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雲の発生(フェーン現象)

空気中に含まれる水蒸気は、ある温度を下回ると水滴に変わります。
このときの温度を露点といいます。
地上付近にある空気のかたまりが上昇気流に乗って上空に押し上げられると温度が下がり、露点に達して水蒸気の一部は水滴になります。
これが雲の発生です。
空気のかたまりを空気塊といいます。
空気塊に雲がない場合、空気塊が100m上昇するごとに気温は1.0℃下がり、100m下降するごとに1.0℃上がります。
空気塊に雲がある場合、空気塊が100m上昇するごとに気温は0.5℃下がります。
また空気塊が100m上昇するごとに露点は0.2℃下がり、100m下降するごとに0.2℃上がります。

気温と飽和水蒸気量の関係は以下の通りです。

それでは、ここからが問題です。

生徒からの質問です。
灘高校の入試問題らしいです。
解答はあるけど解法がなくて分からないってことでした。
ラインで解説を送ったので、テキストファイルがあります。
面白い問題なので修正して掲載します。


地上0mに気温30℃、露点22℃の空気塊Aがあります。

問1
この空気塊Aの地上0mでの湿度は何%ですか?

問2
この空気塊Aが上空2000mまで上昇するとき、何mで雲が発生しますか?
そのとき空気塊Aの温度は何℃ですか?

問3
問1で雲を発生した空気塊Aがそのまま上空2000mまで上昇したとき、空気塊Aの温度は何度になりますか?

問4
2000mまで上昇した空気塊Aが地上0mまで下りたとき、気温は何度になりますか?
また湿度は何%になりますか。
ただし空気塊Aが下降を開始したときには、空気塊A内の雲(水滴)は全てなくなっているものとします。

解答


問1
この空気塊Aの湿度は何%ですか?

問1解答

湿度$${\displaystyle =\frac{水蒸気量}{飽和水蒸気量}×100}$$

水蒸気量は露点22℃の飽和水蒸気量19.4g/㎥、飽和水蒸気量は気温30℃の飽和水蒸気量30.4g/㎥だから、

湿度$${\displaystyle =\frac{19.4}{30.4}×100=64%}$$

生徒から解答はもらっているんですが、その解答では68%となっています。
こんな簡単な計算で間違うこともないと思うのですが、私は、どうしても64%にしかなりませんでした。
間違いが分かる人、おられましたらお教えください。

問2
この空気塊Aが上空2000mまで上昇するとき、何mで雲が発生しますか?
このとき、空気塊Aの温度は何℃ですか?

問2解答
空気塊は100m上昇するごとに気温が1℃下がります。
同時に露点は0.2℃下がります。
雲が発生する…水滴ができるのは、空気塊の気温と露点が等しくなったときです。
空気塊Aが100×$${\displaystyle x}$$m上昇したところで雲が発生したとすると、そのときの
気温=30-1.0×$${\displaystyle x}$$℃
露点=22-0.2×$${\displaystyle x}$$℃
気温=露点より、
30-$${\displaystyle x}$$=22-0.2$${\displaystyle x}$$
$${\displaystyle x}$$=10
雲が発生する高さは100×$${\displaystyle x}$$=100×10=1000m
気温は30-$${\displaystyle x}$$=30-10=20℃

問3
問2で雲を発生した空気塊Aがそのまま上空2000mまで上昇したとき、空気塊Aの温度は何度になりますか?

問3解答
空気塊Aは1000mで雲が発生したので、そこから2000mまでの1000mは100m上昇するごとに気温は0.5℃下がります。
1000m上昇するので、気温は5℃下がって15℃になります。

問4
2000mまで上昇した空気塊Aが地上0mまで下りたとき、気温は何度になりますか?
また湿度は何%になりますか。
ただし、空気塊Aが下降を開始したときには、空気塊A内の雲(水滴)は全てなくなっているものとします。

問4解答
空気塊Aの雲はなくなっているので、100m下降するごとに気温は1℃上がります。
2000m下降するので20℃上がって35℃になります。

この問題のポイントは露点です。
空気塊Aは1000m上昇した時点で気温が露点に達して雲が発生しています。
1000mより上では、100mごとに気温は0.5℃下がります。
露点は先ほどの計算では100m上昇するごとに0.2℃下がりますが、気温=露点となって雲が発生してからは気温の下がり方の方が大きいので常に湿度100%となり、露点は気温と同じ値になります。
つまり上空2000mでは気温=露点=15℃です。
空気塊Aが下降を開始したときには、空気塊A内の雲(水滴)は全てなくなっているので、100m下降するごとに露点は0.2℃上がります。
2000m下降して地上0mに戻ってきた空気塊Aの露点は0.2×20=4℃上がって、19℃です。
空気塊Aの気温は先に求めているので湿度は以下のように求められます。
水蒸気量は露点19℃の飽和水蒸気量16.3g/㎥、飽和水蒸気量は気温35℃の飽和水蒸気量39.6g/㎥だから、

$${\displaystyle 湿度=\frac{16.3}{39.6}×100=41%}$$

地上0mで気温30℃、湿度64%だった空気塊Aは2000m上昇することで再び地上0mに戻ってきたときには気温35℃、湿度41%の高温で乾燥した空気になったということです。

これが、フェーン現象です。

フェーン現象(気象庁より)
湿った空気が山を越える時に雨を降らせ、その後山を吹き降りて、乾燥し気温が高くなる現象。または、上空の高温位の空気塊が力学的に山地の風下側に降下することにより乾燥し気温が高くなる現象。