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相続権のない親戚の遺産処理をする羽目になった話

 最近、身寄りのない方が亡くなった後の遺産処理に関する話を聞き、非常に考えさせられました。
その方の近所に住むいとこにあたる人物が亡くなり、その人は相続権がないにもかかわらず、遠い親戚同士の話し合いの中で役回りを半ば押し付けられる形で遺産処理を担うことになったという話です。

 相続権がない以上、そのまま放置すれば行政が対応するのかと思っていましたが、実際にはそう単純な話ではないようです。遺産を国庫に納めるためには、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる必要があります。

 そのための手続きには専門的な知識が求められ、しかも申し立ての手間や費用がかかります。さらに、相続財産清算人(弁護士が選任されることが多い)が手続きを進めるために要する経費の予納額が、不動産などもあると100万円近くになることもあるようで、個人が道義的な責任で対応するには、あまりにも大きな負担となります。

 最終的には、国庫への納付額からこうした経費を差し引くことができるようですが、そのためには領収書などの証拠書類を適切に管理する必要があります。

 専門的な知識がない人にとっては、非常にハードルが高く、ミスをすれば自身が負担を強いられる可能性すらあります。こうした事情を考慮し、僕は弁護士に依頼するのが最善ではないかとアドバイスしました。

 知り合いの司法書士にこの話をすると、「相続権もないのに、そんな手続きをするメリットは何もない。知らんぷりできるなら、その方がよい」との意見をもらいました。

 たしかに、法律的な義務がない以上、関わらないのが最も合理的な選択肢かもしれません。ただ、親戚間のしがらみや道義的責任を感じてしまうと、そう簡単には割り切れないのが現実です。知ってしまった以上、最後まで関わるしかないのでしょうが、何か理不尽な思いがしてしまいます。

 この先の時代、未婚者の増加とその人たちの高齢化に伴い、こうした事例はさらに増えていくでしょう。身寄りのない人が亡くなった際の手続きを公的機関がスムーズに進められるよう、制度の整備が求められるのではないでしょうか。
道義的な責任を感じた人が、合理的な判断と感情の狭間で苦しむような状況を少しでも減らせる仕組みが必要だと強く感じています。



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