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【22】 慣れない抗議活動で
打つ手がなくなった7月16日、盛土が始まった。
もちろん反対派の市民は穏健派がほとんどなんだけど、私を含む何人かは動き始めた。
本当に正確に言うならば、私はトラックを止めようとは思ってなかった。ただ、プラカードを持って立っていようと。でも、その場に行くとだめなのだ。盛土をいっぱいにしたトラックが、遊水池でもある予定地に土をどさーっと置いていく、その一杯一杯を見ると耐えられなかった。その一杯一杯と同量の水が、今度は地点9を襲っていくことがわかっているから。
一軒一軒回ったときに会った一人暮らしのおばあちゃんたちの顔が浮かんだ。インターホン鳴らしたあと、出てくるのも難しかった、私が言ってることを理解するのも難しかったおばあちゃんたちの顔。
それから3、4歳の小さな子どもたちの顔。うちの子、生きられませんよねって呆然として言った若いお母さんの顔。
これと同量の水が、彼らを襲うようになるんだと思ったとき、私は自分を止められなくなる。なんでこんな工事が許されるんだろうと、トラックを見ているとボロボロ涙が出る。初めてのことなので、どうしたら警察官に捕まるとか、捕まらないとかもよくわからずやっていたら、松尾さんが逮捕されてしまった。さすがに青ざめた。
松尾さんは、3日間帰ってこなかった。
3日目に「今、釈放された」と電話があって迎えに行った。公務執行妨害は、警察官にではなかった。事件のことだから詳しくは書けないけど、すごく悲しかった。
盛土現場にバイクを置いているというので、現場まで乗せていった。松尾さんがいない間に盛土は増えていて、松尾さんはそれを見ながら泣いた。3日間どんな状況だったかを教えてくれた。松尾さんは身に覚えがないと言い、でもその相手を「悪い人ではない」と言った。市のことを考えているのは一緒。なのにこんなふうに傷つけ合ってしまった。私もいっぱい傷つけてしまった。
本当にごめんなさい。
でも、なんとか止まらないですか。
止められないですか。
私は現場に行くのはやめようと思う。でもどうしたらいいんだろう、もうわからなくて、二人で泣いた。
本当にごめんなさい。
なんとか止まらないですか。
止められないですか。