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焼き芋の香りに誘われて。
スーパーへ入ると漂ってくる、香ばしくて甘い匂い。思わず大きく息を吸って深呼吸。
匂いの方へ進んで、ひとつの迷いもなく、茶色い袋を買い物カゴへ。
寒い冬の、あつあつのご褒美。
家に着くころには冷めているので、レンジでほっかほかに温めてからいただきます。
敬意を表しテレビを消して、五感を研ぎ澄ませます。
さあ、準備万端。
半分にしてようやくお目見えした断面は、黄金色に輝き美しく、惚れ惚れします。
次に香りを肺いっぱいに吸い込みます。これだけで、もう美味しい。至福のとき。
熱々のうちに、がぶりとひと口。鼻から抜ける香りを楽しみながら、お口いっぱいに広がるなめらかな甘みを堪能します。
端の方は少し土の香りが強く、最後に大地の恵みを印象づけます。
「ああ、食べ終わっちゃった。」
じっくり味わったはずなのに、5分で消えてしまう儚さに、もう1本買えばよかったと後悔。
私が愛してやまない焼き芋のお話でした。