【小論文の基本の書き方を学べ!】200字作文にチャレンジ!【高1・2生対象】
更新日:2024/11/13
小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で教えている、作文・小論文・志望理由書作成における実践的な技法をレクチャーするのが、このシリーズ【文章作成の実践】。
(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)
小論文の基本トレーニングには「200字作文チャレンジ」がオススメ。
これから大学受験に向けて小論文の勉強をしようと考えている高校生には、是非「200字作文」へのチャレンジをオススメしたい、というのが本日のお話しです。ここでいう「200字作文」とは都立高の国語の入試問題に出てくる200字の作文問題のことで、都立高校に通っている生徒にはおなじみかと思いますが、これが大学受験の小論文の勉強にもとても使えるのです。しかも問題も解答例も東京都教育委員会のHPに掲載されているので、基本「ダータ(ただ、無料)」で対策勉強ができてお得ですよ。
「200字の高校入試の問題なんて大学入試の対策にならない」と考える人も多いかもしれませんが、全くそんなことはありません。むしろ、この問題を解くことによって「小論文のエッセンス」が学べるはずです。これは「作文問題」と便宜上なっていますが、実質「意見文(小学生や中学生に教える小論文のひな形のような文章を一般的に「意見文」という。意見文とは自分の考えを根拠を挙げて筋道を立てて述べた文のこと。)」の問題です。文章を書くのが苦手な人で、小論文の作成に不安を覚える人には、是非これらの問題を通して「小論文の基本」を身につけてもらいたいと思います。
※ここでは「200字作文の問題を通して、高校生が小論文の基本を学ぶ」という主旨でお話ししていきます。この記事をたまたま見た「200字作文の対策をしたい中学生」のみなさんは、以下に紹介する小中学生に国語の指導をされている古澤先生の「200字作文の書き方」の記事で勉強してください。中学生のみなさんにもわかりやすく説明しています。ここでは、高校生のお兄さん・お姉さんに小論文の書き方を教えていく内容になるので、中学生には少し難しいお話しになります。
(古澤先生の200字作文問題の解説はこちら)
200字作文にチャレンジ。
では、さっそくこの記事上で「200字作文チャレンジ」を模擬的に行ってみましょう。なお、今回教材には、「令和5年度都立高等学校入学者選抜 学力検査問題(分割後期募集・全日制第二次募集)」の大問4の問5作文問題を用います。課題文は著作権の問題でここに載せることはできないので、この記事を読む人は、下のリンクの東京都教育委員会サイト上で公開されている課題文・問題文を確認してください。
(令和5年度都立高等学校入学者選抜 学力検査問題及び正答表 分割後期募集・全日制第二次募集)
課題文・問題文を読む。
・課題文から「テーマ」と「論点」、「筆者の主張」を読み取る。
以前、別の記事でも解説したように、小論文を書くには、まず正確に課題文と問題文を読むことが必要です。最初は課題文から読んでいきましょう。
(課題の読み取り方)
(課題要約の重要性 ※ただし「200字作文」の場合は字数が少ないので、「要約部」を設ける必要はありません。)
ここでの課題文の出典は、建築学者・建築家である香山壽夫著『建築を愛する人の十三章』(一部改変)です。この出典名で明らかなように、これは「建築がテーマの文章」です。まず、建築における「空間の開放と閉鎖の問題」について提起されています(第一~二段落)。この問題は「おもしろく」、「様々な問題がからみあった、複雑な問題」なのだといい、その後第三~九段落では、「その問題がいかに複雑なのか」について、日本の建築と西洋の建築の違いや空間の開放を求めたモダニズム建築を例に挙げて説明しています。ここで、筆者が言いたいことは、「空間の開放と閉鎖の問題はそう単純ではない」ということです。ですから、一般的に西洋建築の方が閉鎖的で日本建築の方が開放的と言われるが、そんなことはなく、むしろ玄関から一段上がっていてその玄関先で靴を脱ぐ日本建築の方が、土足で入れる西洋建築よりよっぽど内と外を分けていて閉鎖的である、という見方もできるわけです。また、その一般的に「閉鎖的な空間と見られる伝統的な西洋建築」からの「開放」を求めたモダニズム建築が「居心地のいい開放的な空間」を創出できたかというとはなはだ怪しい、ということが多くの例からわかります。その結果、筆者は、「開放的な空間」、「オープンな施設」などと今ではいろいろな施設や建物の宣伝文句として氾濫しているが、これによって「結果的に、建築は、人を落ち着かせず、町はますます無秩序なものとなっていく。(第九段落)」と述べています。
したがって、第十段落以降第十二段落までにこの「筆者の主張」が集約されていると言えます。ここをしっかり読めば、「筆者の意見」がわかります。第十段落では、ここまでを踏まえて「あらためて空間の意味を捉え直されねばならない。」と述べ、「あなたにはあなたの空間があり、その中で憩い、生活をし、時に仕事をする、そうした空間を作るものが建築である」と述べています。建築空間とはそうしたあなたを包むものであり、どんなに立派な建築であってもそうしたものとしてそれが機能しないのなら、「それは良い建築ではない。(第十一段落)」と断じています。その上でそうした「自分の空間(内)」があるからこそ外の社会との交流ができるし、「良き町や良き都市は、そのように生まれ、育っていく。(第十二段落)」と言い、だから、「部屋とは、そうした人を育て、町を作る基本なのだ」、と結論づけています。
つまり、この文章において、筆者は、建築をテーマとして、建築空間について、「建築空間とは、その住む人自身やその生活を包み込むものであり、そのように人を育て町や都市を作る基本ともなるものである」と述べているというわけです。
・問題文の指定する条件を押さえる。
では、問題文を読んでいきましょう。問題文は以下の通りです。
これを見ると問題文に指定されている条件は、以下のものであるということがわかります。
もちろんこれらの条件を全て満たした上で、小論文(200字作文)を書かなければいけません。もし、この条件を満たしていなければ、いかに良文でも「問題に答えている」とはみなされず評価されない、ということは別の記事でお話しした通りです。
(課題の条件をしっかり満たすことは基本中の基本)
さて、「あれ?テーマは『建築』ではないの?」と思った人も多いかと思いますが、ここでの指定のテーマは「自分の考えをもつこと」です。これはなぜかというと、本文中で「自分の空間を、しっかりと持っている人は、そこから出て外とつながることができる。それがない人は、外とつながっていくことが難しい。それは、自分の考えを持たない人が他と意見を交わすことが難しいことに通じている。(第十二段)」という、結論の段落にあるこの筆者の主張を踏まえた問題内容となっているからです。たしかにこの文章を読んで「建築論」を200字でまとめるのは中学生には荷が重すぎます(大人でも少しきついです)。ですから、ここの箇所を読ませて「自分の考えをもつこと」について論じさせよう、というのが出題者の意図かと思います。
しかし、ここは、正確に課題文を読むと、「自分の空間をしっかり持っている人が外とつながれる」ことの例として「自分の考えを持たない人が他と意見を交わすことが難しい(=自分の考えを持っている人こそが他者と意見を交わせる)」と言っています。そのため、これは「自分の空間(内)を主体的に持っているからこそ、内と外の境界線が明確になり、外の他者とつながれる」という意見の根拠として言っていることです。したがって、ここは「自分の考えを持っていなければ、自己(内)と他者(外)との境が曖昧になるため、他者と意見を交わすことが難しい」という意味合いであることをしっかり読み取って、問題に当たる必要があります。
構成を立てる。
次に構成を考えます。書き出す前に構成を先に立てるようにしましょう。文章を計画的に書く癖をつけてください。「段落をつけないで書く」はもってのほか(4番目の条件「書き出しや改行の際の空欄も字数に数える」は、要は「段落をつけなさい」ということです)ですし、「何段落になるか見通しがついていないまま書く」のは論外です。
問題の条件を見ると「具体的な体験や見聞も含める。」とあります。とすると、これと「自分の意見」とを合わせて200字で書くわけですから、①「具体的な体験や見聞」②「自分の意見」とするか①「自分の意見」②「具体的な体験や見聞」とするか、どちらが先でもよいですが、いずれにしても二段落構成が望ましいでしょう。200字なので、余りに多く段落を設けると中身がスカスカな文章となってしまいます。一文の理想的な長さは60字程度ということから考えると、一段落1~2文程度で構成し、一段落が60~120字程度の二段落の構成が妥当と言えます。
また、比率(構成バランス)においては、「具体的な体験や見聞」の段落と「自分の意見」の段落とが、「6:4」か「5:5」になるのが適切でしょう。理由は単純で、具体的な話しの方が詳細である分、文字数を使うと考えられるからです。ただし、極端に「具体的な体験や見聞」に文字数を割いてしまいますと、小論文の中で最も読み手に伝えたいことである「自分の意見」を十分に書くスペースがなくなります。そのため、「体験」と「意見」とは「6(120字):4(80字)」か「5(100字):5(100字)」が妥当な比率と言えます。
このようにある程度の構成と字数の目安を立てて、作成に臨むと、何をどのくらい書いたらいいのかが明確になります。
(段落の構成について)
構成に沿って書いてみる。
では、構成にしたがって、小論文をまとめていきましょう。ここで考える内容は大きく分けて二つ、「具体的な体験や見聞(具体例)」と「意見」です。これをまずはそれぞれ考えていきます。
まず「意見」から先に立てていきます。本来小論文では課題文の筆者の主張について「賛成」であっても「反対」であっても構いません。しかし、ここでは「賛成」の立場で書いてみましょう。というのは、二つの理由からです。まず、この字数では「筆者の主張に対して十分な反論」が書けないです。筆者の意見が違うことを指摘し、その反対の自分の意見を書く十分な余裕はありません。そのため、ここでは「賛成」の立場で書いてみてください。あともう一つの理由は、最初に申し上げたように、小論文初学者の方に「小論文のエッセンス」を学んでもらうためにこの問題への取り組みをオススメしていることにあります。それは、最も単純な「論証過程」を学ぶことができるからです。他の記事で書いたように、小論文とはつまるところ「自分の意見に対して根拠を明確にし論証した文章」のことです。「こういう根拠があるから自分の意見は正しいのだと証明(論証)する文章」のことです。ですから、この「『意見』と『根拠』との結びつき」こそが、「小論文の核」と言えるものであり、まずはここをしっかり固められるかどうかが、小論文の内容や質に大きく関わってくるのです。
その上で、改めて「意見」内容について考えると、課題文において筆者はテーマである自分の考えについて「自分の考えを持たない人が他と意見を交わすことが難しい」と主張しています。これに賛成する立場であるので、これを自分の意見とします。
次に、その根拠となる「具体的な体験や見聞」、つまり「具体例」をまとめましょう。「自分の考えを持たない人が他と意見を交わすことが難しい」ことが伝わる体験事例をまとめます。さて、ここまでで、意見と根拠の結びつきが十分かどうか、内容を吟味してみましょう。なお、解答例の構成は①具体例②意見とします。論証のシンプルで自然な流れとしては、具体例を根拠にして意見が導出されるからです。
(適切な内容の具体例とは)
①は条件通り「具体的な体験や見聞」を挙げています。また、学級会での体験を引き、「自分の意見がないと他人の意見を交わすことができない」具体例として挙げることができました。②は「自分の意見」であり、課題文の筆者と同様のことを考えている、ということを表明しています。
こうしてみると、たしかに、「具体例(根拠)」と「意見」との結びつきには問題はなさそうです。問題の指定条件も満たしています。しかし、この限りではよいですが、若干説得力に欠けるところがあります。字数もまだ少し余裕がありますから、より内容を充実させましょう。別の記事で紹介したトゥールミンモデルに照らして再吟味します。
(トゥールミンモデルとは)
上の記事でも説明したように「適切な論証の仕方」がトゥールミンモデルです。①は具体例(Data:データ)です。問題の条件が「具体的な体験や見聞」だったので、そうしたものの中から、誰もが理解できるような普遍的かつ客観的で身近な事例を引いてまとめました。②は、①を根拠として成立する意見・主張(Claim:クレーム)です。これで内容としては十分です。しかし、ここで、①の事態がどうして生じるのかといったその理由(Warrant:ワラント)を説明すると、①から②が導出されることをより説得力をもって証明することができるはずです。そこで、このように理由(Warrant:ワラント)を加え、①から②への橋渡しをしました。その改善例がこれです。
なぜ、自分の意見がないと他人と意見を交わすことができないか、それは自分の意見がないために自分の立ち位置が決まらず、相手に賛成も反対もできないからです。自分がその問題となっていることに対して「こう思う」というのがあれば、他の人の意見に対して「私もそう思う」や「私はそう思わない」と意見を返すことができ、そこから意見の交換が始まります。こうした理由(Warrant:ワラント)をここに補うことで、①の事態がどうして生じるのかについて説明を補足し、②の意見(Claim:クレーム)の正当性を証明することができます。
ちなみに、問題と並んで解答例も示されているので、東京都教育委員会の方で公表している解答例も見てみましょう。
①は私より体験事例としては具体的でよいですね(笑)。②はこれが実質的な意見ですが、この書き方だと単なる引用ともとられてしまうので、「私も同じ意見だ」というように明確に述べた方がよいでしょう。③は①の体験の中での気付きであり、「こうしていなかったから他と意見を交わせなかった」=「こういうことが大事」なので、これが実質的な理由と言えます。④はいかにも作文的な終わり方で、「今後の抱負」のような話。小論文としては蛇足ですが、これは「作文として解答例」としてこのようにまとめているのでしょう。なお、ここでは敬体(デス・マス調)で書いていますが、小論文は常体(ダ・デアル調)で書くのが基本ですので、文体に注意してください。
(文体の使い分け)
まとめ ~200字作文チャレンジで、小論文の基本の書き方を身につけよう~
今回は「高校入試の200字作文問題を使って、小論文の基本の書き方を身につけよう」というお話しでした。200字の中で論証の最小構成要素(「意見」と「根拠」)をまとめる練習として、この演習は最適です。「小論文のエッセンス」をシンプルなかたちで学ぶことができます。おうちなどで是非試してみて、小論文の基本の書き方を身につけましょう。
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