見出し画像

キャリア入社者向けオンボーディングの取組み(2024ver)

こんにちは。Simonです。とあるメーカーの事業部人事に所属しています。

2024年に事業部人事へ異動し、最初に取り組んだ仕事がキャリア入社者向けオンボーディング企画でした。

キャリア採用が増加する中で、新たに迎えた社員がその方らしさを早期に発揮し、組織で活躍できる仕組みづくりは重要なテーマだと感じています。
そこで本日は、私が取り組んだキャリア入社者のオンボーディング施策についてご紹介します。同様の企画を検討されている方に少しでも参考になれば幸いです。

*「オンボーディング」とは、入社後の社員が組織で定着し、活躍するまでの一連の取り組みを指します。また、「組織社会化」とは、個人が組織の一員として必要な態度、行動、知識を習得するプロセスを意味します(「組織社会化を考える」より引用)

オンボーディングに取り組んだ背景

私が所属する事業部は約900名規模の組織で、成熟市場において高いシェアを誇っています。これまではキャリア採用が少なかったものの、DXをはじめとする新たなスキルが求められる時代に対応するため、2021年頃から中堅クラスや専門人材の採用を強化。その結果、2024年には新卒採用を上回る規模(約40名)でキャリア採用が進むようになりました。

しかし、増加するキャリア入社者に対して、明確な受け入れの仕組みが整っておらず、配属部門任せの状態だったのが現状です。。。その結果、受け入れの質が部門によって異なり、キャリア入社者が社内ネットワークを構築できず孤立する事例も見受けられました。これを解消することが、オンボーディング施策を企画した大きなきっかけです。

オンボーディング企画の考え方/実施内容

オンボーディングを企画するうえで、以下2点を整理しました。
①入社者が、いつまでにどんな状態になってほしいのか
②必要なサポートの明確化

入社者が、いつまでにどんな状態になってほしいのか

キャリア入社者は即戦力としての期待が高い一方で、周囲の支援なしに活躍するのは難しいと言われています。じゃぁ活躍までどれくらいの期間の支援が必要かなと考えた際、参考としたのがこちらの記事。

入社者が組織になじむ流れを、①受容感(職場の仲間に受け入れられた感覚)を経て、②有能感(仕事ができるようになった感覚)を得ることが示された事例がありました。それぞれの期間は、受容感がおよそ3か月、有能感は6か月とのこと。

引用:オンラインでのオンボーディング、3つの実践ポイント|人材採用のニューノーマル vol.4

採用者によって異なると思いつつ、まずはここを指標にして設計。受容感は、最初の1か月が重要と思い、配属先にもその点を伝え、入社者には、まず3か月間で職場に慣れること、半年ほどで、うちで活躍していける手ごたえを得ることをゴールにしていきましょうと伝えていくことにしました。

必要なサポートの明確化と実施内容

次に、人事と配属部門が実施すべき具体的なサポート内容を整理しました。特に重要と考えたのが以下の2点です

①リアリティ・ショック
面接時と聞いていたことと異なっていることはもちろんですが、入社初日に面接で関わった方がいなかったり、入社後のスケジュールを考えていない場合も入社者のモチベーションが低下する可能性があるため、その点も踏まえて部門に説明し、事前準備をしていただきました。

②No お手並み拝見
特にこだわったのは、この点です。これは配属部門メンバーも含めて、入社者への期待値が高いほど、周囲が様子を見てしまい、入社者が必要な支援を受けづらいことを避けたくて、くどいと思われつつ説明し、必ずOJTリーダーをアサインしていただきました。

今回、オンボーディングを企画する上で配属部門の協力を重要テーマとして取り組みました。その理由として、オンボーディング(組織社会化)に最も強い影響があるのは、配属部門側の関わりという研究があったためです(以下キャプチャの「組織の社会化戦略」)

組織社会化を考える

詳細は引用元を見ていただきたいですが、入社者の役割がはっきりしており、入社者自身が自分の遂行能力に自信をもち、既存の組織メンバーに受け入れられれば、さまざまな望ましい結果が得られるとのこと。入社者自身の行動も大事ですが、それ以上に受け入れ側の関わりの影響が大きいと思い、部門側の協力に注力してきました。

部門側に協力を求める際、どんな支援が必要かも共有しました。こちらのキャプチャを紹介し、この支援を上司、OJT、配属部門メンバーそれぞれが行えるよう、事前に役割を決めてもらいました。

引用元:「働くみんなの転職学」離職のメカニズムをさぐり、中途採用支援を考える

オンボーディングの全体像はこちら。入社前に配属部門に上記説明し、OJTリーダーを任命していただき、入社後1週間 - 10日のプランを立ててもらいました。事業部人事としては、入社初日は人事側でオリエンテーションを行い、PCセットアップ~細々とした入社手続き支援、事業部紹介、本社案内など、2日目から事業部側のOJTがスムーズに行えるよう事務関連を引き受けました。

関係部署の役割分担

個人的に注力したのは、入社者との3回の個別面談です。正直、最初は1か月目だけの個別面談を考えていて、それ以降はパルスサーベイが低い方のみを対象にする予定でした。ただ、上記ご紹介した6か月のマイルストーンの設定の確からしさを知るためにも、初年度は1か月目、3か月目、6か月目時点で面談を行うことを決意。これは実施してよかったです。

1か月目は良くても、3か月目で不安に感じている方がいたり、じつは6か月目で苦労する方、その逆で、3か月目で早々に活躍できる自信を持つ方など、なぜ人によって異なるのか、部門側によるものかなど、データとリアルの両方の面で知れたことは個人的に良かったです。

特に、サーベイだと低めの点数だとしても、実際に話すとそうでもないこともありました。これはデータだけ見ていたらわからなかったなぁと。

上記以外の取組みに、同じ入社年度の方を集めて入社者フォローアップ研修を行いました。
自分たちの製品はどう作られているのかや、世の中にどう価値を提供しているのかを体感する機会と、キャリア入社者同士の横のつながりを構築する機会を設けたくて企画しました。具体的には工場見学、現場見学、そして入社者同士で1日研修施設でグループディスカッション。これは参加者から好評で、特に横のつながりを持てていない方にとって、有意義な場となりました。つながり、大事。来年も継続予定です。もっと良い時間にしたいな。

実際にやってみた気づき

入社者の半数以上は、6か月目くらいで「ここでやっていけそう」と感じることがわかりました。
今年から取組んだため、まだn数は少ないですが、だいたい3か月くらいで職場や仕事に慣れ、そこからさらに3か月かけて、うちでやっていけると感じた方が多かったです。6か月経っても、自信がない方は第二新卒など求められる経験・知識がこれからの方でした。これは新たな課題ですね。第二新卒を戦力にできる人材育成力を高めるのか、それとも採用時の基準を新たに設けるのか、もう少し考えたいと思います。

3か月ほどで有能感を感じた方の共通点は、楽観的で行動派(という印象)
一部の方は早々に仕事や職場に慣れ、課長からも頼りにされている様子を入社3か月ほどでみられる方もいました。この方々と面談を通して感じたのは、楽観的で前向きに物事を考えることができるのと、自らネットワークを広げる動きをしていた点です。もちろん、これまでの経験を活かせる部分が多い点もありますが、第二新卒枠で入社した方も、気が付いたらプロジェクトリーダーを任されていたりと驚きの状態の方もいました。面談で聞いていると、自ら新たなことに意欲的に取り組んだり、不明点はどんどん質問している点が共通項としてありました。あとはうちのやり方に合わせつつ、より良い案を提案して実行にうつす力ですね。柔軟さがあるなぁと。こういう特徴が見えてくると、面接時に見る視点も変わってきますね。

入社者との面談を通じて見えてきた部門の状況
面談をしていると、部門の中で誰が気にかけてくれているかや、その部門の様子も教えてくれることで、見えていなかった点も見えるようになりました。あまり名前を聞かない方が、実は3か月のオンボーディングプランをしっかり作っていて、入社者の心強いサポーターになっていたり、飲みに誘ってくれる隣の課の先輩の存在など。見えないところでサポートしている方を知り、そのような方の存在がいることが有難く、まだまだ見えていないことが多いと感じます。

あと、キャリア入社者のことを知れること自体も大事だなと。うちは新卒からずっと働いている方がまだまだ多く、そのような方は比較的周囲も認知していますが、キャリア入社の方を把握している方はまだ少ないかなと。認知が弱いと、選抜研修などで声がかかりづらいかなと思うと、人事がしっかり知ることは大事だなと感じています。もちろん、データで求められる人材を見せられることも大事ですが、個別に接する中で知る良さの情報も大事だと感じました。もっと社員のこと、知っていきたいな。

2025年に向けて取り組みたいこと

面接時の評価と入社後の部門側の評価データも踏まえた分析
現状は入社者の入社後のデータしか見れていないです。面接時の評価はどうだったか、そこでの懸念を部門は入社後に解消しているのか、入社後の部門評価はどうかを繋げて見れるようにしたい。ここの振り返りを通じて、部門と共に、面接時、入社後育成のどこに課題があり、何を改善すべきかを対話できるようになりたい。

毎年、採用計画が増えている現状、本当にその方を採用して、やりたいことはできているのかが気になる今日このごろ。採用することで実現したかったことはできたのか、もしできていないなら、採用基準が課題なのか、それとも入社後の育成面が課題か、事実ベースに会話し、改善していきたい。この活動を通じることで、要員計画の精度も上がる気がする。

教育体系の企画検討
2024年は新入社員向けで行っていた製品技術研修に、希望者が一緒に参加するかたちで行いました。キャリア入社者のために、何を行う必要があるかは、まだ考えてきれていないです。入社者によって持っている知識・スキルが異なる中、何を共通で必須に受講したほうがいいのか、それとも動画で見たいコンテンツを見れるだけでいいのか。個人的には動画が良いなと思っていますが、直接講師に質問したい要望もありそう。ここの運用どうしよっかな。

オンボーディングKPI改善
2023年から本社時代にパルスサーベイを導入し、キャリア入社者に半年間回答していただいています。サーベイの中から、1か月目時点、3か月目時点、6か月目時点それぞれで、組織エンゲージメント、心理的安全性、有能感に関するKPIを設定しています。このKPIについて、2023と2024を比較すると値は向上していますが、期待していたよりは好意的回答(6段階中5以上)を行う割合が少なかったので、もう少し細かな点の改善も進めようと思います。

以上が今年のオンボーディングの取組みでした。個人的には、入社して3ヶ月で活躍できると感じれるプランにアップデートしていきたいし、キャリア入社者が活躍しているぞという声がどんどん聞こえてくる状態になってほしいので、引き続きこの分野に注力していきます。

いいなと思ったら応援しよう!