学び直しの難しさ

 学び直しとかリカレント教育、最近はリスキリングとも言うようですが、既に社会に出て仕事をしている人に対し再教育を施し、社会全体の人的資源の再配分を促すことで、今後、人手不足が見込まれる分野への労働力のシフトを進めようということのようです。だいぶ前に無駄な公共事業が諸悪の根源とされて、公共事業を減らされた時期には、建設会社から介護福祉分野への労働力移転のように、余剰人員を抱える分野から人手不足の分野へのシフトに注目が集まっていましたが、今はどの分野も人手不足であり、生産性の低い分野から生産性が高い分野、特にデジタル人材の確保のための再教育が求められているようです。また、若い人材というよりは、これまでさほど重視されてこなかった、中高年の生産性向上のための再教育が、なんとなくフォーカスされているような論調が多いように思います。確かに、中高年はどんな企業にとってもコスト要因で、新天地で活躍してもらえるなら、餞別がわりに退職金上乗せしても、スリム化できる方が都合が良いのでしょう。ただ、単純化した実例を具体に書けるほど、中高年が新天地で活躍することは簡単ではないと思います。デジタル分野で人が求められているといっても、システム開発の基礎となるプログラミング技術のスキルアップは、アルゴリズムやプログラミング言語の理解、システム開発ツールの習得など、未経験の中高年にとってはハードルが高く、何とか習得したとしても、単なるスキルの切り売りでは、経験年数の浅い若手以下に扱われることになり、それまでのキャリアの積み上げが評価されず、気持ちも萎えることになります。若い頃からIT業界に身を置いていても、経験年数に応じてマネジメント的な立場にならないと、常に新しいものを追いかけ続けることになり、その部分で若い世代との競争になって力尽きるという人もいるようです。いくらニーズがあるとはいえ、中高年の門外漢がこれまでのキャリアを投げ出し、徒手空拳で飛び込むにはリスクが大きく、自分のこれまでのスキルを活かす立ち位置を確保したうえで、社会のニーズに応えていく、そうした道を探りたいと思います。

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