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上昇スパイラルに乗れるか 

 昨日は経営トップを交えた会議に出席し、会社の調達コストと人件費が急上昇しており、それなりの売り上げを確保しないと、次第に経費が収支を悪化させて人材確保どころではなくなるという事実を突きつけられました。

 この30年近く、ある意味、モノのコストについては個々の品目が値上がりすることはあっても、全体としては定常世界にあって、従来の予算の中で何とかせよと包括的に投げれば、何とかなっていた面があります。
 それどころか、2010年代までは、価格競争力のないモノについては、ネットの恩恵なり調達先の多様化によりコストを削ることが、基本的な思考回路として定着していました。

 人件費も、どちらかといえば所与のものに近く、こちらも削ることはあっても、増やすことは至難の業で、まずは伸びない売り上げを前提に、どう考えるかであり、人件費を増やせる企業というのは、商品やサービスがヒットした一部の勝ち組であり、人材確保の面で脅威にはなりませんでした。

 そうした、これまでの枠内でやりくりできた時代は去り、人でもモノでもコストがかかるようになってきて、どこを向いても状況は変わらず、覚悟を決めてこのコスト上昇を織り込んで、経営を考えるしかない状況です。

 しかも、この上昇の波は、一過性のものではないので、この先も続くような感じです。

 もちろん、リーマンショックのようなことが起こらないとも限りませんが、経済成長の恩恵が世界の新興国に広く及びつつあり、金融市場が期待によって膨らみ続ける構図は変わらないでしょうから、人やモノの総量がその伸びに追いつくことがない以上、階段一段一段がこれまでより高くなり、上がるのがきつくなることは確かだと思います。

 これこそ、失われた30年の間に、この国が求めてきた好循環による上昇局面であり、ようやくこうした流れができたことは歓迎すべきなのでしょうが、個々の企業にしてみると、コストの上昇に見合う商品やサービスを提供し、コストに見合う値付けをできないと、この流れに置き去りにされ、負のスパイラルに陥ってしまうリスクが高くなったということです。

 一個の社会人としても、従来の、定常世界の経済においては、社会のせい、政府の無策のせいにして、自分のことを棚に上げて、他人のあらを探しておれば、前例踏襲を繰り返していても、何とかなったわけでしょうが、これから先は、コストに見合うものを生み出すか、やり方を抜本的に変えてコスト単価を下げるか、いずれにせよ、足元で成果を示さないといけない。

 経営層に近い立場の人間は、過去の武勇伝を語っている場合ではなく、この上昇気流に乗り遅れないための方策を本気で考えないと、自分も組織も生き残れなくなる、これは社会全体が何となく同じエスカレーターに乗っていた時代とも異なり、なかなかにシビアな時代に入ったのだなと感じます。

 今日明日で急速落下して負のスパイラルに陥るわけではないでしょうが、1年、2年もすると、優勝劣敗が見えてくるでしょうから、今までの考えを変えて、現状維持で逃げ切れるという発想も捨て、自分自身もアップデートしていきたいと思います。

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