映画「希望のかなた」〜ボチボチいこか
2017年 フィンランド
アキ・カウリスマキ監督作品
ピンチになって、もーあかんってなったとき、
誰かが手を差し伸べてくれる。
やったー!人生逆転!ってなるけど、またピンチ。
それでも人生なんとかなるんちゃう?
そんなことの繰り返しやで、
ボチボチいこか。
そんなことを、感じました。
............
検索してみると、
という邦画の中で、主人公のふたりが観る映画だそうで。
いわゆるアート系、サブカルと呼ばれる。
(映画の中で主人公たちが観る映画って、どうでもいいようだけど、かなり重要ですよね。
「ラ・ラ・ランド」の中の「理由なき反抗」とか。
作品の方向性を示すファクターになる。)
アキ監督作品は、好きな人はめちゃくちゃ好きだけど、退屈だと感じる人の方が多いでしょう。
「マッチ工場の少女」「コントラクトキラー」
など、独特のスタイル持ってる監督。
だいたい曇り空、スピード感がない、暗い、で、何が言いたいの?系。
私は、好きです、そういうの。
北欧は、マリメッコやIKEAによって、
おしゃれイメージが上がったけど、
アキ監督作品には、そんなオシャレ感全然ない。
ダサい服と古臭いインテリア。
逆にそういうの全部ひっくるめておしゃれとも言えます。
..........
この作品は、難民問題を扱ってる社会派なんだけど、
ガチガチの真面目映画でもない。
シリア内戦で家族を失い、命からがらヘルシンキに流れ着いたカーリド。
セールス稼業を廃業し、酒浸りの妻に別れを告げたヴィクストロム。
ヴィクストロムはギャブルで大儲けし、レストランを従業員ごと買い取る。
そこからが、なんだか変てこりん。
これは言葉で説明しにくい。
例えばこんなシーン。
●従業員がレストラン内で内緒で飼ってる犬を、
ヴィクストロムが捨ててこいと命じる。
ワンコ捨てられちゃうの?と思いきや、
めちゃ大事にされてるし。
●難民申請が叶わず、強制送還とネオナチから逃れるため、レストランのごみ置き場に身を隠しているカーリド。
彼を発見したヴィクストロムと殴り合い。
あらま大変と思いきや、
カーリドは、温かい食べ物と、偽造IDまで与えられ、住み込みで働くことになる。
従業員もヴィクストロムも、ぶっきらぼうで、一見冷たそうなのに、
なんやかんかで、優しいし、あったかい。
見ず知らずの難民になんでそこまで、、って思うくらい。
●売上回復のため、寿司を出すことにしたけれど、
どう見ても不味そうな、大量のわさびがのっかったにぎり。
それを文句も言わず食べて、礼儀正しく帰っていく
日本人ツアー観光客。
出てくる人たちがみんな無表情で、動きもあんまりなくて、でも、なぜだか、それが笑えるんですよね。
大笑いじゃなく、クスッ笑い。
爆笑できない三流コントみたいな。
そして、
そんな淡々とした芝居を下支えしている
音楽がめちゃくちゃいい。
ストリートのエレキおじさん
アコギ弾き語りおじさん
流しのハモニカおじさん
場末のバーで演奏する老齢のロックバンドマン
要所要所で登場する、おじさんたちが奏でる曲と歌が絶妙。
おじさんたちの、酸いも甘いも噛みしめたって感じの風貌も相まって、作品の要ともなっている。
上手い下手じゃない。
流行り廃り関係ない。
きれい汚い関係ない。
味があるってこういうの。
映画の中の音楽って、もしかしたら物語より大事かもしれないとさえ思います。