オヤジはかく語りき

田舎で建築業を営む、あるオヤジはかく語りき。

「仕事よりも家族中心やったよ。息子が釣りしたいって言ったら、どんなに忙しくても、仕事早めに切り上げたり、無理矢理休みつくって、息子2人連れてよく釣りに行った。はじめは見てるだけやったけど、見てるだけやとつまらんから、自分も釣り竿買って、やってるうちにハマってしもてなぁ。息子が釣りに行きたいって言うたら、いつの間にか、喜んで行こ行こ言うてたわ。とにかく何でもええやつが好きやから、高い竿ようけ買うたでぇー。ほんまに。」

「息子の塾のためやったら、夜の10時やろうが、迎えに行ったよ。そんな息子がヤンチャもんでなぁ。学校も、あと1回やらかしたら退学ってところまでいってなぁ。大変やったんや。それが改心して大学まで行って、今では自慢の息子やで。親に迷惑かけたと思てるんやろなぁ、大学卒業してからは毎月仕送りしてきよったで。今は東京で会社しとるわ。オヤジ、ベンツいるか？言うてなぁ、ベンツをプレゼントしてくれたんや。どや見るか？」

「あるとき知り合いが親子で恋人の話をしよってなぁ。うらやましぃなぁ、と思たんや。俺は息子と女の話なんかしたことなかったからなぁ。そんな風に会話できる関係がうらやましくてなぁ。ある時たまたま、東京で当時大学生やった息子と会うことがあってなぁ。息子がどっか遊びに連れて行ってくれ言うから、キャバクラに息子とその友達もつれて行ったんや。それからやなぁ、息子と女の話ができるようになったんは。ほんまに腹割って何でも話せるようになったんは、それからやなぁ。」

「もうあと5年やなぁ。仕事するんも。1人で細々とやるだけやしなぁ。嫁のご飯作って、犬の散歩して、これでも忙しいんやで。最近プードル飼いだしたんや。見るか？かわいいんやでぇー。もうこの子のためやったら、なんでもしてあげられるわ。」