本当のワークライフバランスは自己効力感によって作られるのでは?という話
私はアメリカのシアトルに本社や支店のあるGoogle や Amazon などの中でも特にワークライフバランスが良いと言われているマイクロソフトに勤めている。本当にワークライフバランスはとても良いと思っているが、なぜこうなっているかの気づきを得たのでシェアしておきたい。このブログはマイクロソフトを代表するものではなく、単なる私の個人的感想であることをここに明確にしておきたい。
米国企業のワークライフバランス
米国のビックテックのワークライフバランスは平均でもとても良いのではと感じる。大体5時頃にはみんないなくなるし、4カ月に1度の当番制のサービシングループを除いて、土日に働くことは無い。(5年のなかで1度だけ協力者を募ったことはあったけど、それすら強制でもない)金曜とかもう4時頃になったら帰りモードになっている人も多い。
休暇は無制限であり、マネージャもメンバーが休暇を取ると嬉しそうである。また、自分が気に入っているのは、別に本人が働きたかったら働いてもなんも問題はないところだ。5時に「帰りなさい」と言われているわけではない。誰しも成果を上げたいので、私は5時の後も働いたり、土曜日を勉強もしくは、遅れを取り戻す日に個人的に設定したりしている。つまり、働こうと思ったら別によく、本人次第である。(ただ、土日に誰かを見かけることは非常~に少ない。ほぼ無いといっていい)我々は年棒制なので、9-5時で働かなければならないという概念は薄い。例えばマネージャのプラグナは毎日送り迎えがあるから、4時ー5時ぐらいは、一時的に抜けて、その後ちょっと仕事をして一日を終えてるけど、その分早く起きて、メールをさばいたりしている。本人次第だし、時間の管理はまかされてるので、誰も気にしない。
プラグナの行動
私のマネージャはプラグナというのだが、最近私のチームにメンバーが増えた。実は最近自分にはひそかな不安があって、One on One の時に彼女に聞いてみた。
「最近自分は、重要な部分かもしれんけど、担当部分が少ない。他の人は自分よりは多い。自分はもしかすると役立たずだからこうなってるか不安だ」
彼女は、「えー!そんなん全然思ってないよ!」とたぶん本心から言ってた感じだったので、じゃあなんでそうなってるの?と聞くと。
「この前のサーベイでワークライフバランス悪いってなってて、みんな辛そうだったから、改善してみんながハードワークしなくていいように人を雇って分散している最中だよ」
えー、マジで?とちょっとびっくりしてしまった。こんなことは日本にいるときには体験したことがなかった。確かに前期のサーベイでワークライフバランスが低いと出てたけど…ちゃんと覚えててお金かけてガチで実行してるんや!
サーベイの威力
マイクロソフトでは、シグナルと呼ばれるサーベイが定期的に実施される。自分のマネージャや職場環境に対するアンケートみたいなものだ。その時期になったらマネージャは「シグナルやってね!」とかめっちゃ言ってくる。恐らくマネージャの評価につながっているのではないだろうか。
さて、私のびっくりした理由なのだが、日本の皆さんは、こういうサーベイによって何かが本当に改善すると思っているだろうか?少なくとも私はそうではなかった。サーベイやっても集計されて発表される程度で、会社が知りたいんやったら協力はするけど何か変化が起こることは期待していなかった。
ところが、こちらでは違うのである。サーベイで、スコアが下がったりすると、それを皆の前でシェアをして、こういう対策をするといって、「本当にする」のだ。
めずらしくサーベイが悪化した時
少し前にあったプロダクトのリリースで、うちのチームには珍しく、忙しかった。このマイクロソフトに来て初めて、「誰か今週の土日にやってくれる人はいないか?」という話があって、私は協力した。それぐらい珍しく忙しかったのだ。
その結果、ワークライフバランスのサーベイは過去にないほど悪いものになった。自分からすると、それでもたった1回であり、「それぐらいこの職業ならあるよねー」という感覚だった。
ちょっと面白いことに、この手のサーベイに、このようなケースでは、こちらの人は忌憚なくコメントはネガティブフィードバックをする。(ポジティブもだけど)正直に低い点数をつける。
愚直なフィードバックに対する対応
日本だったら、おそらく、このようなケースでも、「それぐらいはこの職業をしてたらあることだから」とか、「仕事を効率化できる方法をみんなで考えてみよう」とかなるだけで、実際に人を増やしたりはしないだろう。他のみんながつらいと思っていることを、プラグナは本当に改善してくる。今回だけではなく、自分たちで出来る小さなことだけではなく、みんながつらいとレポートしたことを改善するために、実際にその部分をやる人を雇ったりしてくれた。
自己効力感
チームのメンバーが、正直にサーベイに評価をして、具体的なコメントを書くのは、サーベイを書くと、それが改善されるという「自己効力感」があるからじゃないだろうか?
私は日本にいるときには選挙に行かなかった。選挙権を得て最初の頃はいっていたが、そのうちいかなくなった。なぜなら、どこに投票してもあまりかわらんから時間の無駄と思ったのだ。
それと同じで会社のサーベィとか真面目に答えても、どうせあんまり変わらないし期待しないから、コメントは少なく、適当に点数をつける程度で、先方に悪いからあまり悪い点数はつけないみたいな感じだった。
ワークライフバランス改善のループ
メンバーがサーベイに対して効力感を感じるから正直なフィードバックをして、マネージャが本当にその結果に対してコミットして改善する。きっとこれはトップマネージメントも変わらないのだろう。給料が競合に比べて高くないというサーベイになった時、ある年に給料を実際に上げてニュースにもなっていた。そんなん叶うと思うはずないよなぁ。これも本当にびっくりした。
職場や企業によって、何がワークライフバランスの悪さにつながっているのかはきっと別だと思うので、ワークライフバランスを本当に改善したければ、このように、フィードバックを得るー>実際に本気で改善する のサイクルを回すのが必要なのではないだろうか。しかも、現場でちょろちょろというレベルではなく、それが重要だと認識して、予算とって、ガチでやってるのではないだろうか?
本気でやることの意義
その背景には、きっとワークライブバランスを良くして、優秀な人に来てもらいたいというのがあると思う。働いている側も、マネジメント側の本気のコミットを感じて本当にありがたいなぁと思う。「お金払うの無理やけど、現場でええ感じでやってね。よろしく」では何も変わらないのかもしれない。このワークライフバランスに関する部分は、毎年変わっていく。つまり毎年少しづつ改善されつづけている。こういったお金すらかけて、本気で毎年改善していくから、このレベルのワークライフバランスが達成されているのではないだろうか。
ちなみに今珍しく日本にいて、AI で著名な今井翔太さんと対談させてもらえることになりました。リモートではなく、実際に会場に私も今井さんも来る書店イベントなので、もしよかったらどうぞ!私もめっちゃ楽しみです!
ちなみに、私の本は出版して1年ぐらいですが、あと3000部ぐらいで、10万部らしいので、もしよかったら応援していただけるとうれしいなぁ。