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車中泊記 群馬編①
~準備編~
2024年6月7日(金)
その日男は、仕事終わりを待ちかねたように飛び出した。
事務処理を早急に終わらせて、職場を出ると速足で駅に向かった。
いつもより少し早くとは言え、3~40分程度である、帰宅ラッシュのため適度に混んだ電車に揺られて自宅に帰りつく。
手早くシャワーを浴びて夕飯をすます、今夜はいつもの習慣である缶ビールのふたを開けることをしなかった。
たびたび妻の様子を伺いつつ平静をう装っているものの。
「どうやって切り出そうか・・・」
頭の中はその事でいっぱいで、妻の話も頭の中には入ってこない。
そんな旦那の様子に気づいてか、妻の方から声を掛けてくれた。
「何時から出るの?」
「何が?」思わす、気づかないふりをしてしまった。
「行くって言ってたじゃん、山登り。」
「ああ、山登りね・・・今夜のうちの出たいな~って」
やはり、妻にはバレていた。車中泊が楽しみで気もそぞろな事を。
「パパ?どっか行くの?」同じテーブルで食事をとっていた息子が聞いて来た。
すかさず妻が返す。
「パパはね車中泊に行ってくるって、ママを置いて一人で。」
「そうなんだ、行ってらっしゃい。」息子は興味なさげに返すのであった。
「洗濯物干すの手伝ってくれたらいいよ。」少し嫌味交じりの口調ではあったが、口元はほほ笑んでいた。
ちょうどそのタイミングで、洗濯が終わったことを告げる音楽が聞こえてきた。
大急ぎで物干しに洗濯物を並べると、旅の準備に取り掛かった。
必要と思われる着替えをカバンに詰め込む。
下着・Tシャツ・短パン・靴下。
寝袋・タブレット・ノートとペンシル・・・それと。地図と観光ガイド。
これを忘れてはいけない。
500mlのペットボトルが6っ本入る愛用のクーラーボックスに、
保冷剤と発泡酒を2本、1合ごとに小分けにした無洗米を二袋
ウィスキーの入ったスキットボトルを詰め込んで、愛車の軽のワンボックスにつ埋め込んだ。準備完了である。
時間は21時を回っていた。
スマートフォンの地図アプリを立ち上げて目的地を設定し車載フォルダーにスマートフォンを固定したら出発
妻と息子に、「行ってきます。」と声を掛け車に乗り込んだ。
目的地までの距離150km 移動時間3時間半
このまま順調にいっても、到着は夜中の1時、「でも明日を有効に使うためにはすぐに出発したい」そんな気持ちで強引に決行するのであった。
夜の国道は昼間と違い、スムーズに流れる窓を開け放つと夜風も心地いい。
「まずは、あそこに行って、あの駐車場に車を止めて仮眠をとって・・・」
「仕事あけだというのに、エナマエ様は元気ですね~。」頭の中に声が聞こえてきた。
「当たり前だろう、車中泊だぞ、冒険だぞ!」
「へー、そんなものですかね?ちゃんと自宅があって、空調があって、ふっかふかのベットが自宅にあるのに、何を好き好んで空調もない、ゴツゴツの車の中で寝て、何が楽しいんですか?エナマエ様はマゾですか?マゾですよね。」
「うるさいなニーナは、この気持ちは男にしかわからん。」
流れる景色を見つめながらつぶやいた。「きまったね!」
顔に当たる風が心地いいぜ・・・
「何を一人でどや顔してるんですか?気色悪い。ちゃんと前見て運転してくださいね。」
「うるさいな~、判りました。真面目に運転してるんですからニーナさんは少し黙っていてもらっていいですかね。」
「はい、はい判りました。・・・って、エナマエ様、今、信号黄色でしたよね。いやですよこんなおじさんと心中したくありませんよ。」
「悪かったな!前のトラックのせいで信号機が見えなかったんだよ。」
こんな乗りで、埼玉から一路、群馬を目指すのであった。