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「大人とは?」自分の装備を再点検~小泉今日子をテレビで見た話~
ついにホットコーヒーを淹れた朝。
大好きなドラマ「虎に翼」の最終回だった。
その内容の賛否はSNSや週刊誌で度々話題になり、それだけ様々な人に何かを「感じさせずにはいられない」作品だったのだと思う。
朝の連続ドラマとしても、内容が盛りだくさんのドラマとしても、こんな最終回になるとは思わず、エンドロールの粋なはからいに「あ~、よかったなぁ。」としみじみした。
(新潟の弁護士たちのあの場面をここにもってくるなんて、ね?)
ここには登場しなかったけれど、印象的な人がたくさんいたドラマだった。
そして松山ケンイチ演じる桂場が史実とは異なり、みんなにとって愛すべきキャラクターであったことは、ドラマとしていい選択だったと思う。
(ドラマでも描かれた青年法律家への弾圧や、現在の日本会議へ繋がる団体の会長を務めるなど、実際は右翼の大物になっているそうだ。)
最後の場面。
桂場、寅子、そしてその向こうのテーブルの中央によね。
何より、その輪の中に轟がいることも本作の重要な視点だ。
まるでジブリアニメの屈強な男のような登場シーンから、最後の瞬間までこの輪の中に轟がいる。
ふと、花岡が生きていたらここに居ただろうか、と思う。
多分だけど、彼は居なかった気がする。
それは否定的な意味ではなくて、「僕は電報を打つよ。」と、彼なりの距離をもって見守ったんじゃないかな、などと想像する。
私はこのドラマは、同じ朝ドラの「カーネーション」(私が一番好きな朝ドラ!)において「そこにあり、描かれなかった側面の物語」だと思っていて、だからナレーションがカーネーションでヒロインを演じた尾野真千子だったのが腑に落ちたし、これもまた主題歌の「100年先でまた会いましょう」になっていて最高だった。
そして、最終回の主人公の「状態」が同じなのも、この2作品のつながりを(勝手に)感じて面白かった。
そんな風に余韻に浸りながらチャンネルをそのままにしていたら、あさイチに小泉今日子が出ていた。
小泉今日子を見ると反射的に
「あっ、キョンキョン!」
と口をついて出る世代。
今朝も思わず言ってしまった。
裏のラヴィット!が気になりつつ、あさイチを見始める。
(宮近くんが参加した金曜バンドは、文明の利器を使って録画しました。)
小泉今日子と言えば、アイドル時代から自分の思いを率直に口にする人、というのが大体の世間の印象だと思う。
私もなんとなくそう思っていて、年を重ねてからは新聞の書評欄を担当するなど、何を言うかだけでなく「思考すること」の大切さや面白さをどんどん手に入れていくのが見ていて面白かったし、同時に私も教えてもらった。
エッセイ「黄色いマンション 黒い猫」は、彼女の青春時代から、自身や家族が等しく老いて行くという現実の空気も感じられる本で、猫好きとしてはどうしても読むのが辛い場面もあったけれど、今でも好きなところを読み返したりする。
で。
番組が始まって数分。
今まで何度も見て来たであろう小泉今日子の喋る姿が、なんだかいつもよりさらに魅力的に見えて来た。
あ、言葉だ!
彼女の喋る言葉が、とにかくずっとイキイキしている。
なんてことない、普通のことをしゃべっていても、どの言葉も「生きて」いるのが感じられた。
私が歳を重ねた分、余計に感じるのかも知れない。
彼女自身が語っていた「全部自分で責任を負える自由」が、そうさせているようにも思う。
間違っていることもあるだろうけど、意見を言っていいんだよということを伝えたい、というようなことも言っていた。
そういえば、ジュリーも自分で責任を負うことを大事にし、独立後はコンサートにスポンサーを付けずにいた。
(コロナ禍に開いた「着席・バラードのみのコンサート」では、様々なことを暗喩した「TOKIO」を歌っていた。地下を疾走するようなあのアレンジはもう2度と聴けないだろうけど、ジュリーのライブで1,2を争うほど感動したし、かなりストレートなプロテストソングもリリースしている。)
小泉今日子が「大人」というものを語る時、そこには反省と、責任と、そして人生で手にしてきた「力」がある。
ジュリーもそうだ。
みんな面倒くさくてちゃんと確かめようとしないけれど、多くの人が大なり小なり手にしているはずのものを、彼女たちはちゃんと使ってみせてくれている。
社会に対してなんの意味もないことでも、自分がどう感じるかを確かめながら暮らす。
今、小泉今日子が出演している「団地のふたり」は、同じ団地に暮らす幼馴染みの50代の女性二人が主人公。
それぞれ人生の色々を経て、また団地で暮らしている。
「これからの女性の生き方のひとつの形として」というようなことを小泉今日子は言っていたと思う。
私の友人は、圧倒的に独身が多い。
パートナーがいても長らく事実婚状態だったり、猫と暮すために家を買った友人もいる。
みんな、色んな道を選んで生きている。
だけど、結婚して子供がいても私が不安なように、どんな道を選択していても不安な瞬間はあると思う。
そういうときに、「団地のふたり」のように、見守ったり、笑い合える仲間がいたら素敵だ。
これからますます多様な生き方が出てくるだろうけど、そういう事もさらりと描く作品で見せてくれる小泉今日子や小林聡美の表情は、私をとても勇気づけてくれる。
そして映像の世界ではまだまだ若い世代に目がいきがちだけど、演劇好きの自分からすると、50代以上の素晴らしい「女優」は本当に沢山いるので、そういう意味でももっともっとこんな作品が世に出てきて欲しい。
もうすぐ60代を迎える小泉今日子に、今後はどんなことをするのか、という質問が来ていた。
彼女自身もこれからの自分がどんなことをするのか楽しみなようで、「自分へのサプライズ」として語ることはなかった。
え~。
なんだよ~。
めちゃくちゃ楽しそうじゃないか~。
株式会社明後日で働きたいよ~。
茨道の現実が目の前にあるけど、私もそんな風に、これからの自分を楽しみに生きていきたい。
そうであるように、日々精進する所存であります。
私が一番好きな曲はコレ。
小泉今日子のいたずらっぽさとPOPな可愛さ。
ある意味、オードリーヘップバーンのムーンリバーに匹敵する名曲だと思ってる。