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おいしい思い出③お別れのいちごアイス

甘いものが好きなのは、祖父に似ているのかもしれない。

祖父はご飯よりお菓子が好きで、《たくさんお菓子を食べるのに、糖尿病にならないこと》が自慢でした。

私が子どもの頃は、夏休みに祖父の家へ帰省して、魚釣りに海水浴、花火にかき氷と、夏を満喫していました。

ある夏休み、祖父の家に着くと挨拶もそこそこに、部屋着のまま出かけて行った祖父。
しばらくたって帰ってきた祖父の手にはスーパーの大きな袋が。
兄と二人で袋の中をのぞくと、ハーゲンダッツのアイスがぎっしり詰まっていました!

祖父「店員さんにすごく感謝されたんじゃ。」

母「またこんなに買ってきて!!
 そりゃお店の人もびっくりするわ。」

母は呆れ顔でしたが、私と兄は大喜び!
さっそくどの味を食べようか悩んで、みんなでおやつの時間が始まります。
祖父は迷わず「いちご味」を手に取って、誰よりも先にほおばるのでした。

おやつの時間は生き生きとしてる祖父ですが、好き嫌いが多く、ご飯の時間はお箸がすすみません。
祖父「明日の朝食べようかのぉ。」
母「お菓子いっぱい食べるからよー。」

と、母に怒られるのは毎度のことです。

夕飯と後片付けが終わり、母が席を外したのを見計らって、祖父がひょこひょこと台所に。
「アイス食べようか?かき氷がええかのぉ?」と、子どものように無邪気な笑顔で声をかけてくるのです。

もちろん母にすぐ見つかって呆れられるのですが、お盆とお正月は特別。母も一緒に食後のアイスを食べながら、みんなで茶話会が始まるのでした。

甘いものは、人を幸せにする。

私がお菓子好きなのは、こんな幸せな思い出がいつも心のどこかにあるからかもしれません。


祖父はとても我慢強い人でした。
体調が悪くても誰にも言わず、ある日突然入院しました。

母と電車とタクシーを乗り継いで病院へお見舞いに行きました。

ご飯が食べられずやつれた祖父。
私を見るなり「アイスが食べたい。」と強く訴えました。

勝手にアイスを持ち込めないので困っていると、看護師さんが病院食で出しているいちごアイスを持ってきてくれました。

カップを開けて、スプーンですくって祖父の口は運ぶと、嬉しそうに満面の笑みで「美味しいなぁ。」と味わっていました。

ご飯はほとんど食べられなかったのに、アイスはあっという間に完食。
祖父らしくてみんなで笑いました。

それから数日後、仕事をしていると母から電話があり、祖父が旅立ったことを聞きました。

それから年月を経たいまも、私の心のなかに生きている祖父は、アイスを美味しそうにほおばる優しい祖父のままです。

甘いものは、人を幸せにする。

だから、大切なあの人にも甘いものを。

疲れている人がいたらチョコを一粒。
感謝の気持ちを添えてクッキーを一枚。

ひとくちの甘いもので、小さな幸せが灯りますように。

さあ、ちょっとおやつの時間にしませんか?

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この記事は下記 #第二回ほっこり大賞 に参加しています。

みなさんも、記事を書いて読んで、ほっこりしましょ♪