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濃い!熱い!切ない!香港映画の美学を浴びる!!~『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城塞』を観てきました

行ってきました~!!
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城塞』!!
公開前から映画ファン、特に香港映画ファンの間で話題になっていて、ジャッキーとともに育った私には絶対刺さるでしょう、と思っていたこの映画。

濃い!熱い!切ない!

カンフーはもちろん、CG、ワイヤーアクション、人間ドラマ、どれをとっても私が大好きな香港映画の魅力がギュギュギュギュギュギュっと詰まった最高のエンターテイメント作品でした!!

とにかく最高すぎて好きすぎて、正直何から話していいのか分からないのだけど、そうね、あらすじからいっときますか。


あらすじ

舞台は80年代の香港。
元々は19世紀の城塞があったその場所は、歴史のなかで事実上どこの国の法も及ばない不管理地帯となり、1940年代後半に中国本土や、近隣からの難民が押し寄せバラックを建設、巨大なスラム街と化した「東洋の魔窟」、九龍城塞(きゅうりゅうじょうさい)と呼ばれていた。
陳洛軍
(チャン・ロッグワン)は難民として香港に密入国、ストリートファイトの賞金で身分証明書を買おうとしていたが、大兄貴(おおボス)率いる組織に騙され、その場にあった大金の入った袋を盗んで逃走。
王九(ウォンガウ)はじめ手下たちに追われ、逃げ込んだ先が九龍城塞であった。
九龍城塞はかつて黒社会を制し、今は理髪店を営む龍捲風(ロン・ギュンフォン)が仕切っており、王九達も迂闊に手が出せず退散。
入ったら出られないと言われる城塞に迷い込んだ洛軍と、九龍城塞で出会った者たちの運命が、ここから大きく動き出すのだった…。


ポイント① 濃い!

まず登場するキャラクターが、敵味方関係なくもれなく魅力的!
必ずあなたの心を掴んで離さない人物がいるはず!
(私?私は欲張りなので全員推しの「箱推し」です!)
※ここから少しだけネタバレあります。

しかし何と言っても今回の目玉は悪役の「王九」(ウォンガイ)。
これ、コイツ。

そもそも王九はそんなに重要な人物じゃなかったそうで、演じるフィリップ・ンがどんどんアイデアを出し、その人物造形についてアクション監督の谷垣健治はこう語っている。

「それは彼の努力というか、どんどん役を高めていったところが素晴らしかった。フィリップはアクションだけでなく芝居も好きなんでしょうね。自分でいろいろ演技アイディアを考えて余計なこと(演技的に)をしたりしますが、それがこの役にハマったんですね。あの気持ち悪い笑い声とか傘を持つとか。撮影途中から、ソイ・チェン監督と僕の間では、彼は何やってもいいよね、という感じになりました(笑)。」

エンタメ城 谷垣健治インタビューより

今回の作品では、マンガのようなアクションを目指していたと監督も語っていて、そこにこの王九は漫画雑誌から抜けだしてきたようなキャラクターで最高だった。
こんな見た目なのに無敵!
何をしても倒れないその秘密は「気孔」!

無敵の気孔使い!
マンガか!!

こんな奴、どうやって倒したらいいの!?
それこそが後半のみどころにもなっている。

私が小学生なら、間違いなく「硬直!!」と言いまくっていたと思う、強烈キャラ・王九。
だが原作では、少林寺で修業をしていたとの描写もあるらしい。
冒頭、王九が軽々とバスに飛び乗るシーンがあるのだけど、これも修行で得られる「軽功」ではないか、という話がXにもあった。
軽功は「気」の訓練で修得できるものらしい。
そしてそれは現在も行われており、香港のSWATはこれを用いて訓練をしている、との話も。

意外に真面目な子だったのかもね~。
武術を身につけた王九に、一体何が起こったのか?
かなり気になるところ。
そしてSNSのファンアートを見ていても、王九を描いたものが沢山!
公開と共にこんなに愛される悪役って居る!?
でもこの映画見ると、なぜか好きになっちゃうんだよね~。

この他、食堂の人だと思ってたらやたら強い人とか(しかも本業は小説家だという)、とにかく濃い人が沢山出てくる。
王九に実験台にされそうになる少年とかも、いい表情してたな~。

そして、普段はとてもさわやかなフィリップ・ン。
今後も注目していきたい!


ポイント② 熱い!!

香港映画と言えばアクション。
ことに昔からある「武狭」の世界は、小説や映画、マンガなどで愛されてきたジャンルで、武術に長けた人物たちの任侠もの。

実はこのトワイライト・ウォリアーズも、そのものズバリ「武狭映画」なのです!!

ここでは武狭の「武」、アクションがとにかく熱い!という話から。

ブルース・リーの「ドラゴン危機一発」や、ジャッキー・チェンの「酔拳(ドランク・モンキー)」、ジェット・リー(リー・リンチェイ)の「少林寺」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」、私が子供の頃見ていてた武狭映画と明らかに違う!と驚いたチョウ・ユンファ、ミシェル・ヨーの「グリーン・デスティニー」、そしてトニー・レオンがとにかくかっこよかった「英雄〈HERO〉」…。

そこへまた新たな超ド級アクションとしてやってきたトワイライト・ウォリアーズ!!

何がすごいって、いくらワイヤーアクションだからってそんなことは起こりえないでしょう!?ってことを、これでもかと浴びせてくる!!
実は私、ワイヤーアクションて作り物感がどうしても苦手だったのだけど、今は当たり前だし、ここまでやられたらもう拍手するしかない。
実写でこんなことやろうなんて、普通じゃないもん。
普通じゃないもの見せてやろうって、その気概に惚れちゃうよ。


そして次の熱々ポイントは、ベテラン俳優の活躍。
今回、敵の大兄貴を演じるのは、日本の香港映画ブームの立役者となったひとり、サモ・ハン・キンポー。
ジャッキー、サモハン、ユン・ピョウ。
3人が出る映画は、子供の頃、学校でいつも話題になった。

この映画の中ではほとんど寝転がっていたり、でーんと座っている印象の大兄貴(それにはちゃんと理由があるけど)。
ところがいよいよ自分の出番、とルイス・クー演じる龍兄貴との一騎打ちは、もう手に汗握る展開。
さすがのサモハン、素晴らしいシーンだった。
そして龍兄貴のルイス・クー。
70代のサモハンとは違い、実はまだ50代。
撮影以外は髪も黒々としたイケオジ驀進中ですが、映画の中の龍兄貴の枯れ方が、半端なくかっこいい。
色んなところで宣伝に使われているこのカット。

もう絵になっちゃってる。

右手の角度、左手の形。
なにこれ。
カッコよすぎだって。
(ギリ江守徹ではない。ギリ山城新伍でもない。)

この映画は、主人公の洛軍と、彼の盟友となって行く男たち、信一(ソンヤッ)、十二少(サップイー)、四仔(セイジャイ)の友情と活躍も描かれているんだけど、この4人みんな龍兄貴に惚れこみ、信頼している。
それを背負っての龍兄貴の死闘。
シャッターを閉めるシーンでは「兄貴―!!」と心のなかで叫びましたよ、私は。
そして出番は少ないながらも、龍兄貴の兄弟分、秋(チャウ)兄貴、虎(タイガー)兄貴も渋さ爆発。
秋兄貴の構え、虎兄貴も片目を失明しながら洛軍を追い詰める。
出演にあたっては、みんな基本的な武術や拳法を習得したそうで、これほどのアクション作品は相当きつかっただろうと想像する。

それから、忘れちゃいけないもう一つの主人公。
それは「九龍城塞」!!
この美術が熱々ですごかった!!
これを観るだけでも、映画館に行く価値がある!!

実はこの作品のプロデューサーが九龍城塞で育った人だそうで。
九龍城塞をスラム街として描くのではなく、そこに人々が生き、商売をし、家族を作り、日々を暮らしていたことを感じさせる作品になっていたのは、このことが大きいんじゃないだろうか。
実際、九龍城塞の中には病院も保育園もあり、そこで作られる点心などは高級レストランに卸されていたそうだ。

この九龍城塞の内部を、信一が案内する動画がある。
これ、映画を観た後に見ると、また違った感情がわいてきます。
それはこの後のポイント③の部分に入ってくるのかな…。


ポイント③ 切ない!

これは武狭の「狭」、渡世人の義理人情ですね。
そもそもどこの馬の骨とも分からない洛軍を受け入れた、九龍城塞の人々。
かつて黒社会を制した龍兄貴のもとで暮らしはじめ、龍兄貴や、仲間たちと強い絆で結ばれていく。

九龍城塞で寝る場所がなく、【ひさし】に転がって寝ていても「ぐっすり眠れた」という洛軍。
龍兄貴は外の世界へ行くように言うが、ここに居たい、と洛軍は答える。
家族も故郷も無く、行くあてのない洛軍がようやく見つけた安息の地となった九龍城塞。
しかしその生活を脅かすある事実が浮かび上がり、洛軍は城塞を出るよう仲間たちに言われるのだが、さまざまな思いを胸に、洛軍たちは城塞の中で戦い続けていくことになる。
龍兄貴と洛軍、そして一番の子分である信一。
龍兄貴の兄弟分、虎兄貴と舎弟の十二少の師弟愛。
勿論、龍兄貴、秋兄貴、虎兄貴の絆。
そして明かされる、かつて龍兄貴が九龍城塞を舞台に繰り広げた、あの壮絶な戦いでその命を奪った男・陳占(チャン・ジム)の存在。
人々が運命に導かれ、それが一つに繋がった時、また新たな運命の扉が開く。

この物語の展開のなかで、沁みる場面が次々にやってくるんですよ。
例えば、死を覚悟しながら洛軍を助けに行こうとする十二少に虎兄貴がかけた言葉。
そして九龍城塞に残りたいという洛軍に、「理髪屋になるか?教えてやる。」といって、ひげを剃ってやる龍兄貴。
シャッター越しに交わす、龍兄貴と信一の会話と視線。
洛軍を抱えたまま戦う四仔(あんた元モデルで医者だよね!?)。
そして洛軍を助けるため、敵に囲まれ、飲み込まれていく仲間たち。
4人が麻雀をし、負けて海に放り投げられた牌。
ひとつなくなっただけで、麻雀はできない!と笑う彼ら。
つまり、誰か一人でも欠けたら、それは俺たちじゃないってこと。

あーーーーーー。
もう駄目だ。
良すぎる。
全部良すぎる。

この撮影を通して、彼らは本当に役のような関係を築いたそうだ。


映画に込められたメッセージ

この映画の中で、龍兄貴が信一に送った言葉。
あの場面に託されたもの、それはすなわち〈香港は、若い世代のものだ〉というもの。
この作品は、最高のエンターテイメント作品にして、急速に変わる香港そのものへの、そして香港を守ろうとする若者たちへの応援歌でもあった。
映画を観て、あのシーンにハッとした人は多かったんじゃないだろうか。


そしてー!!

実はこれ、3部作として前・後日譚の制作が決定したそうです!!
ヒャッハー!!!!!(王九ノリ)

まずこれね、絶対龍兄貴と陳占(演じるのはこれまた香港の永遠のアイドル、アーロン・クオック。本作でのお鬚が素敵!)の話は避けて通れないわけですよ。
実はこの二人、ロミオとジュリエットの構図にあるんですが、公式も「BLではないけどロミジュリ参考にしました。」と言ってるそうで。

加えて、演じたアーロン・クオックも髭剃りのシーンをインタビューで「兄弟愛と男のロマンスを持ってきてくれた」と語り、「ブロマンスは監督が決めることだが、新たな発展があれば、私も応援する。」と答えていて、色んな物語の方向性がありそうだ。

でね。
そもそもこの龍兄貴と陳占が戦わなければならなかった原因が、陳占のボスである雷震東(レイ・ジャンドン)という人物にあるんですが。

この役に説得力を持たせられるのなんて、誰がいる?
という話題もありまして。
みんなが頭に描いている人物はただ一人。

そう、その人の名はチョウ・ユンファ。
彼しかいない!!!!

本当にチョウ・ユンファが実現してくれたらいいな~。

あ、そうそう。
チョウ・ユンファといえば「男たちの挽歌」が代表作であり傑作なのですが、この「トワイライト・ウォリアーズ」についての口コミをたどって行くと、「男たちの挽歌」ファンは当然、「RRR」をはじめとするインド映画ファン、「デッドプール」をはじめとするマーベル映画ファンにもとても人気があることが判明。
たしかに、友情や復讐、そしてド派手で破天荒なアクションは男たちの挽歌やRRR並みだし、グロいけどユーモアもあって面白いところはデップー的でもある。
なるほど~、そりゃ私がはまるのも無理ないわ。
全部面白いもんね。

そして実はこの映画、アクション監督の谷垣健治は「三丁目の夕日」の世界観も目指したそうで。
見ればそれも分かります。

というわけで、これらの映画が好きな人なら絶対はまる「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城塞」、ぜひ大きなスクリーンで、爆音で楽しんで欲しい。

ここで新情報!
なんと、龍兄貴について、アクション監督の谷垣健治がこんなポストを!

分かる!
煉獄さんだ!
龍兄貴は確かに煉獄さんだった!!

ということで、鬼滅ファンの方も絶対楽しめますよ~!!


こちらはED曲のMV。
映画の名場面が散りばめられているので、ぜひ映画を観て、そして余韻に浸ってもらいたい。



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