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くちびるの会「老獣のおたけび」@こまばアゴラ劇場

くちびるの会「老獣のおたけび」@こまばアゴラ劇場を観劇。岐阜県と思われる地方の実家にいる老父がある日突然象になってしまうという物語。カフカの「変身」を思わせる不条理劇のような筋立てではあるが、おそらく東京に住み劇作家をしている作者自身の境遇を幾分か反映させているんじゃないかを思わせる次男、実家近くに勤務し金融機関に勤める長男などに突如降りかかる災難にも思われる出来事は「象になる」というメタファー(隠喩)とも、不条理ともどちらとも受け取れる内容はやはり、象になった父親が認知症のような症状を引き起こしていくことなどからして、年老いた父親の老後の介護などの問題を反映した物語なんだろうというのが次第に分かってくる。
 私自身は実家にいた父母ともにすでに亡くなってしまったが、弟が地元企業に就職し私は仕事の関係で東京、大阪を行ったり来たりして、老父母のことはほとんど弟にまかせきりになってしまっていた時期もあり、自分の身に引き付けて考えると身につまされるところが大いにある。おそらく、このエピソードを介護の物語として、リアルに上演されたら、演劇として見るには厳しくなるだろうと思われ、「象になる」という趣向はそういうものをある程度エンタメ仕立てで見せていくための仕掛けとも思われるが、それでも全編退屈せずに面白く見られるのは老父=象を演じた中村まこと(劇団猫のホテル)の演技によるところが大きいと思う。
 

作・演出:山本タカ
『老獣のおたけび』は、くちびるの会としては約3年ぶり、そして第7弾となる新作長編公演です。
本作は、「親子関係」、特に「父子関係」に焦点を当てた演劇作品です。
とはいえ、堅苦しいものではありません。

ある日突然、故郷で暮らす父が「象」になってしまう物語です。
「象」になった父自身はもとより、息子たちはとても困ってしまいます。
「象」がいるなんて、ご近所さんに知られたら、大ごとになってしまいます。でも家族だけで「象」の面倒を見ることなんて、現実問題としてできるのか。息子たちにも、それぞれの生活があります。
田舎特有の緊密なご近所付き合いも、息子たちの悩みの種。そして確かに父だったはずの「象」は、次第に「象」そのものになっていきます。息子たちは、葛藤します。果たして、父を、いや、「象」をどうするべきなのだろうか? こんな感じのあらすじです。今回は、くちびるの会にいつも出演してくれているメンバーに加え、象になった父役として、劇団猫のホテル中村まことさんをお呼びしました。僕自身、どんな化学反応が起こるのか今からとてもわくわくしています。
くちびるの会
山本タカが2014年に立ち上げた創作拠点。
世知辛い世の中を、あくまで生活者な視点で見つめ、思考の飛躍と現実の曲解で以って、なんとか生きやすくするために、作品を創作。公演活動と並行し、子ども対象の演劇「紙おしばい」の創作などにも取り組む。出演
薄平広樹 橘 花梨 堀 晃大 木村圭介 藤家矢麻刀 / 中村まことスタッフ
美術:稲田美智子
照明:山本創太
音響:中村光
舞台監督:わたなべひでお(猫侍)宣伝美術:平崎絵理
広報:宮原真理制作:北澤芙未子
制作協力:ゴーチ・ブラザーズ

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