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イルカのしっぽ
石畳の道が続くトリニダーは小さな街だった。
サトウキビのプランテーションの拠点として発展し、奴隷売買の歴史もある場所だ。
奴隷という言葉を聞くと複雑な気持ちになるが、今はとても落ち着いてのどかだった。
道には小さなお土産物屋さんが並んでいた。
空き缶で作られた置物や木彫りのキッチン用品、美しい刺繍のワンピースやテーブルクロスなど。
手作りの素朴さが伝わってきた。
「オチョ、オチョ」とおじさんから声がかかる。
オチョとは、スペイン語で8という意味。
つまり、8クックということだ。
イルカのしっぽの形のネックレス。
前から欲しいと思っていた形だった。
おじさんの手作りネックレス。
形だけみれば、どこでも買えるのかもしれない。
けれど、これも出会いだなぁと思い、購入を決める。
おじさんがニッコリした。