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音楽劇『A BETTER TOMORROW -男たちの挽歌-』見て来たよ、って話。

『音楽劇 A BETTER TOMORROW-男たちの挽歌-』を観劇してきた。
(以下、ネタバレも含むのでご注意ください。また、便宜上敬称略で書いていきます。)

もともと原作にあたる映画『男たちの挽歌』が大好きで、あの映画がどれほど面白いか、チョウ・ユンファがどれほどかっこいいか、昔からよく語り合う友人がいて、今回の企画が発表された朝、その情報にくわっと目を見開いたまま、私はすぐさまその友人に連絡した。

推しが、推し映画を、舞台で演じる。

それだけでも興奮する話だが、ちょっと待て。
…『音楽劇』?
あれを?
音楽劇?

う~む。
期待と不安が入り混じる。
演出は鄭 義信。
ファンの多い演出家ではあるけど…どうかな。
どうなんだろう。

そうは言いつつ、キットを松倉海斗が演じる時点でもう半分出来上がったようなものだな、という思いもあり。
(それほどまでに松倉キットはハマると確信できた。)
あとは川島如恵留のマーク。
果たしてどんなマークを見せてくれるのか。
インタビューなどでは、普段の「アイドル・川島如恵留」とは違う、こんな面もあるんだという引き出しを見せていきたいというようなことも言っていたし、宣伝写真も本家とは違うスマートさ。

幕が開くと、想像していたものとは全く違うマークがそこに居た。
なるほど、そうきたか!
映画のマークはホーを「兄貴」と慕っているが、なぜそこまでホーに憧れるのか私にはちょっと分からなくて。
(だってティ・ロンよりチョウ・ユンファの方がかっこいいと思っちゃうし。あと、ティ・ロンは石橋正次に似てるよ…。)
しかし冒頭に「北京からボートで密航するマークとホー」を差し込むことで、天涯孤独で大きな夢を抱える青年マークをどこまでも優しく見守り、運命を共にしようとしてくれた恩人ホーと、そこに全幅の信頼と愛情を寄せ、「甘える」マークという構図ができていた。
映画のマークは孤独もエネルギーとする強さが全面に出ていたけど、こちらのマークは孤独から逃れるために大きな夢を描く青年に見えた。
そして川島如恵留といえばアクロバット。
映画の見どころでもあるレストランの銃撃シーンは、少しシチュエーションを変えながらもステージを縦横無尽に飛び回り、彼でなければできないものを見せてくれた。
世界広しと言えど、毎日舞台であんな場面をあんな風に演じるアイドルが他にいるだろうか。
川島如恵留のマークを、存分に楽しませてもらった。

今回、もう一つ楽しみにしていたのがホーを演じる青柳翔だった。
以前NHKでやっていた「仮想儀礼」というドラマがとても面白かったのだけど、主演の青柳翔が抜群に良かった。
なんなら今日の青柳翔はどんな演技を見せてくれるのかと、わくわくしながら見ていたところもある。
そんな青柳翔を、舞台で観られる。
いや、青柳翔に限らず、今回のキャスティングは俳優の固め方が見事で、主演の二人をしっかり支え、尚且つ物語を立たせるには申し分のない俳優陣だったのが本当によかった。
で、青柳翔。
キットの兄という役どころで、クリクリとした愛らしい目が二人ともよく似ている。
山のように大きな青柳翔が、小柄な松倉海斗を抱き合げる姿は歳の離れた本当の兄弟のようだった。
主演はTravis Japanの二人ではあるのだけれど、観れば分かるがもうホーがいないと始まんないの。
映画もそうだけどね。
キットに殴られても、殴られても、力いっぱい抱きしめようとする。
ホーの大きな体が小柄で細いキットに何度も跳ね返され、拒絶される様(あのキットの必死の抵抗もよかったね。)があまりにも残酷で、そりゃもう切なかった。
なんでこんないい人が裏社会なんかに行くんだよ、っていう。
それは仮想儀礼もそうだったんだけど。
いい人だからマークを信じたし、マークを守るためにもそばに居たんだろうと思う。
それがこんなことになるなんて。
変な話、舞台版男たちの挽歌は、方向は違えど出てくる人全員純粋なんだよね。
チンピラたちだって報われない人生を「なぁ なぁ なぁ?」と問う。
その中で、キットの純粋さを「守りたい」それだけ願っていたはずの兄が、その純粋さを傷つけてしまう。
夢を、そして肉親を奪ってしまう。
映画では、土砂降りの雨のなか激突する二人。
舞台では、宿命の赤い血のように真っ赤な傘が登場する。
(映画と時代設定が変わり、民主化要求デモの「雨傘運動」の頃が舞台となっていた。)
ホーが歌う「明日はどこだ?」
悲しみと悔恨に満ちた声が、次第に叫びとなる。
青柳翔の歌声は低く響き、大きな体躯と相まって、なんとも言えない迫力があった。
切り裂くでも、押しのけるでもない、行き場を失い雨にかき消されるだけの、悲しいホーの叫び。

青柳翔、ぜひこれからも音楽劇やミュージカルに挑戦していって欲しい。

さて。
今回の舞台化の目玉と私が勝手に思った松倉海斗のキット。
キットのその若さと純粋さゆえに、裏切られたことへの憎しみはちょっと常軌を逸していると感じるほど。
それは松倉キットにもしっかり受け継がれていて、友人いわく

「キットがキットだった。」

ビンゴですね。

もともと松倉海斗本人のキャラクターも根は非常に真面目で(彼のブログの定期更新の最後には、必ずインスタや公式YouTube、出演中のCMの説明など、一生懸命考えたであろう文章がびっしりと添えられている。)、その生真面目さが本作のギャグシーンでは面白さのひとつとなっている。
なにより明るい声と、はじけるような笑顔。
それはホーが闇商売に手を染めてでも守ろうとすることに説得力を持たせるほど魅力的で、見ているこちらも「君は何も汚れてくれるな!」と思ってしまう。
ホーも、失ってしまった自分の無垢な未来を、キットの中に見ていたんだろう。

舞台版はよりホーの物語の側面が強いけれど、結局のところ、ホーの味方になる人たちは皆その向こうに、キットを見ていたんだよね。
だからカーテンコールで小柄な青年があの笑顔で中央に立った時、

「あぁ!君が「A BETTER TOMORROW」だったのか!」

そう思った。
多分そんなつもりでカーテンコールを演出してはいないだろうけど、私には、あのカーテンコールがそう見えたのだった。
みんなが未来を、キットという若い力に託しているように思え、映画とは違うあの大団円にも、とても気持ちよく拍手を送ることができた。
(そういえば雨傘運動も96年生まれの周庭など、若い世代が中心だった。)
あと、やっぱり私は松倉海斗の歌が好きだと再確認した舞台だった。

それと、今回のパンフレットは各キャストの対談が載っていてとてもよかった。
グッズのTシャツもなかなか渋くて即買い。
早速着て出かけている。

ちなみに、映画版は後日譚として「男たちの挽歌II」があり、こちらもとても面白いです!!
私はIIのキットの姿に号泣しました。
また「アゲイン 男たちの挽歌III」とか、「ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌」とかもあったりして、マークを演じたチョウ・ユンファの活躍を見たい人にはこちらもおすすめします。
IIIには時任三郎、新…には国村準が出ていますよ。


さて、ここからはちょっと気になった部分にも触れておく。
ギャグシーンについて。
この辺りは好き嫌いの部分が大きいだろうけど、私は正直疑問に思うところがいくつかあった。
まず、レイとキットが歌う場面。
原作には、レイという人物との友情はない。
あえてその部分を入れたのなら、あの場面はきちんと描いて欲しかった。
だからエンディングで再会した二人のやり取りも、私には響かなかった。
ただ。
あの歌唱シーンで突然水切りを始める松倉海斗のコメディセンス、そしてそこから始まる尾上寛之とのやり取り自体はとても好き。
尾上寛之、うまいしね。

それと、宇宙へ行くところ。
あそこは笑いたいんじゃなく、しびれたい場面だった。
それがああなって、あれ?
せっかくあの瞬間まで作り上げたものをああいう形にすることに、私は面白さも、その意味も見いだせなかった。

それから、吃音の設定。
その表現でしか、シンの屈折したものを描けなかったんだろうか。
吃音で悩む人は大勢いる。
シンが「天下をとることで吃音が消える」というのは、悲しい表現だと私は思った。

あとは、主演二人は初舞台ではないけど、声の出し方からして「真面目だなぁ。」と。
なんというか、どこか優等生っぽいというか、「舞台劇」というものの「型」にはまってしまっているような不自由さが感じられた。
そのことは、表現の単調さに繋がってるように思えた。
例えば、ラストシーンのキットは、最初の頃のキットに戻っている。
う~ん。
一緒に観に行った妹も、
「あれだけの出来事を経験したら、もうその前の自分には戻れないと思うんだよ。一見同じに見えても、何かが変わってないとおかしいんじゃないだろうか。」
と言っていて、私もそう思った。
「Ⅰ believe in a better tomorrow 」
この曲を歌うとき、私はビッグママを見ていた。
あの曲を歌うビッグママの表情には、歌には、ちゃんと過去があって、それが私にも思い出された。
(そりゃまぁ、さすが、っていうのもありますけども。)
年齢的には「過去より明日を見つめるキット」は納得いくけど、一回りも二回りも大きくなったキットが感じられるとよかった。
マークも、後半はもう少し深みが欲しかったところ。

とはいえ、二人は外部の舞台に出るのは初めてで、公演を重ね、様々な人と出会い、きっとこれから色んな表情を見せてくれるだろうと思うので、ぜひぜひ舞台を続けていってもらいたい。
彼らのポテンシャルは、すごいと思う。
色んな人のワークショップを受けたり、具体的に学ぶことを続けて行ってほしい。


そして!
私は何度でも言う!!
劇団四季関係者さまー!!
バックトゥザフューチャー上演にあたりましては、是非ともマーティを松倉海斗に!松倉海斗にお願いします!!
マイケル・J・フォックスと体格も似ていて、歌も歌える、ギターも弾ける、コメディもいけて、マイケル・J・フォックス同様、人々から愛される純粋で優しい人柄です!
スケジュール調整は超絶難しいでしょうが、今の日本でマーティが一番似合う人だと思います!!
七夕のこの願いよ、とどけー!!
(日付かわってしまったけど。)



最後に本件とはまったく関係ありませんが、東京都知事選の今日、こんなポストを見ました。
都民でもない私がこんなこと言うのもあれですが、西くん、どうもありがとう。













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