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オンライン父さんの決心

今回、投稿させていただきました、「オンライン父さんの決心」は
脚本家 今井雅子先生の短編小説「膝枕」の世界観を、自分の日記とも小説ともつかないお話「オンラインお父さん」に取り入れてみました。
2021年5月31日からClubhouseで朗読リレー(#膝枕リレー)が続いている短編小説「膝枕」(通称「正調膝枕」)の派生作品となっております。

二次創作noteまとめは短編小説「膝枕」と派生作品を、朗読リレーの経緯膝番号Hizapedia(膝語辞典)などの舞台裏noteまとめは「膝枕リレー」楽屋をどうぞ。

オンライン父さんの決心


今日も、夕飯の写真を撮って妻に写真を送る。
「最近、お米の代わりに豆腐にしました。健康第一です、野菜も食べてるよ」写真に合わせたコメントも忘れない。
すぐに妻から返信を確認「健康で長く働けるようにお互い頑張ろうね。子供たちは塾とバイトです。私はしばしYouTubeた~いむ。」
いいねのスタンプを返信して、オンライン父さんの任務完了。

ナイチンゲール型膝枕「ニーナ」が自宅に来て一週間が経った。相変わらず、膝枕を堪能できるのはお風呂上がりの一日3分のみ、健康状態の確認をしたら、すぐにたたき落とされてしまう。

少し変わったのは、妻の対応である・・・。時々ではあるが健康状態とか食生活についてのを聞いてくる。「毎日、運動してる?」とか「ちゃんと野菜食べてる?」とか、「身の回りで何か変わったことない?」なんて・・・。子供以外のネタが話題に上るなんて、もしかして無駄遣いがバレた?
しかも酔った勢いでこんな物買ってしまったなんて、妻にバレたら半年は小遣いを減らされてしまう、決して知られてはならない。

「エナマエ様、こんな物って言いませんでした?」
部屋の片隅にある、座布団型充電スタンドで休んでいたニーナの膝が軽く震えた。
「あれ?口に出てた?」
「いいえ、ただ何となく」
最近のAIは人の心が読めるのであろうか?いやいやいくら時代が進んでもそこまでは。

「ニーナが来てくれて良かったな~、こんなにも健康になってしまった・・・なんてね」
「エナマエ様それにしては、体重と内臓脂肪に変化が見られませんが。私に隠れて暴飲暴食でもしているのではありませんか?」
男の表情が一瞬、凍り付いたように固まった。
「そーかな、不思議だな、やせたよ、やせた。ほら、何んとなーくスリムになった気がするよ。アハアハ」
男は丸く張り出したお腹をポンポンと叩いて見せた。
「胴回りも測位しますか?」
「いやいや、いいです」
「いいですってことは、良いですねと言う事ですね?」
「お前はインチキセールスマンか?良いではなく否定です。それにニーナ、手もないのに測れるわけがないじゃん。」
「オンラインサイトの、お客様サポートのページからオプションを選択して購入すると、3D測定機能が搭載できますが、オプションを購入いたしますか?」
「無理です、無理です必要ありません」
会社での癖なのか、思わず敬語で返答してしまう男なのであった。
「ちっ!」舌打ちともノイズとも聞き取れる音が聞こえた気がした。

何か話題をそらさなくては・・・。
「そういえば、ニーナさんみたいにしゃべれる膝枕って、いっぱいあるのかな?」
「会話ができる膝枕は、私とおねー様のバージョンから試験的に導入されました。インターネット回線を通じてオプション購入、OSのバージョンアップに対応しております。膝枕情報誌『月刊 ひざまくら通信』の定期購読も対応しておりますが購入されますか?」
「結構、じゃなかった。必要ありません。」
「ほかにも、会話ができる膝枕はございますが、プログラムによって決まった返答を返しているだけ、初期設定で搭載されている単語には限りがあります。追加の単語はオプションでご購入いただけます。国内の方言および135か国語、さらにオヤジ構文や若者言葉にも対応。広がる話題、あふれる笑顔、ニーナとのおしゃべりがもっとスムーズ、ストレスフリーに。オプションの購入をいたしますか?」
「ニーナさんは十分賢いです、オプションは必要ありません。」
「はい、ニーナ賢いです。」
「はいはい、ニーナさんは凄く賢いです。オプションは必要ありません。」

「エナマエ様お天気も良いですし、お散歩に行きませんか?」
「お散歩って、ニーナさんは歩けませんよねどうやって?」
「オンラインサイトからオプションでお散歩キットの購入もできますが、購入いたしますか?」
「だから、オプションは必要ありません」
「それじゃあ、お姫様抱っこでお願いいたします。」
「えええええええ、いやだよ。お前結構重いし」
「エナマエ様、レディーに対して重いなんて、失礼です。エナマエ様は失礼です。」
「それに、外歩いてると変な目で見られちゃうよ。」
「大丈夫ですよ、日本では40数年前から青いネコ型ロボットが外を歩いても。誰も気には留めません、治安がいいんです。」
「それは、触れてはいけないグレーゾーン。せめて旅行鞄にでも入ってもらっていいですかね?」
「仕方がありません、100歩譲って勘弁してあげましょう。」

少し大きめの旅行鞄にニーナを詰めて町に出た。
ジッパーは完全に締まりきらない。
「ところでニーナさん、どちらへ?」
「およそ、200m先左方向です。どうですか?ナビも上手でしょう。お姉様譲り。えへん」
「何を言ってるの?」
ふと、顔を上げると周りの人々が距離を取っているのを感じた。
変な男が、大きな旅行カバンに向かって、独り言を言っているようにしか見えない。
ここで警察官に職務質問を受けたら、ただの変質者である。なるべく目立たないようしなければ。
ニーナのナビに先導されて少し大きな運動公園に着いた。

「ところでニーナさんは、ここで、何をなされたいのですか?」
「エナマエ様、ラジオ体操からまいります。」
「いきなりですか?」いきなりと否定しつつも、あの音楽を聴くと体が反応してしまう。
「腕を前から上にあげて、のびのびと背伸びの運動から…。背中が曲がってます。腕をちゃんと伸ばして下さい、いっち、に、さん、し」
あの聞き慣れた音楽はスマートフォンから流れてくる。「スマホ…貴様もグルなのか…」
タップリ、第三まで体操させられ、男は汗だくである。
「お疲れ様でございました、エナマエ様。呼吸が整いましたら次のプログラムです。」

「エナマエ様、背筋は伸ばして肘は90度にして大きく振ってください。歩行速度時速七7キロをキープしてください。」
「ウォーキングかよ、結局」
「エナマエ様は見張ってないと、すぐさぼりますので私が監視いたします」
たっぷり2時間のウォーキングを堪能したのであった。

「エナマエ様、スマホさんと話し合ってエナマエ様にお似合いのサウナスーツを購入しておきました。」

「よし決めた、絶対にニーナと一緒に外出しない!」
男はひそかに心に誓うのであった。

~~~~~~つぶやき~~~~~

早速、詰まった。
急ぎすぎは良くない、じっくり吟味して膨らまします。

今後の展開ですよね・・・
妻とナオキだとは思うのですが、ナオキはしゃべらない。

おやじの胡坐ではないと思うのです、男は妻への未練でぽっちゃりを買うと思うのですが、女の人は旦那似のおやじでは無くナオキに行くと思うんです、きっと。・・・間違いない。
でも亭主の留守中に、若い男の膝枕に頭をあづける母親の姿を見た子供たちは?
いや、いや 奥さんの処にナオキはいない方が良いのではないか?

ネットに接続して、MP3(音楽)を流してくれたり、部屋の電気をつけてくれたり、カーテンを開けてくれたり、エアコンをつけてくれたり、お風呂のお湯を張ってくれたり・・・
「ナオキ、セカオワ流して💛」「ナオキ、電気をつけて💛」って。



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