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視点・論点~アイドルの下積みに「搾取」はないのか~

同名のテレビ番組がありますが、それとは関係ありませんのであしからず。

さて。

トラジャのインタビュー動画が上がった。
これがとてもよいインタビューで嬉しかったので、ポストを連投した。
まずはその内容。

「なぜデビューまでそんなに長いの?私が聞いた中で1番長いかも知れない」ときかれて、それが協会の文化だから、とサラっと言ってたけど、色んな意見あろうが外から見たら若者の搾取の面もあるよね。彼らは力を蓄えてきたし、全員で留学して切り拓くことができたけど。外に触れるの大事だなぁ…。

その後如恵留くんがメンバー遍歴を訊かれて、もっと改善の余地があった、と、デビューを掴むため自己分析しながら努力する時間に充てていたようなことを言っていたけど。
そら最年少とはいえ元太くん25歳、如恵留くんは今月で30歳だもんね。初めてきいた人は驚くと思う。

そしてさらに驚くべきは、彼らは「ネオJポップ」を作ろうとしているってこと。全ての音楽を尊敬し、音楽を愛する全ての人を尊重し、だからこそあらゆる音楽を試す必要があるし、新しい音楽を作ることを諦めないと。トラジャの曲を聴いていればなんとなく感じていたけど、まさか本人たちの口からそんな言葉が聞けるなんて。

今、実は動画を見ながらこれを書いているのだけど、見ながら「何っ⁉」って声出たわ。彼らはデビューまでの10年はもちろん、デビュー後も7人で明確に目標を持ってきたことは色んなインタビュー見て知っていたけど(今週のテレステの如恵留くんのファーストペンギンの話とか)、チームトラジャとはまた別に、Travis Japanとして主体性をもって動いていること、個人の仕事もグループに還元しようと決めていることが改めて語られていて、それって「The untold story of LA」で宮近くんが言っていた「ただの仕事仲間になっていったら、Travis Japanが支持される理由がなくなる。ただ仕事で集められた関係なら、Travis Japanでなくてもできる。経験を共有し、自分たちでカラーを生み出さないと、Travis Japanのカラーにならない。自分たちのカラーは、提示されるものじゃない。」を本当にやっているんだって知れて、心が震えた…。

そして話題は12月に発売になる2ndアルバム「VIIsual」(ヴィジュアル)について。今回のプロデュースを担当したうみくんがメインで答える。ひとりひとりにスポット当てたことには「個人のアイデアはどこにいくの?」ときかれ、松倉くんは「僕の場合」としながら、Travis Japanはこういう曲が好きだと思う、と自分の曲を選んだことを話す。如恵留くんは「個人の曲だけれど個人のものではなくて、7人のTravis Japanのために新しい曲を作った」と言う。それが集まって、Travis Japanを作っていると。

わかる。わかるよね。誰より7人がTravis Japanを愛しているし、それを愛するファンの気持ちも一緒にそこに込めようとしてくれているよね。やりたいことはあるけど、そこには「リスナーにも喜んでほしい」が、ちゃんとある。

って、ここまでの内容でインタビューの1/3くらい。え?なんなの、このインタビュー。出かける前にサクっと見るかぁ!なんつって見始めたんだけど。私まだ買い物行ったり年末調整書いたりやらなきゃいけないことあるんだけど、内容濃すぎるし、みんなできるだけ英語で伝えようと一生懸命に応えてるしあまりにも真摯で、誠実で、真面目で、もう本当になんていい子たちなんだろう、なんて素敵な人たちなんだろう、サクっと見るかぁなんつってごめんねって思ってまだ出かけられないでいる…。

とにかく、文字で読むことはあってもインタビューでこういう内容を見ることはあまりないから、彼らがどんな態度で、どんな風にそれについて考えているのかがより伝わるし、慣れない英語ゆえすべてを伝えきれないジレンマはあるにせよ、とてもいいインタビューだと思う。

TVでちらっとしかトラジャを知らない人にもぜひ見ていただきたい。アイドルとして存在しながら、どれだけ真剣に音楽を作っているのか、もっと知られていいと思う。

で。
ここまででまだ動画を全部見切れてなくて、夜にまた続きを連投したのだけど。
個人的にこのインタビュアーは「使命」や「メッセージ」というものに対して、本当はもっと話したかったのかな、という印象を持った。
とてもいい方だったな。
もし私のポストに興味がおありの方はこちらからどうぞ。

ここで私は、なんとなく予測していた展開を実際に目にすることになる。
それは「搾取なんかじゃない」というリプライ。
一番最初のポストで「色んな意見あろうが」と書いている通り、むしろ、もっと早くそういう反応がくるかも知れないと思っていたけど、みなさん割と否定せずに読んでくださる方が多かった。


感情としては理解できる


システムとしてそういう面は否めないよね、という意味で書いたのだけど、それに対して「彼らは給料をもらっていたから搾取ではない」を筆頭に、デビューの定義はどこそこはどうでここはこうでと説明をつけてくれる方、どこに比べればずっと待遇はいいという方、説明不足で残念という方、そして搾取なんて言葉失礼、そんな言葉は彼らは悲しむ、私はそんな言葉は使いたくないという方、そして「そもそも業界がそういう体質だから、ここだけが特別ってわけじゃないんじゃない?」は、私の考える「搾取」と最も近い意見だった。

「搾取」の受け取り方が人によって違うんだなというのが、とてもよく分かった。
そして、私の返答は以下のものだった。

反応ありがとうございます。おそらく、●●様がおっしゃることはそのまま会社の方針でしょうし、それを理解しているからこそ与えられてきた場所で頑張ってこれたのだと思います。
でも、あるメンバーは「デビューはないとうっすら言われていた」と言っていましたし、タレントに「残酷さもエンターテイメント」と言わせるようなやり方は、タレントを大切にしている企業のやり方なのかなと思います。彼らがデビューできたからそれを受け入れられる部分もあるのでは。インタビューのなかで、AGTに出たことで、価値に気づいてもらえた、というような話もありましたが、皆んなが彼らのようにできるわけじゃない。
一流の方たちと仕事ができる、それは間違いなく強みですし勉強になりますが、基準もなく、育成の完成系がよくわからないシステムに賛同はしていません。
私は彼らのファンではあっても、彼らをとりまく環境を100%支持しているわけではないです。
「ファンなら彼らの意思に反するようなことを言わない」「誤解を生む発言はしない」はもちろんその通りだと思いますが、K-POPを持ち出すまでもなく、グッズを売り、コンサートも動員があり、それでもデビューできないシステムにやりがい搾取の構図を見る人がいても、私は否定できません。
また、私はいちファンではありますが、いち社会人としての意見も持っています。
これは、いち社会人としての私の「外」の目だと思います。

「搾取」という言葉への反応を見て、あぁなるほど、「自分が消費者である」という視点をもって話をしているわけじゃないんだな、ということが分かったうえで言うが、会社の「搾取」だけでなく、私たちの「応援」は「消費」の形のひとつだ。
けれどそういう視点でみている人は「消費などしていない」という答えになるんだろう。
前提や認識がここでは違う。
そりゃ話が合うはずもない。
もっと言えば、「数字を上げなきゃ」は、「搾取される者の心理」とか、もう恐ろしくなってしまうかもしれない。

でもね、芸術や文化って、そういう部分がメインじゃないでしょ?
そうじゃないところに価値があるでしょ。
きっと「搾取じゃない」という言葉の裏には、そういう気持ちがあるのだと思う。
なぜ「応援」するのかといえば、彼らの作品はもちろん、その努力に対しても敬意を持つからでしょ?
心が動くからでしょ?
その気持ちは「消費」ではない。
だから感情としては理解できる。
なぜって、自分もそうだから。

だけど私がポストしたのは、搾取よりもっとストレートな言い方すると「デビューというニンジンをぶらさげ、ゴールのない道を走らせるシステムになっていないか」ということ。
それはいわゆる「やりがい搾取」の構造ではないのか。

12、3歳で入ってくる子供たち

事務所に入ってくる子供たち(その多くは12,3歳で)は、おそらくみんなデビューを夢見て入ってくるのだと思う。
いつか誰それくんみたいになりたい、そういう目標に向かって頑張っているんだろう。
それに対して、ゴールがあるならいい。
コンスタントにこのくらいの動員になったらデビューできるとか、何かそういう基準があって、ちゃんとデビュー(この事務所の場合はCDリリース、トラジャは配信がデビューの形だった)できるのなら。
実際、トラジャが何に苦しんでいたかといえば、「デビューしたい!」ってことだった。(よね?)
それが全員で留学という決断に至った。
どうなっちゃうんだろうと、くじけそうになりながらも懸命に七か月を過ごしたことは間違いなく(きっと人間としても)いい経験になったけど、もしまだデビューできず、アメリカから帰ることができなかったら、同じように「会社は間違ってない」「辞めたければいつでも辞められる」と、ファンが言えるだろうか。

本人たちはきっとそう思ってない、そんな言い方悲しむと思う、そんな言葉は酷い…、彼らを思えば、そういう言葉が出るのは当然だと思う。
でも、「それってどうなんですかね?」と思うようなシステムを黙って見てることの方が、私はちょっと耐えられない。
それはトラジャだけでなく、これから先を夢見ている若者がまだまだ大勢いるからだ。


Ⓐ彼らはデビューを目指しているのが事務所側はわかったうえでその基準も示さず、十代前半から二十歳を過ぎてもデビューできずにいても、それなりに給料をもらい、ステージにも立ち、彼らは搾取されたなんて思ってないだろう。
消費されているなんて感じていないはずだ。


Ⓑかれらは「勉強期間」が長かっただけだし、「応援」されていると思っているはずだ。

私が書いているのはⒶの話で、搾取という言葉に反応した方たちが言いたいのはⒷなのだと思う。
最初から、見ているものが違うのだ。
けれど、私がいつもⒶの見方をしているかといえば、ほとんどない。
大体はⒷの目線で、彼らを「応援」しているのが現状だ。

でも、業界がそうだからと言って、少しでも健全になることが不要だと私は思わない。
私はやっぱり、「それが芸能界だよ。」と言わず、「あなたの夢の形に沿うよう、最大限バックアップをするよ」という会社が増えてくれたら、その方がいい。

ちなみに、あるジュニアが「自分たちになぜ仕事がくるか。ギャラがデビュー組より安いから。全然違う。」という話をしているのを見た。
いやいや、あなたを使いたいからお仕事が来るんですよ、あなたを売りたくてお仕事を取ってきてくれるんですよ、とⒷの私は思う。
でも、実際一定のファンが付いたタレントを安く使いまわせたら、そしてその駒が多ければ多いほど、会社にとっては都合いいよねとⒶの私は思う。

そういうお話。

それとね。
例えばフェミニストを「フェミ」と呼ぶように、人と話をするときにK-POPを「けーぽ」と呼ぶ人とは基本的に合わないなと思った。
すごく丁寧な言葉遣いのなかに、突然「けーぽ」が出てくるのは、K-POPへの敬意を感じない。
また、私のポスト引用しておそらく事務所をやめた人たちのグループをさして「あの人達とは違う」という人もいたけど、わざわざふれてもない相手を見下す材料なんか一個も無いです。
今回のポスト、他国の芸能事情や国内の他グループと比較して語る必要なんか、まったくない内容なんだけどね。
あと、トラジャは能動的に動いていたから搾取じゃない、という意見。
そのシステムに絡めとられないために彼らは留学して、今日があるんじゃないですかと言ったんだけど、もうこれは、完全にここまで書いてきた「搾取」の受け取り方の話ですね。
私はトラジャだけの話をしているんじゃなくて、あの会社で今もデビューできない人や、これから入ってくる人たちはどうなっていくのかなと思いながら書いたんだけど、トラジャは違う、トラジャが悲しむ、とおっしゃるので、お互い触れずにいるのが楽しく推せるでしょう、と思います。
で、ポスト辿ったらいわゆる事務所担の方でした。
それはもう絶対話合わないよね。
もひとつ言うと、みんなが好きなあのファミリーの結束って、そういう環境だから尚更強いんでしょうね、と思いました。
誰かがそれを「身内でケアし合ってる」と言っていたけど、もう一方から見れば「支え合ってる」ということになりますか。
どちらも間違っていないと思う。

見ている方向がそもそも違った


いくつか引用リプライを読みながら、私は「ファンの認識の違い」について、最近経験したことを思い出していた。
ある人と話していて、彼女が少年隊の錦織のインタビューについて
「「僕たちは犯罪者の子ども」というのを称賛するなら、秋葉原無差別殺人の犯人の弟さんが居場所をなくし自殺されたことは家族だから仕方ないことなのか?それが正義なのか?」
と言っていたのだけど、私は
「いやむしろ弟さんは、誹謗中傷にあって自死された性被害者の方と同じなのでは…。」
と思ったのだよね。
或いはあるタレントが「自分は指一本触れられたことはない」という発言に対し「セカンドレイプだ」とたたいて、発言する権利を奪われたということ。
でもこれ、実際パワハラ問題を経験した自分からすれば(私がパワハラされたのではないが)、当事者は「それはよかったですね。でも、あなたのことはここでは関係ありません。私は被害に遭いました。」でしかないんだよな、ということ。
あの人はこんないいところがある、こんなすごい仕事した、と書き込まれているのを、被害者がどんな気持ちで眺めているのか想像したことはないのか。
この辺の通じなさ。
認識の違い。
同じものを見ても、こんなに違って見えるのかと驚いた出来事だった。

なかなか根深いものがあるなと思っている。


今回もとになったTravis Japanのインタビュー動画。
これが本当にいい内容だったので、最後に紹介しておく。
まずこういう内容を日本のメディアではあまり取り上げないし、やっぱりアイドル誌メインだと知ることができないので。
トラジャはただのアイドルじゃない、これからの「世界のアイドル像」を作ろうとしているんだと思うと、本当にわくわくする。
そしてバラエティでしか彼らを知らない人に、ぜひこんな落ち着いたトラジャの姿を知って欲しい。
特に元太くんが普段話している姿は穏やかで、バラエティとは全然違うのです。
そしていい声だわ~。




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