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文章作成で注意したい!修飾語を並べる際の順番とは?

更新日:2025/01/12

 小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で教えている、文章作成における基本事項を紹介するのが、このシリーズ【文章作成の基本】。

※記事内に広告があります。

(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)


複数の修飾語句を並べる順番を考えてみよう。

Xで見た、英語の形容詞(修飾語)の重ね方。

 先日、Xでこういうポストを見ました。それは「複数の形容詞を並べる順番に迷ったら」という話でした。

 これ、結論から言うと「感覚が先。事実が後。」ということでした。つまり、主観的な感覚や、(相対比較による)評価、価値判断に関わるものは先、客観的事実は後、ということらしいのです。たとえば「small white bag」の場合、それが大きいか小さいかは主観的な判断によるものなので前、白は誰が見ても白なので客観的事実であるとして後にする、ということでした。

 私は英語はそんなに得意ではないので、「へー、おもしろいな」と感心しながら、その図解で説明している、そのポストを読んでいたわけですが、「いや?これと似たようなこと、日本語でもあるな!」と思ったので、ここで記事にまとめてみることにしました。

日本語文章の修飾語の重ね方。

 ここでは、「日本語の文章における修飾語の重ね方」についてお話ししていきますが、これは厳密なルールというよりも、こうした方が「わかりやすい文章」になるよ、という「ゆるいルール」です。ご存じの通り、日本語は英語と違い、語順を変えても意味が通じる言語です。「私は ボールを 投げる」でも「私は 投げる ボールを」でも「ボールを 投げる 私は」でも通じます。日本語は語順の厳密さを求めない言語です。したがって、修飾語を重ねる順序に「これこそが正しい」というのはありませんが、修飾語が複数になると、その分一文が長くなり複雑な文構成になるので「わかりにくい文」になりやすくなります。そのため、修飾語の重ね方に意識的になってその順序や並べ方を少し工夫すると、「読みやすく伝わりやすい文」になるのです。

(そもそも文構成が複雑になりわかりづらくなるため、「一文は長くならないようにする」のが文章作成の基本ではあります。一文は60字程度が目安。)

 では、それにはどういうルールがあるのでしょうか。それを、この後見ていきます(※なお、ここでは修飾語、修飾句、修飾節、修飾部を全て含めて「修飾語」と言っています)。

短い修飾語より長い修飾語の方が先。

 まず、「修飾語は長いものを先に置き、短いものを後に置く」というものです。

激しいガンアクションの、青年向けの漫画。

例1

 この場合、「激しいガンアクションの」の方が「青年向け」よりも長い修飾語なので前に置きます。その理由は、短い修飾語を先に置くと、それより長い修飾語を飛び越えないと修飾関係が成立しないようになっているため、「距離」があってわかりづらくなるからです。

青年向けの、激しいガンアクションの漫画。

例1-1

 もちろん、これでも意味が通じないことはありませんが、やはり、修飾関係に対して距離が感じられるため、文章リズムにも違和感があり、文構成が整理されていない印象です。

「句」より「節」の方が先。

 これは一つ目のルールの発展形のようなルールなんですが、修飾部が「句(述語を含まないもの)」と「節(述語を含むもの)」とで混在しているときは、「節」の方を先に置きます。というよりも、「句」よりも「節」の方が長くなることが一般的なので、一つ目のルールを押さえていれば、この二つ目のルールも自ずから守ることになるはずです。

国会で的確な質問をする、新進気鋭の野党議員。

例2

 このように「句」よりも「節」が前に来ます。言うまでもなく、「国会で的確な質問をする」の方が「新進気鋭の」よりも長いので、その点でもこちらが先です。

新進気鋭の、国会で的確な質問をする野党議員。

例2-1

 これでも、もちろん通じますが、前述した通り、「新進気鋭の」が修飾する「野党議員」(被修飾語)まで到達するのに「距離」を感じるため、違和感が残ります。ただし、この場合、「新進気鋭」であることを読み手に強調して伝えたいのだとしたら、この順番もあり得ます(同様に前に挙げた例でも、その漫画が「青年向け」であることを強調する必要がある場合であるなら、「青年向け」が前に来ることもあり得ます)。

 なお、修飾語を複数並べるときには、修飾語の後には読点を打ちましょう。たとえば……。

青年向けの激しいガンアクションの漫画。

例1-1-1

 ……と読点がないと、「青年向けの(激しい)ガンアクション」と誤読されることがあります。そのため、読点は必ず打ちます。ただ、これは読点の打ち方の問題なので、ここでは深掘りしません。

(読点の打ち方については、こちらの記事をご覧ください。)

「外側」の状況説明から順に「内側」の核心の内容に向かって重ねる。

 これは例を先に見てもらいましょう。

 社長から正社員にならないかと、別室に呼ばれて、私は、契約期間が満了したその日打診された。

例3


 この例文を読んで、内容はとりあえずわかるものの「整理されていなくて何か読みにくいな」と感じた人が多いかと思います。「社長から正社員にならないかと」、「別室に呼ばれて」、「私は」、「契約期間が満了したその日」は全て、述語の「打診された」を修飾しています。この四つの修飾部をどのように並べるのが適切か、というのがここでの問題です。この場合、先の二つのルールに加え、三つ目のルール「『外側』の状況説明から順に『内側』の核心の内容に向かって重ねる。」を適用して、文をまとめます。

 まず、「契約期間が満了したその日」は打診された日(時間)のことなので、これを一番目に置きます。次に、「別室に呼ばれて」は打診された状況(場所)のことなので、これを二番目に置きます。「社長から正社員にならないかと」は打診された核心的な内容(何を打診されたか)のことであり「私は」よりも長くそして「節」であるため、これが三番目。そして、最後、四番目が「私は」(打診された人=主語)となります。これで並べ直すと、以下の通りになります。

 契約期間が満了したその日、別室に呼ばれて、社長から正社員にならないかと、私は打診された。

例3の改善案

 このように、「いつ」、「どこで」という「外側」の状況説明から入り、後になるにつれて「内側」の核心的な内容に至るように配置します。これが三つ目のルールです。イメージとしては、外堀(状況説明)を埋めていき最後に本丸(核心)に到達するように文を構成していくような感じです。

まとめ ~複数の修飾語を並べるとき、少し「工夫」をするとわかりやすい文章になる。~

 このように、日本語にも「適切な修飾語の並べ方」というのがあります。こうしなければならないという厳格なルールではないですが、「わかりやすい文章」、「読みやすい文章」を書く上では意識した方がよいでしょう。こうした少しの「工夫」が「読みやすく伝わりやすい文章」を書く上では必要と言えます。

 小論文や志望理由書を書くときなど、文章作成の際には、この三つのルールを是非意識してみてください。

(もちろん、以前ご紹介した、こちらの『悪文の構造』でも、この問題に言及しています。この度重版されましたが、今とても売れていますね!文章作成の基本を学ぶ上でおすすめの一冊です!)


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〆野 友介 | 教育系noter | 小論文・作文指導者| 志望理由書の作成指導も |
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