幸せ　～「エルヴィス・プレスリー」～

エルヴィス・プレスリーという世界的な歌手がいた。私も大ファンであった。最近、伝記映画にもなったことは記憶に新しい。大成功の影には不幸な出来事が起こるものだ。全盛期の頃、エルヴィスの妻は当時、彼のボディーガードをしていた男性と不倫関係になり、まだ幼い娘を連れて去っていった。

グレイスランドと呼ばれた彼の大邸宅では、毎年、妻と娘、そしてその友達も誘い、盛大なクリスマスが行われていた。全員がクリスチャンということもあり、その屋内外のイルミネーションは、都内の大手デパートか有名ホテルのそれに近いものがあった。しかし、妻と娘が去ったそれ以後のクリスマスは、イルミネーションは消え、エルヴィスにとっては、孤独そのものが存在した。

彼は世界中のファンから愛され、地位も名誉も巨万の富も得た。しかし、一番愛してほしい人に愛されなかった。それから薬物に溺れてしまう。数年が経ったある日、自宅の浴室で息絶えた。心臓発作だった。享年４２歳。幸せだったのだろうか。そして、かつての愛娘も５４歳でこの世を去る。その遺産をめぐる争いが今も続く。だが、エルヴィスの音楽的功績は計り知れないものがある。

誰もが、欲しいものを手に入れたいと思う。それは当然なことではあるが、たとえ、地位や名声、富はなくても、やはり健康で、なおかつ、そこそこ普通の生活を送れること、普通の家族であることが、一番の幸せではないかとつくづく思う。

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