【17】 翌日、学校建設現場はため池になった
住民説明会の翌日の7月1日、早朝に、私は母から叩き起こされた。福津市、古賀市、宗像市一帯が、線状降水帯(朝の6時台に38mm/h、7時台に42mm/h、8時台に15mm/h)になっていた。さっそく住民説明会の動画をアップし、ショート動画もつくらなきゃいけない、そんなタイミングで来た線状降水帯だった。避難警報も出た。娘は学校を休むと言い出した。
流域住民のライングループからは、家の前の川の様子を収めた動画や写真があふれていた。危ないから気をつけて!との声も飛び交うなか、動画はやまなかった。私はそれを見て、なんか泣けた。
動画を撮って、ラインで送ることはできる。でもこれを、動画にアップすることができる人はあまりいない。私が、これをやらなきゃいけない、それを期待されていることはわかっていた。でも実をいうと、この雨に付随していろんなことをやらなきゃいけなくなった。だから並行して、雨のショート動画もアップし続けた。目が回りそうな午前中だった。
この動画は、私が撮ったと思われていると思うし、コメント欄では「危ないよ」とお叱りも受けている。でもこれは、川の目の前に住む流域のみなさんが、命をかけて撮ってくれたものだとここで明かしたい。私はみんなの本気に触れたし、みんなの本気に応えたかった。
(下は動画や写真全部をまとめたもの)
忙しかった朝を終えて、ようやく10時ごろ、私は現地に着いた。みんなから聞いていた通り、学校予定地はため池になっていた。もしこの場所が盛土されれば、これらの水は住宅地に押し寄せるのだ。「盛土する前でよかった」という安堵の声もあった。「っていうか、本当にこれで盛土する気か?」「正気か?」という声もあった。線状降水帯とはいえ、たったこれだけの雨で。たった95mm/3hの雨で、こうなる土地に。
いつかはくる、と思っていた雨。でもまさか住民説明会の翌朝に? いろんなライングループでも、その話題になっていた。神様は、なんていうことをするんだろう。彼は優しかった、そしてきっと怒っていた。