落とす説明をするには

 組織の中で自分がこれを実現したい、あるいは、このことは実現しなければならないと考えていることについて、上司を説得するためには、ある意味「落とす説明」をすることが求められます。担当が工夫も努力もせずに上司の了解を得られる案件というのは、そのことを長年やってきて、ある意味それ自体は組織の命運を左右するようなものではなく、毒にも薬にもならないような軽い案件だと思いますし、それは、担当の「仕事」の成果とはいえません。仮にこれまでどおりのやり方を続けるにせよ、事業環境やお客様ニーズ、競合他社の状況を説明したうえで、それでもこれまでどおりのやり方を続けることが最適なんです、という説明をしないと、上司は納得して判断しません。仮に急ぎの案件であっても、判断材料不十分で、無理やりスケジュールに間に合わせるよりは、リスケしてでも判断の時間を取る方向になると思います。もちろん、デッドラインを超えると、その判断自体が意味なくなるため、そこは見極めつつ、材料が揃わなければ、ギリギリまで引っ張ると思います。
 一番難しいのは、何かの事業を進めてきた判断基準の一部、又はすべてが、状況の変化により失われたように見えて、では状況が変化したからやり方を変えてしまえばいいかと言えば、実はその事業が企業のブランドイメージを高めていて、間接的にメインの商品やサービスの売り上げに貢献しているので、引き続き今のやり方で事業を継続したい、といった場合ですね。経営層は上に行くほど一つの事案に割ける時間は少なくなり、端的な説明が求められるので、判断材料がいくつかあった場合、わかりやすいものだけで説明して了解を得るということはよくあります。その場合、了解を得る際に説明しなかった、ちょっとややこしい背景を持つような判断材料が、その後の状況変化により、事業継続のメインの理由になった場合、経営幹部からすると「そんな話聞いていない」ということになり、面倒なことになります。かといってこれまで説明してきた理由だけで通そうとすると、「じゃあいらないよね」という判断をされてしまいます。
 一種、詰んだように思われますが、そこが担当の腕の見せ所で、いかにして理由を上手にすり替えて「落とす」説明をするかがポイントになります。時間との勝負だったり、その「落とす」説明は簡単ではありませんが、結局、そうした修羅場を潜り抜けることで、強くなる、逆に、そうした経験をさせないと、いつまでも下は伸びない、今、マネジメントをする立場になってみて、痛感します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?