとき,例えば物体1が惑星,物体2が太陽であるような今回の場合には,物体2は,ほとんど動きません。物体2の運動も考慮に入れるなら,慣性力を計算する必要があります。)

$$
m\begin{pmatrix}\ddot{x}\\\ddot{y}\\\ddot{z}\end{pmatrix}=-\dfrac{GmM}{\left(x^2+y^2+z^2\right)^{\frac{3}{2}}}\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}
$$

これが素直に解ければいいのですが……。
非線形微分方程式なので難しいです。

そこで,極座標を使います。$${z(t=0)=0}$$となる向きに$${z}$$軸をとれば,常に$${z}$$軸方向の加速度が0になるので,運動方程式は,単に2次元極座標系$${(r,\ \theta)}$$を使って表せそうです。

$$
m\begin{pmatrix}\ddot{x}\\\ddot{y}\end{pmatrix}=-\dfrac{GmM}{\left(x^2+y^2\right)^{\frac{3}{2}}}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}
$$

座標変換は覚えていますでしょうか?

省略されている,座標の基本ベクトルを含む表記では,

$$
m\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_x&\boldsymbol{e}_y\end{bmatrix}\begin{pmatrix}\ddot{x}\\\ddot{y}\end{pmatrix}=-\dfrac{GmM}{\left(x^2+y^2\right)^{\frac{3}{2}}}\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_x&\boldsymbol{e}_y\end{bmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}
$$

この基本ベクトルを$${\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_r&\boldsymbol{e}_\theta\end{bmatrix}}$$に変換するときには,変換行列を使って,

$$
\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_x&\boldsymbol{e}_y\end{bmatrix}=\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_r&\boldsymbol{e}_\theta\end{bmatrix}\begin{pmatrix}\cos{\theta}&\sin{\theta}\\-\sin{\theta}&\cos{\theta}\end{pmatrix}
$$

この置きかえを使うと,

$$
m\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_r&\boldsymbol{e}_\theta\end{bmatrix}\begin{pmatrix}\cos{\theta}&\sin{\theta}\\-\sin{\theta}&\cos{\theta}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}\ddot{(r\cos{\theta})}\\\ddot{(r\sin{\theta})}\end{pmatrix}=-\dfrac{GmM}{r^3}\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_r&\boldsymbol{e}_\theta\end{bmatrix}\begin{pmatrix}\cos{\theta}&\sin{\theta}\\-\sin{\theta}&\cos{\theta}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}r\cos{\theta}\\r\sin{\theta}\end{pmatrix}
\\\Leftrightarrow m\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_r&\boldsymbol{e}_\theta\end{bmatrix}\begin{pmatrix}\cos{\theta}&\sin{\theta}\\-\sin{\theta}&\cos{\theta}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}\ddot{r}\cos{\theta}-2\dot{r}\dot{\theta}\sin{\theta}-r{\dot{\theta}}^2\cos{\theta}-r\ddot{\theta}\sin{\theta}\\\ddot{r}\sin{\theta}+2\dot{r}\dot{\theta}\cos{\theta}-r{\dot{\theta}}^2\sin{\theta}+r\ddot{\theta}\cos{\theta}\end{pmatrix}=-\dfrac{GmM}{r^3}\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_r&\boldsymbol{e}_\theta\end{bmatrix}\begin{pmatrix}r\\0\end{pmatrix}
\\\Leftrightarrow m\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_r&\boldsymbol{e}_\theta\end{bmatrix}\begin{pmatrix}\ddot{r}-r{\dot{\theta}}^2\\2\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta}\end{pmatrix}=-\dfrac{GmM}{r^3}\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_r&\boldsymbol{e}_\theta\end{bmatrix}\begin{pmatrix}r\\0\end{pmatrix}\\
\Leftrightarrow m\begin{pmatrix}\ddot{r}-r{\dot{\theta}}^2\\\dfrac{1}{r}\dot{\left(r^2\dot{\theta}\right)}\end{pmatrix}=-\dfrac{GmM}{r^3}\begin{pmatrix}r\\0\end{pmatrix}
$$

ただし,最後の式では極座標の基本ベクトルを省略しています。
最後の結果は特に,一般化された形で,”極座標における運動方程式”とよばれます。

$$
m\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_r&\boldsymbol{e}_\theta\end{bmatrix}\begin{pmatrix}\ddot{r}-r{\dot{\theta}}^2\\\dfrac{1}{r}\dot{\left(r^2\dot{\theta}\right)}\end{pmatrix}=\begin{bmatrix}\boldsymbol{e}_r&\boldsymbol{e}_\theta\end{bmatrix}\begin{pmatrix}F_r\\F_\theta\end{pmatrix}
$$

さて,今回の運動方程式を見て,まず目につくのが,$${F_\theta=0}$$であることです。つまり,$${mr^2\dot{\theta}=\text{const}}$$。この定数を$${L}$$とおいておきます。

すると,$${\dot{\theta}=\dfrac{L}{mr^2}}$$なので,

$$
m\left[\ddot{r}-r{\left(\dfrac{L}{mr^2}\right)}^2\right]=-\dfrac{GmM}{r^2}\\
\Leftrightarrow \ddot{r}=\dfrac{L^2}{m^2r^3}-\dfrac{GM}{r^2}
$$

これでもまだ非線形です。が,軌道の形を求めるだけなら,この式を変形することで可能です。

$$
\ddot{r}=\dot{\left(\dot{r}\right)}=\dot{\left(\dot{\theta}\dfrac{\mathrm{d}r}{\mathrm{d}\theta}\right)}=\dot{\left(\dfrac{L}{mr^2}\dfrac{\mathrm{d}r}{\mathrm{d}\theta}\right)}=\dfrac{L}{m}\left(-\dfrac{2\dot{r}}{r^3}\dfrac{\mathrm{d}r}{\mathrm{d}\theta}+\dfrac{L}{mr^4}\dfrac{\mathrm{d}^2r}{{\mathrm{d}\theta}^2}\right)=\dfrac{L^2}{m^2r^5}\left[-2{\left(\dfrac{\mathrm{d}r}{\mathrm{d}\theta}\right)}^2+r\dfrac{\mathrm{d}^2r}{{\mathrm{d}\theta}^2}\right]=\dfrac{L^2}{m^2r^2}\dfrac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}\theta}\left(\dfrac{1}{r^2}\dfrac{\mathrm{d}r}{\mathrm{d}\theta}\right)
$$

ここで,

$$
\dfrac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}\theta}\left(\dfrac{1}{r^2}\dfrac{\mathrm{d}r}{\mathrm{d}\theta}\right)=-\dfrac{\mathrm{d}^2}{{\mathrm{d}\theta}^2}\left(\dfrac{1}{r}\right)
$$

だから,軌道方程式は,

$$
\dfrac{\mathrm{d}^2}{{\mathrm{d}\theta}^2}\left(\dfrac{1}{r}\right)=-\dfrac{1}{r}+\dfrac{Gm^2M}{L^2}
$$

ゆえに,

$$
\dfrac{1}{r}-\dfrac{Gm^2M}{L^2}=A\cos{(\theta-\varpi)}\\
\Leftrightarrow r=\dfrac{1}{\dfrac{Gm^2M}{L^2}+A\cos{(\theta-\varpi)}}\\
\Leftrightarrow r=\dfrac{(1-e^2)a}{1+e\cos{(\theta-\varpi)}}
$$

ただし,$${A,\ \varpi}$$は任意定数で,

$$
e=\dfrac{AL^2}{Gm^2M},\ a=\dfrac{L^2}{Gm^2M-AL^2}
$$

としています。

このような形で$${e,\ a}$$を定義したのには理由があります。

$${F(r,\ \theta)=0}$$の形で表される方程式を”極方程式”といいますが,たぶんどんな形なのか分かりにくいと思います。

そこで,極方程式を,Descartes座標の方程式に戻してしまいましょう。$${\theta-\varpi}$$の方向を$${x}$$軸にとると,

$$
r=\dfrac{(1-e^2)a}{1+e\cos{(\theta-\varpi)}}\\
\Leftrightarrow r+ex=(1-e^2)a\\
\Leftrightarrow r^2={\left[(1-e^2)a-ex\right]}^2\\
\Leftrightarrow x^2+y^2=e^2x^2-2(1-e^2)eax+\left[(1-e^2)a\right]^2\\
\Leftrightarrow (1-e^2)x^2+2(1-e^2)eax+y^2=\left[(1-e^2)a\right]^2\\
\Leftrightarrow (1-e^2){\left(x+ea\right)}^2-e^2a^2(1-e^2)+y^2={(1-e^2)}^2a^2\\
\Leftrightarrow \dfrac{{(x+ea)}^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{(1-e^2)a^2}=1
$$

したがって,$${e}$$の値によって,楕円(円を含む),放物線,双曲線のいずれかを表します(数学的には,$${e}$$のことを離心率とよびます)。
$${e=0}$$なら円,$${0<e<1}$$なら楕円(円を含まない),$${e=1}$$なら放物線,$${e>1}$$なら双曲線です。
どの軌道をとるか,すなわち$${e}$$がどんな値をとるかは,初期条件などの条件によって決まります。
惑星なら,周回軌道なので楕円,彗星なら,初速度によって楕円,放物線,双曲線のいずれもあり得ます。

楕円の場合には,$${a}$$が楕円の長半径になります。ちなみに短半径は$${\sqrt{1-e^2}a}$$です。

http://www.astronomy.orino.net/site/kataru/cosmology/physics/Keplers_laws/Kepler_Third_Law.htmlより。

天文学では,角度$${\varpi}$$のことを”近日点黄経”といいます。
したがって,今回の楕円は,「原点を中心とする長半径$${a}$$,離心率$${e}$$の楕円を,$${x}$$軸方向に$${-ea}$$だけ平行移動し,原点を中心に近日点黄経$${\varpi}$$だけ回転させたもの」です。もとの楕円の焦点は$${(\pm ea,\ 0)}$$にあるので,焦点の片方は原点に移ります。
ゆえに,太陽が焦点のひとつとなり,Keplerの第一法則が証明できました。

さて,次はKeplerの第二法則ですが,すでに示されています。
というのも,$${\dfrac{L}{2m}=\dfrac{1}{2}r^2\dot{\theta}}$$が面積速度の大きさを表しているからです。角度の変化が十分小さい範囲では,移動距離を三角形とみなすことができるので,底辺×高さ÷2で求まります。

………と言われても納得しがたいと思うので。
今まで通り直交座標を使って,別の証明をしてみます。
$${\boldsymbol{r}\times\boldsymbol{v}=(x\dot{y}-y\dot{x})\boldsymbol{e}_z}$$なので,面積速度は$${\dfrac{1}{2}(x\dot{y}-y\dot{x})}$$です。したがって,これが一定であることを示せばよいです。

$$
\boldsymbol{F}(\boldsymbol{r})=-G\dfrac{mM\boldsymbol{r}}{r^3}
$$

なので,

$$
\dfrac{F_x(\boldsymbol{r})}{x}=\dfrac{F_y(\boldsymbol{r})}{y}=-G\dfrac{mM}{r^3}
$$

したがって,

$$
\dfrac{\ddot{x}}{x}=\dfrac{\ddot{y}}{y}\left(=-\dfrac{GM}{r^3}\right)
$$

ゆえに$${x\ddot{y}-y\ddot{x}=0}$$であり,両辺を時間積分して,$${x\dot{y}-y\dot{x}=\text{const}}$$。
これで第二法則も証明完了です。

続いて第三法則ですね。

楕円の面積が,楕円の短半径を$${b}$$として$${\pi ab}$$であることから,

$$
T=\dfrac{\pi ab}{\frac{L}{2m}}=\dfrac{2\pi ma^2}{L}\sqrt{1-e^2}=2\pi a\sqrt{\dfrac{a}{GM}}\\
\therefore T^2=\dfrac{4\pi^2}{GM}a^3
$$

これでKeplerの三法則がすべて証明できました!

力学的エネルギーの保存則から運動の様子を調べる

単振動

復元力のみを受けて単振動している質点の運動を考える。
単振動におけるポテンシャルは,自然長を基準にとると,

$$
V=-\displaystyle\int_0^x(-k\tilde{x})\mathrm{d}\tilde{x}=\dfrac{k}{2}x^2
$$

ゆえに力学的エネルギー$${E}$$は,

$$
E=K+\dfrac{k}{2}x^2
$$

であるから,力学的エネルギーが保存することに注意し,初めに与えられた力学的エネルギーを$${E_0}$$とすると,運動エネルギー$${K}$$について,

$$
K=E_0-V\ge0\\
\therefore V\le E_0
$$

したがって,グラフに示した範囲を行ったり来たりするような周期振動を行うことが,力学的エネルギーの観点からも導けます。

グラフから単振動が見える………かも。

万有引力中

ポテンシャル$${V}$$は,無限遠点を基準にとると,

$$
V=-\displaystyle\int_\infty^{\boldsymbol{r}}\left(-G\dfrac{mM\boldsymbol{r}}{r^3}\right)\cdot\mathrm{d}\boldsymbol{s}=GmM\int_\infty^r\dfrac{\mathrm{d}\tilde{r}}{\tilde{r}^2}=\left[-G\dfrac{mM}{\tilde{r}}\right]_\infty^r=-G\dfrac{mM}{r}
$$

今までどおり力学的エネルギーを考えたいところですが,極座標における運動エネルギーの表示について,考え直す必要があります。なぜなら,ポテンシャルが$${r}$$の関数になっているからです。

$${{\dot{x}}^2+{\dot{y}}^2={\left(\dot{r}\cos{\theta}-r\dot{\theta}\sin{\theta}\right)}^2+{\left(\dot{r}\sin{\theta}+r\dot{\theta}\cos{\theta}\right)}^2={\dot{r}}^2+r^2{\dot{\theta}}^2}$$

なので,

$$
E=\dfrac{m}{2}{\dot{r}}^2+\dfrac{mr^2}{2}{\dot{\theta}}^2-G\dfrac{mM}{r}=\dfrac{m}{2}{\dot{r}}^2+\left(\dfrac{L^2}{2mr^2}-G\dfrac{mM}{r}\right)
$$

となり,$${E_0<0}$$のときは,グラフに示した範囲を行ったり来たりしながら,$${L=\text{const}}$$を満たすように$${\theta}$$も変化していくことが分かります(これが惑星の軌道)。
ちなみに$${E_0\ge0}$$のときは,通り過ぎていって帰ってきません。これが,彗星のうち,二度と太陽の近くに戻ってこないものの軌道です。$${E_0=0}$$のときは放物線,それ以外は双曲線になります。

このグラフは地球の万有引力ポテンシャルを示しているので,太陽-地球間の距離,r=1.5×10^11 [m]付近で最小値をとっている。

式の第2項と第3項は,合わせて”有効ポテンシャル”とよばれ,極座標におけるポテンシャルに対応します。
(注:動径方向の運動エネルギー,すなわち$${\dfrac{m}{2}{\dot{r}}^2}$$のみを運動エネルギーとみなしたときだけです。角度方向の運動エネルギーも考慮すると,Descartes座標系と同じポテンシャルです。)

運動方程式で解けない力

$${F=-\lambda^2 x^3}$$と表される力は,非線形方程式なので解くのが非常に難しいです(注:解けないとは言っていませんが,Jacobi(ヤコビ)の楕円関数という数学的な道具を駆使しないと解けません)。

そこで,ポテンシャルのグラフを描くことによって,運動の様子を調べてみようと思います。原点を基準にとると,

$$
V=-\displaystyle\int_0^x\left(-\lambda^2{\tilde{x}}^3\right)\mathrm{d}\tilde{x}=\left[\lambda^2{\tilde{x}}^4\right]_0^x=\lambda^2x^4
$$

したがって,グラフに示した範囲を行ったり来たりするような運動をします。

あれ,なんか雑になってきてない?
―………気のせい気のせい。

演習問題

問1
第5回の浮力と慣性力に関する映像(下に再掲)の中で,急発進すると,風船は,一旦は前に動くものの,後ろにも振れているように見える。どういう原理だろうか?それとも,これは勘違いだろうか?
[ヒント:力を受ける方向と,初期位置との関係を図に書いて考えてみると分かりやすいです。]

https://www.youtube.com/watch?v=y8mzDvpKzfY

問2 ((3)はチャレンジ問題です。)
復元力(ばねの弾性力)と重力を受けて,$${F=-ky-mg}$$という力で運動する質点がある。
(1) 運動方程式を解いて,質点の位置$${y}$$を時間$${t}$$の関数で表せ。
(2) ポテンシャルは,どうなっているか。
(3) [発展]もしも,弾性力と重力に加えて,速さに比例する空気抵抗$${F=-m\gamma\dot{y}}$$がかかっていたら,質点の位置$${y(t)}$$はどうなるだろうか?

答1
勘違いではありません。
物体にはたらく力と初期位置を,下に示します。

どうしても振り子に見えない人は,画像を回転させて,薄い色の風船が真下を向くようにしてみましょう。

すると,単振り子と同じように,最初に振幅が与えられた状態になっていたことが分かります。

答2
(1)
運動方程式$${m\ddot{y}=-ky-mg}$$を解くことになります。

[解法①]

$$
\ddot{\left(y+\dfrac{mg}{k}\right)}=-\dfrac{k}{m}\left(y+\dfrac{mg}{k}\right)\\\
\Leftrightarrow y+\dfrac{mg}{k}=A\sin{(\omega t+\varphi)}\ \left(\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}\right)\\
\therefore y=A\sin{(\omega t+\varphi)}-\dfrac{mg}{k}
$$

[解法②]
$${\ddot{y}+\dfrac{k}{m}y=-mg}$$の非斉次微分方程式。斉次方程式の一般解を求めてから,それに非斉次方程式の特殊解を加える。

$$
\ddot{y}+\dfrac{k}{m}y=0\\
\Leftrightarrow y=A\sin{(\omega t+\varphi)}
$$

非斉次方程式の特殊解として,言うまでもなく$${y=-\dfrac{mg}{k}}$$があるので,求める微分方程式の一般解は,

$$
y=A\sin{(\omega t+\varphi)}-\dfrac{mg}{k}
$$

(2)
ポテンシャルの基準の位置は任意なので,どこにとってもいいですが,今回は,ばねが自然長の位置(原点)と,つりあいの位置($${y=-\dfrac{mg}{k}}$$)の2パターンを取り上げます。
まずは原点の場合。

$$
V=-\displaystyle\int_0^y(-k\tilde{y}-mg)\mathrm{d}\tilde{y}=\left[\dfrac{k}{2}{\tilde{y}}^2+mg\tilde{y}\right]_0^y=\dfrac{k}{2}y^2+mgy
$$

なんとなく知っている形ですね!

次につりあいの位置の場合。

$$
V=-\displaystyle\int_{-\frac{mg}{k}}^y(-k\tilde{y}-mg)\mathrm{d}\tilde{y}=\left[\dfrac{k}{2}{\tilde{y}}^2+mg\tilde{y}\right]_{-\frac{mg}{k}}^y=\dfrac{k}{2}\left(y+\dfrac{mg}{k}\right)^2=\dfrac{k}{2}l^2\ (l\text{は,つりあいの位置を基準にした位置})
$$

こちらは,ばねのエネルギーだけ,というすっきりした形になりました。

(3)
$${m\ddot{y}+m\gamma\dot{y}+ky=-mg}$$。$${k=m\omega^2}$$とおくと,方程式自体はもう少し簡単に,$${\ddot{y}+\gamma\dot{y}+\omega^2y=-g}$$となる。
斉次方程式の解は,微分したものどうしが消しあうことから$${y=e^{\lambda t}}$$のような形をしていると考えられる。これを斉次方程式に放り込むと,

$$
\lambda^2 e^{\lambda t}+\gamma\lambda e^{\lambda t}+\omega^2e^{\lambda t}=0\\
\Leftrightarrow\lambda^2+\gamma\lambda+\omega^2=0\\
\Leftrightarrow\lambda=-\dfrac{\gamma}{2}\left[1\pm\sqrt{1-{\left(\dfrac{2\omega}{\gamma}\right)}^2}\right]=\lambda_1,\ \lambda_2
$$

重解をもつとき以外は,いま得られた二つの解の線形結合が斉次方程式の解となり,$${y=A e^{\lambda_1t}+Be^{\lambda_2t}}$$。
$${\lambda_1=\lambda_2}$$(重解)のときには,$${y=(A+Bt)e^{-\frac{\gamma}{2}t}}$$が解になる。

ちなみに,$${\lambda_1,\ \lambda_2}$$が虚数のとき,振幅が小さくなりながら振動する解なので”(狭義の)減衰振動”(または“不足減衰”),重解のときには,ぎりぎり振動しない解なので”臨界減衰”,異なる実数のときには,空気抵抗がはたらきすぎているという意味で”過減衰”といいます。
言葉からは分かりにくいかもしれませんが,過減衰は,空気抵抗で妨げられすぎて,これら三つのうちで一番遅く,つりあいの位置に戻ってくる運動です。

斉次方程式の一般解が求まったので,あとは非斉次方程式の特殊解だが,上と同様,$${y=-\dfrac{mg}{k}=-\dfrac{g}{\omega^2}}$$が解になっている。
したがって,

$$
y=\begin{cases}A e^{\lambda_1t}+Be^{\lambda_2t}-\dfrac{g}{\omega^2}&\text{for}\ \lambda_1\ne\lambda_2\\(A+Bt)e^{-\frac{\gamma}{2}t}-\dfrac{g}{\omega^2}&\text{for}\ \lambda_1=\lambda_2=-\dfrac{\gamma}{2}\end{cases}
$$

今日はここまでです!
いつもにも増して長かったですが,お読みいただきありがとうございました。

Newton力学編 目次
力学とは何か
位置の表し方
運動エネルギーと運動量
運動の三法則
種々の力
仕事と力積
⑦ 運動方程式を解く ←今ココ!
⑧ 回転運動
⑨ 剛体の運動
⑩ 反発係数
◼︎ 章末問題

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