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「ボトルマン」を、みんながなぜ欲しくなったのかを考えるとわかる、売れる遊び系ビジネスのつくり方


タカラトミーから「ボトルマン」が発表され、即予約完売など大きな話題を呼んでいます。僕はこれを見た瞬間、欲しくて欲しくてたまらない気持ちになりました。


でも、あえて雑に言うと「ペットボトルキャップを飛ばすおもちゃ」を買いたい人が、僕も含め、大量発生したのは、どうしてでしょうか。

そもそも、

ボトルマンは確かに面白そうだし、どんなふうにキャップが発射されるか試してみたいけど、子供だけでなく、多くの大人がペットボトルキャップを撃ち合う遊びに興奮するというのも不思議な話です。

そして、ペットボトルキャップをシュートするというおもちゃのアイデアは、おそらく玩具業界で企画に携わったことのある人なら、誰もが一度は考えたことのあるアイデアだと思います。僕も、前職の入社2年目に同様の企画を出してボツになり、その後も何度かボツになり、そのうちボトルキャップを撃つアイデアを考えることに飽きました。

でも、僕はボトルマンを見た瞬間に、一刻も早くお金を払って買いたいと思い、興奮しました。

「祭り」が起きたからです。


「ハレ」と「ケ」という言葉があります。ハレは非日常、ケは日常。

ボトルマンというおもちゃと、そのネットでの盛り上がりは、「ケ」であるはずのペットボトルキャップを、一瞬で「ハレ」に変えました。

それは、開発者のこだわり、PVの面白さや、タカラトミーのTwitterの中の人の上手さなど、関係者の連携が成した業なのですが、それができたのは何といっても「タカラトミーだから」でしょう。

この商品化は、プロジェクト「BM」としてティザー告知されており、シルエットがチラ見せされ、多くの人が「ビーダマン復活」を想像していました。そこからの、「ボトルマン」。若干ダサくて分かりやすいロゴに、エコ文脈、どこの家にもあるペットボトルキャップ…。全てが噛み合いました。しかし、これをタカラトミー以外のどこがやっても、スベっていたでしょう。それくらい、ペットボトルキャップを「ケ」から「ハレ」に転換するのは難しいです。ビーダマンを、長年、大切に大切にしてきたタカラトミーは、ペットボトルキャップ遊びを祭りにすることができる唯一のメーカーでした。


話は変わりますが、

ビジネスとして、「遊びをつくる」とは、どういうことか。

それはまさに、「祭りをつくること」に他なりません。


先日まで、自分のTwitterで、「 #遊びのつくり方 」という100日連載をしていました。(興味のある方は、ハッシュタグで100日の投稿を追ってみてください。)


これを見ていただくと何となく気づく思いますが、遊びのつくり方なんて、正直いくらでもあります。例えば、友達と集まったときに何する? とか、自分の子供に遊びをせがまれたら何しよう? とか、そんなのは「何する?」としゃべっていたらすぐ思いつきます。自分一人で退屈なら、スマホいじりだって、散歩だって、寝るのだって遊びになります。しかし、そういう日常の遊びとは違い、「遊びを提供して、お金をもらうビジネスを作る」となると、祭りを仕掛ける以外に方法はないと言っても過言ではありません。ちなみに、誕生日やクリスマスはすでに「祭り」なので、「この日におもちゃを買おう」ということにしたのは、今も業界を支えている本当にすごい一つの発明です。

祭りとは、「ケ」(日常)を「ハレ」(非日常)に変えることです。現代は、大人はもちろん、子供も毎日いろいろなことで忙しく、日常から抜け出すことが難しくなっていて、普段は「遊ぼう」と思う心すら折られている場合も少なくありません。だから、例えばおもちゃの新製品情報を見ても、気分が日常から脱出できない限り、買う余裕がないのです。金銭的にではなく、時間的・心情的にです。

これは、祭り(ハレ、非日常)だから、この時間は日常のいろいろなことを放り出して、遊んでも許されるんだ! という空気を作らないと、遊びにお金は出せません。

それこそ地域のお祭りに行って屋台で遊ぶとか、ディズニーランドに行くとかはわかりやすいですが、例えば、買い物に行って、1点目の服を買うのには割とためらいがあるのに、1つ買ったら、いくつ買っても大丈夫な気がしてきて爆買いしてしまった経験はないでしょうか。それは、1つ買い物をしたら「ケ」が「ハレ」になったからです。本屋で1冊ではとどまらずに何冊も買ってしまうのも同じです。それで、家に帰ると「ケ」に戻って、積ん読になる。


じゃあ、祭りって、どうやって作ればいいのか。「私に祭りなんて大それたものは作れないよ」と思ってしまう人は多いでしょう。大勢を巻き込むような想像をすると、緊張します。僕だって全然お祭り男ではありません。町内会の祭りみたいに、大勢が協力して成功させる大きな祭りの運営に入りたいとは全く思いません。でも、

もしあなたが、遊びをつくって、それを小さくても商売にしたいと思うのなら、覚悟して、祭りのつくり方を学び、練習し、慣れる必要があります。

以下に、お祭り男ではない僕が普段実践している、「誰でも始められる祭りのつくり方」を5つのポイントにして紹介します。


1.まず、運営仲間を1人つくって最低2人で小さい祭りを作り、外のお客さんが1人フラっと来るようにする。

祭りは1人きりでは作れません。でも、最低2人いれば作ることができます。知り合い同士で約束して集まる飲み会は祭りではありません。祭りの条件は、運営が用意した祭りに、1人以上の外の参加者が乗っかってきてくれて、その場を楽しんでくれることです。このとき、知らない人間が1人でバカ騒ぎをしているのを見ると不安になりますが、2人がバカ騒ぎをしているのを見ると、急にそれが現実に思えてきて、吸い寄せられます。2人で神輿を担いで騒いでいれば、1人、また1人と、担ぐ人が増えていきます。

ちなみに、社内の企画プレゼンも、2人で祭りを作って他の人を誘い込むと通りやすいはずです。孤軍奮闘で、祭りは作りづらいものです。

2.特別な1日を用意する。

「人生で、今日だけかもしれない」という特別な瞬間を用意します。おもちゃで言うと、発売日や予約日、全国大会イベントの日、など。ガチャガチャ(カプセルトイ)で、めったにお目にかかれない商品の自販機とすれ違うようにする、なども、祭りのつくり方の一つです。

ある一日、ある一瞬が誰かの人生で、記憶の片隅に残るようなものにするにはどうすればよいかを、考えてみて下さい。

3.祭りに名前を付ける。

もう一つ、祭りにとって大切なのは、「名前」です。「飲み会」を「○○祭り」、予約開始日を「○○祭り」と呼ぶだけで、「ケ」が「ハレ」になっていきます。例えば自主開催セミナーなどを企画する際も、祭り的な名前にすると全然違います。

4.情報と経験をギブする。

集まってきてくれた人に、「GIVE」を、あげてあげてあげまくると、祭りは盛り上がっていきます。何をあげればいいかというと、その答えは「情報と経験」だと僕は考えています。急に硬い話になったように聞こえるかもしれませんが、人は別に、別に酒を飲んで日常の嫌なことを忘れて、記憶を飛ばして憂さを晴らすために祭りに参加しているわけではありません。無意識かもしれませんが、人は、自分をアップデートしたいから、祭りに参加しています。

そもそも祭りは、神を信仰し、平和な暮らしを欲するための儀式です。だからいつの時代も、みんなが参加しました。今でも儀礼的な意味はありますが、信心深い人が減ってきているのも事実です。それでも人が祭りに参加するのは、やはり平和な日常を願うからです。そのために、神をまつるというより、自分を変化させたいという潜在意識が働いています。たくさんの人と会って、いろいろな人の様子を見て、会話して、体験して、SNSで発信して。それによって人生を幸せな方向に動かしたいのです。だから、気づきを与えて、変わるきっかけになることをギブするコンテンツを用意してあげると、人が集まってくる祭りになります。

5.アハハと声を出して一緒に笑う。

祭りと言えば、お囃子、踊りなどのワイワイ感がイメージされますが、何が重要なのかと言うと、それによって顔が笑うことが重要なわけです。笑いは、安心につながります。今は、現実の大変なことを忘れていい時間なんだ、とするためには、とりあえず、笑っているだけで良いです。例えば、エンタメ×教育や、エンタメ×運動など、実効性のある遊びを作るときでも、100%笑いにした方が、「時間をそこに割いていいんだ」という安心感を得られます。もちろん、歌ったり踊ったりするのもすごくいいです。オフィスや教室でできないことをするのがいいです。


以上は一例ですが、タカラトミーのボトルマン発表はこれらを全て叶えていた、お祭りだったなと感じました。

そして、大企業でなくても、祭りは最低3人で作れます。仲の良い2人で企画して、祭りの告知をして、お客さんが1人フラッと来るかどうか、Zoomでも何でもいいので、小さくトライしてみてください。全員知り合いで遊ぶのではなく、新しい友達が神輿に誘われて、担ぎにやってくるかどうかを何度でも試してみて下さい。そして、みんなで笑ってください。そうしていると、祭りのつくり方がだんだんとわかり、遊び系ビジネスのつくり方が分かるようになります。

参考までに、僕が最近noteでも投稿していた「インターネットサービス」「イベント参加権付きゲーム発売」「企画づくりセミナー」、これらは全て、僕なりの「祭り」づくりでした。↓


みんなそれぞれ、パートナーと少人数で企画・運営をして、まだ会ったことのない知らない人に集まって頂いた祭りです。僕のスモールビジネスの例を見ていただけると、「なんだ、祭りって、この程度でいいんだ」と、自信が持ててくるかもしれません。三社祭を作れと言っているわけではなく、祭りのサイズは、自分に向いているサイズが一番上手くいくし、来て欲しい参加者に集まってもらえるものです。祭りは、運営する自分が一番楽しめることが大切です。


ということで、めちゃくちゃ話がそれましたが、ボトルマン、早く買いたいなあ。娘と遊びたい。発売日の10月24日が僕にとっての次のお祭りになりそうです。

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